RPA (ロボティック・プロセス・オートメーション: Robotic Process Automation)について語る際に、必ず引き合いに出されるのが人工知能 (Artificial Intelligence: AI)である。おそらく、両方とも「ロボット」が人間がやっている仕事を賢く代行してくれる、というイメージがあるためであろう。この記事では、RPAとAIの違い、そして両者の組み合わせ時のメリットについて紐解いていく。
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人工知能 (Artificial Intelligence: AI)とは
人工知能は、大まかに言うと「人間が持つ知能をコンピュータで模倣する」しくみである。いくつかの定義や様々な研究分野が存在し、その範囲は必ずしも統一見解があるわけではない。人工知能は「汎用型AI」と「特化型AI」、もしくは「強いAI」と「弱いAI」という対立概念により、人工知能が本当に人間と同等に迫れるのか議論がなされている。
「汎用型AI」や「強いAI」は人間のようにさまざまな課題を処理可能、自意識を持ち全認知能力を必要とする課題を処理できるシステムである。「特化型AI」や「弱いAI」はより限定的で、特化された分野の課題解決、知性の一部のみの代替をするAIであり、現在研究、実現されているものは後者の分野で、前者の分野へのアプローチ方法はまだ見出されていない。
人間が持つ知能には「認識」「推論」「言語処理」「創造」「学習」「記憶」など、さまざまな分野があるが、現在の人工知能は、これらを応用領域に合わせて特化させたアルゴリズムとデータを使って実現させている。
人工知能研究の歴史からいうと、現在は2000年代後半から始まった「第三次AIブーム」にあたる。推論、探索、知識、エキスパートシステムの研究に加え、「機械学習」「深層学習」の技術が進歩し、「認知技術 (目、耳、口)」や「予測分析」が実用化された代表的な分野である。これを人間の部位に当てはめてみると以下の通りとなる。
RPA (Robotic Process Automation)とは
RPAは、簡単に言うと「人間のデジタル行動を模倣するソフトウェアベースのロボット (ボット) で、繰り返しのタスクを自動化することで、ビジネスプロセスを加速する」しくみである。人間のデジタル行動の模倣とは、主にパソコン画面の操作のことである。「画面上のUI要素を判別し、操作する」のがRPAである。これを人間の部位に当てはめてみると以下のような図になる。UI要素を判別するための「目」と、パソコンを操作するための「手」である。
RPA (ロボティック・プロセス・オートメーション) とは何か?
RPAは2016年後半から2017年初めくらいにかけて日本でも導入する企業が増え始めてきた。ただし、単純なパソコン画面の操作だけで代替できる仕事はそんなに多くなく、自動化レベルには3つの段階があるといわれ※、定型業務だけにとどまらず、非定型業務や業務プロセスの分析と改善、意思決定まで行うというロードマップがひかれている。
RPAのクラス
クラス | 主な業務範囲 | 具体的な作業範囲や利用技術 |
クラス1 RPA(Robotic Process Automation) |
定型業務の自動化 | 情報取得や入力作業、検証作業などの定型的な作業 |
クラス2 EPA(Enhanced Process Automation) |
一部非定型業務の自動化 |
RPAとAIの技術を用いることにより非定型作業の自動化
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クラス3 CA(Cognitive Automation) |
高度な自律化 |
プロセスの分析や改善、意思決定までを自ら自動化するとともに、意思決定
|
ここでクラス2以降の実装にAIという単語が登場しているのがお分かりだろう。RPAは主に「操作」を行うことから出発している点で、「頭脳」から出発しているAIと相互補完される関係にある。
RPA x AIの組み合わせで「完全なロボット」へ
主に操作を行う「RPA」と「頭脳」「認知」をつかさどるAI、この2つはどちらもロボットには必要な要素であり、組み合わせることで、より人間に近い「ロボット」が出来上がる。RPAでいうクラス2以降の非定型業務や業務プロセスの分析と改善、意思決定を反映した操作を行うには、AIが必須である。これを図解すると以下のようになる。
このように、RPAとAIは、元々違うところから出発しており、異なる技術ではあるのであるが、組み合わせることで、より人間を模倣できる「完全なロボット」に近づくのである。