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三井E&S環境エンジニアリング、導入後わずか3.5か月で70個のBotを開発 現場の属人的な業務を楽にする、文房具のように使えるRPA

2020/04/21 導入事例



お話をおうかがいした方:
三井E&S環境エンジニアリング株式会社 環境施設事業本部 第2整備部 R2課 主管 川村 知格氏(左)
三井E&S環境エンジニアリング株式会社 経営企画部 経理課 主任 川口 千恵子氏(中)
三井E&S環境エンジニアリング株式会社 経営企画部 経理課 坂井 裕紀氏(右)

組織の概要

 三井造船株式会社によって1985年に設立された三井E&S環境エンジニアリング株式会社では、都市ごみ処理施設や下水処理施設といった環境保全施設の運転管理、維持管理を行っています。三井E&Sグループの企業理念である「社会に人に信頼されるものづくり企業であり続けます」を掲げ、地域に適した資源循環技術・エネルギー利活用技術を提案する環境エンジニアリング事業や施設建設から運転管理まで幅広い機能を備えたトータルエンジニアリング力を提供するオペレーション&メンテナンス事業を展開しています。

課題

方針として掲げられていたRPA、具体的に進めるための役割を担う

 少子高齢化が大きな社会課題の1つとなっている今、人材不足が叫ばれる企業では、働き方改革の名のもと、ITを活用して業務の省力化、効率化に取り組んでいます。また、旧来型のビジネススタイルを革新し、デジタルトランスフォーメーションによって新たな価値創造に向かってプロジェクトを進める企業も少なくありません。環境保全施設の運転管理、維持管理を手掛けている三井E&S環境エンジニアリング株式会社でも、AIやIoT、RPAといった新たなテクノロジーを活用して、新たな時代に適用できる環境づくりに取り組む機運が高まっていたのです。

 そんな同社に親会社から出向してきたのが、親会社にてRPAプロジェクトを推進してきた環境施設事業本部 第2整備部 R2課 主管 川村 知格氏でした。「具体的にプロジェクト化されてはいませんでしたが、システム推進課がAIやRPAを掲げて新たな取り組みを推進する方針を掲げていることを知ったのです」と川村氏。新たな職場では、都市ごみ焼却場の整備やメンテナンスを手掛ける事業部に配属され、RPAと直接関係のない環境だったものの、RPAを推進してきた経験からその魅力は十分理解していました。「機会があればRPAの魅力やそのメリットを伝え、ぜひ導入するべきだと周囲に発信していたのですが、それが草の根的に広がっていったのが、RPA導入が具体的に動き出すきっかけとなりました」と川村氏は当時を振り返ります。同社の社長も出席する幹部会議でRPAに関してプレゼンテーションする機会を得て、小さく始めることを条件に、RPA導入に向けたプロジェクトがスタートすることになるのです。

ソリューション

使い勝手の良さを評価、ボッタソン開催で現場への理解を深める

当時はRPA導入についての方向性も定まっていなかったため、川村氏が主導して社内向けにプレゼンテーションを実施。RPAの動作を具体的に示してその効能を紹介したうえで、各部門からの参加者に対して業務の棚卸を提案したところ、30ほどの課題が集まりました。そこで、具体的に進めるために川村氏が相談したのが、親会社に展開していたAutomation Anywhereでした。「相談してみたところ、すでに適用業務が洗い出されているのであれば、PoCよりも集中的な開発研修の場として「ボッタソン」を開催し、現場の方にその良さを体験してもらう方がいいのではと提案を受けたのです」と川村氏。

川村 知格氏

Automation AnywhereをRPAツールとして選択したのは、その使い勝手の良さだと川村氏は説明します。「検討した製品のなかには、1つ動作させるために多くの設定が必要なツールもあれば、複数の画面を駆使して作り込まなければいけないツールもあります。慣れていない現場には不向きなものも正直ありました」。特に同社は、大きなBotや高度なBotを作成しようとしていたわけではなく、ちょっとした作業をさっとBotにしてさっと使うことが自分達に合っていると考えました。ITシステムが決して得意ではない人も含めた多くの人が使う文房具のように展開するためには、初心者でもさっと作れるような、気軽にやってみたい人のためのRPAである必要があったと川村氏。そこで注目したのがシンプルで初心者に優しいAutomation Anywhereだったのです。また、同社の環境に適したツールである点も選択の理由に挙げています。「1つの作業を大勢がやるのではなく、1人が1つの作業に取り組むことが多いという業務特性上、その人だけの作業を代行してくれる、いわば分身をパッと作れるものが適切だと考えたのです。負担なく作れるAutomation Anywhereであれば実現できると考えました」と川村氏。

実際にボッタソンに参加した経営企画部 経理課 主任 川口 千恵子氏は、立体的に動きが把握できるツールだと当時の印象について振り返ります。「変数を駆使して作り上げるExcelのマクロに比べて、裏側の処理も含めて立体的な感覚でBotが作成できるという印象で、普段からマクロを利用している私にとって、とても分かりやすい。実現したい処理もコマンドですぐに探せますし、色分けされて表現されている点も好印象でした」。実は、マクロを経験している同部 経理課 坂井 裕紀氏も同じ印象だったと語ります。

RPAにはコマンドリスト形式やフローチャート形式など、ツールによってBot作成の手順が異なりますが、システムに不慣れな人は、コマンドリスト形式は当然ですが、フローチャートであってもその作り込み自体が難しく、どちらのパターンでも何からのフォローが必要だと川村氏は説きます。「普段の業務手順は書き出せるものの、そこからフローに落とし込んでいくことが難しい。そこで、せっかくやってみたいという人が挫折しないよう、会議室にて個別にホワイトボードを使って絵をかきながら、この処理ならこのコマンドを適用して作ってみてはといった、棚卸した業務をRPAに落とし込めるような支援を継続的に行いました。このような場を「セッション」と呼んでいますが、このセッションを開催することで、スキルに応じた手厚い個別フォローが可能です。みんなが使えるものにしていくことが重要です」と川村氏は定着に向けた工夫を披露します。セッションでは、社員との対話を通じて業務を掘り起こして整理して棚卸しを行い、業務を可視化してフローを描きながら要件定義を明確にして、RPAコマンド並べて試運転による検証までを数時間で実施しています。多くの社員から「さっとBotを作成できることがAutomation Anywhereのいいところです。Automation Anywhereを選んで本当に良かった。」という声が上がっています。

川村氏の手厚い支援も手伝って、同社における業務効率化のツールとして、オートメーション・エニウェアのRPAが採用されることになりました。

メリット

  • Bot開発数 3.5か月で70を超えるBotを開発
  • 業務削減効果 3.5か月で180時間の業務時間を削減

詳細

わずか3.5ヶ月で70ほどのBotと200を超えるメタボットを作成、多くの部署で活用が進む

 現在は川村氏と経営企画部 システム推進課のメンバーでRPA推進チームを結成し、業務改善に向けた活動を進めています。その結果、わずか3.5か月ほどで70ものBotを作成することができています。RPAを活用している部門は、川口氏および坂井氏が所属する経理課をはじめ、企画部や人事部、建設部、安全衛生管理部、技術部、運転管理部、設計部、資材部、整備部など、多くの部門にまでRPAの輪が広がっています。実は、簡単な機能に特化した再利用可能な部品(メタボット)を200以上準備したことで、現場の業務改善に必要なBotを量産することに成功しています。「部品として繰り返し利用できるメタボットが多く用意されているからこそ、現場としてもやりたいことが言いやすく、新たなアイデアも集まりやすい」と川口氏。

 一般的なRPAプロジェクトとは異なり、業務フロー図や要件定義書などは今回のプロジェクトでは一切作成していません。また、基本的には利用者の端末上に展開しているBot CreatorにてBotを動かしており、1つの作業を多くの部署で利用する際に役立つBot Runner自体は使っていないのが現状です。「担当者それぞれの業務を代行するBotのため、一度きりしか使わないBotも存在しています。それぞれ担当者が責任をもってBotを運用し、作ったものを皆で共有するという方法で管理をしています。皆が手軽にBotを作成し、文房具のように使ってもらえることを目指しています」と川村氏。

 Excelを使った業務報告が多いという同社においては、「マスターファイルへの貼り付けや集計作業」にRPAが適用されることが典型的です。具体的な例では、安全に関するスローガンを全部署から募集し、メールに添付されたExcelの情報を集計する、ごみ焼却場の現場を回って各担当者が気になる点をまとめた指摘リストを集計するといったユースケースが実現しています。経理部門を例に挙げると、経理システム内で管理している家賃や事務所、駐車場、社宅などの情報を抜き出して所定のシートに転記する、基幹システム内で管理されている工事番号を抜き出して工事関連の別のシステムに登録するなど、社内システムからデータを抜き出して別のシートに整理するような業務にBotが活用されています。

 また、フォルダの作成、名前変更、抽出作業にもRPAを適用しています。これらの作業は毎回形が違う場合が多いのですが、たとえば手作業だと数時間かかるところ、10分程度でBotを作成し、実際の作業は10秒程度で作業を済ませることができます。同様にフォルダ内のファイル操作や、エクセル間をデータ転記するといった作業も意外と時間がかかるため、Botが活用されています。「さっとBotを作成できることが強みのAutomation Anywhereである」からこそ、出来ることだと同社の社員は実感しています。

結果

3.5か月ほどの間にトータルで180時間ほどの作業時間削減に寄与

 RPAを導入したことで、わずか3.5か月ほどの間にトータルで180時間ほどの作業時間が削減できており、手作業からの脱却で作業品質の向上にも貢献しています。「自分の作業はどうしてもチェックが甘くなりがちです。今はチェックの負担がなくなり、ストレスからも解放されるなど精神的な面でもメリットを実感しています」と川口氏は評価します。自動化することで業務の棚卸が進んだことも大きな効果に挙げています。「大きいのは、RPAによって改善の声が挙げやすくなったこと。大規模なシステムでは個人的な意見が言いにくいものですが、RPAのような小さな改善に役立つものなら、こうしたいという要望が出しやすい。しかも周りで改善したものを取り入れやすく、意識改革にも大きく貢献しているはずです」と川口氏は評価します。

川口 千恵子氏

 個別の業務で見ると、川口氏が普段行っていたExcelのコピー業務は、以前であれば4時間ほどを要していましたが、今では20分足らずで作業が完了できている状況です。一方で坂井氏は「基幹システムからの転記作業でみれば3時間ほどの作業が10分足らずで終わるという時間的なメリットは間違いなくありますが、Botが作業中は別の作業を並行して進めていくことができる点も大きい。じっと見守る必要がないことが、実は地味に効いています」とRPA活用の効能を語ります。

 また効果の1つとして、これまで実現できなかった新たな業務が生み出されている点も見逃せません。例えば工事における報告書提出の催促を、以前ならExcelで作られた工事予定表の中の報告書名称とその提出期日を見ながら電話で行っていたところ、提出期日がRPAで判断しやすいよう工事予定表を作り直し、今では工事予定表上の予定をBotが判断し、事前に納期に関するお知らせメールを送るといった、これまでにはない業務がRPAによって生み出されています。「提出日が来た段階で確認していたものが、今は事前にRPAがお知らせしてくれるようになっています。連絡業務の負担も減りますし、納期管理も負担なく行うことができる。まさにこれまでやりたくてもできていなかったことが、RPAによって新たな業務として創発された形になります」と川村氏は力説します。

 同社のRPA活用は、全社を挙げての組織的なRPA導入ではなく、現場の課題を一つずつ解決していくことで広がっていくボトムアップ型が大きな特徴です。「多くのRPA事例では、現場に業務フローや要件定義書を提出してもらい、検証作業を行わないとBotが使えないといったものが見受けられます。しかし、業務フローを出す時点でハードルが高くなり、最終的に離れてってしまう人が必ず出てきます。私はなるべく現場にやさしい、苦手意識の払しょくにつながるアプローチを心掛けています。そんな考え方にマッチした形で現場に使ってもらえるのは、Automation Anywhereだからこそできるのです」と川村氏は熱く語ります。

今後

全社展開を進めながら、棚卸済みの業務をRPAにて自動化していく

今後については、現在本社での利用が中心のRPAを、大阪や岡山、九州などの各センターに導入するなど、全社的に展開していきたいと川村氏は語ります。「本社以外のセンターでも、同じような業務をしている部署が多いため、すでに使わせてほしいという声も出てきています。ただし、距離が離れているためセッションのような個別な場をどうセッティングするのか、体制も含めて考えていきたい」とその意気込みを語ります。

経理部門としては、すでに棚卸を実施していくつかRPA適用したいものも残されているため、少しずつ着手していく計画です。「例えば四半期ごとに発生する、連結決算のパッケージに対してデータ投入するような作業をRPA化したい。また、他の業務で使っているソフトウェアをカスタマイズすることなく、RPAにて改善したい機能を吸収するといったことにも生かせるはず」と川口氏。同様に坂井氏も、Excelのマクロでやっている業務をRPAによって自動化していきたい考えです。「Excelのマクロは、あくまでExcel内での効率化しかできません。RPAのいいところはシステムを横断的にまたいで自動化ができること。自動化できる範囲をさらに広げていきたい」と坂井氏は力強く語ります。

坂井 裕紀氏

RPAを展開することで、現場で日々の業務に忙殺されている人たちをできる限り楽にしてあげたいと川村氏はその思いを吐露します。「これまでRPAを触って業務改善したことがなかった人にRPAを教えることで、改善活動が活性化するシーンをいくつも見てきました。そういった場面に立ち会える瞬間がたまりません。これまでロボットで業務を効率化するという発想がなかったような人が、RPAという武器を得て覚醒していく場面を、今後もたくさん作っていきたい」と最後に語っていただきました。

※本記事の内容は、取材を行った2020年1月時点での情報を元にしております。