日本市場で出回っているRPA製品は、主要なものでも7~8種類、合計40種類以上にも上る製品が利用できる。これだけ種類があると、選択肢が多すぎてそもそも比較が難しくなってしまう。そこで、まずはこれらのツールを大別することで比較数を減らすことが必要になる。主要なツールに注目するのはお勧めの方法であるが、他には、ツールは国産ツールと外資系ツールの2つに分けられる。この記事では、国産RPA、外資系RPAそれぞれの特徴と、どちらがどのようなユーザーに合うのかについて概要を解説する。
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国産RPA、外資系RPA、それぞれのおおまかな特徴
最初にお断りしておくのだが、この記事では国産RPAや外資系RPAの特徴を定量的に比較するわけではない。大まかな定性的な傾向を掴んでいただくための情報を提供するのが目的である。また、「国産RPA」「外資系RPA」という括りの傾向に必ずしもはまらないツールもある。そのようなツールは、違う部分をコメントで指摘するようにする。
国産RPAの特徴
国産RPAは国内の専業ベンダーまたは大手ベンダーのプロジェクトからスピンアウトして誕生した、国内で開発されているRPAソフトウェアである。日本人の特徴を掴んだ設計をしている一方、グローバルトレンドで常識となっているような機能が欠落しているという欠点もある。
日本人にとってなじみやすい「柔らかいタッチ」のUIを持っているものが多く、UIはすべてわかりやすい日本語で記載されているため、ITリテラシーがあまり高くないユーザーにとっても使いやすいという特徴がある。「使いやすさ」を売りにしている製品も多い。また、低価格や中小企業向けであることを売りにしている製品も多い。
一方、製品開発コンセプトにはあまりしっかりとしたビジョンがなく、本来RPAが目指しているところの「ロボットが人間のルーチンワークを肩代わりしてくれる」ために必要な最先端機能はほとんど実装されていない。いまの技術で出来る範囲の自動化を行い、現場の意見を吸い上げて使いやすさを追求している、という日本型のソフトウェア開発に特徴的なボトムアップ型の発想の製品設計であることが多い。管理機能は十分でないことが多く、デスクトップ型RPAの特徴をもった製品が多い。
また、製品機能においてはRPAの基本機能である画面操作がしっかりできない製品が多い。理由は、画面上のオブジェクト認識を行う上でグローバルでは標準となっているアクセシビリティAPIによるアプローチを使わずに、画面の画像認識によるアプローチを取っている製品が多いためだ。画像認識によるオブジェクト認識は精度が低く、画面上のボタン、テキストボックス、ドロップダウンリスト、リンクなどのオブジェクトを正しく認識できない場合が多く、誤操作や操作ができないといった事象が発生する。加えて、SAP、Citrix (リモートデスクトップ)など、よく使われるいくつかのソフトウェアでは元々画面の自動操作がやりにくい設計になっており、専用のアクセシビリティAPIを使っての操作が必須となっているが、それにも対応していない場合がほとんどである。
主な特徴
良い点
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悪い点
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国産RPAの例としては、WinActor、Biztex cobit、Autoジョブ/ブラウザ名人、アシロボ、Robo-Patなどである。
BizRobo!は国産RPAと主張しているケースがあるようだが、中核となるRPAソフトウェアの中身はKofax Kapowという外資系RPAのOEM製品であり、ソフトウェアUIがすべて日本語、日本的なユーザーインターフェイスという特徴は持たないが、日本語資料を充実させたり、本家Kofaxのライセンス体系よりも安価なオプションを提供している。
また、WinActorは大手グローバル企業であるNTTグループの製品であることもあり、当初は国産RPAの特徴を多く持っていたが、最新バージョン7.xになってグローバルなRPAへの脱皮を試みているように見える。価格は国産RPAの中では最も高価な部類に属し、サーバ型RPAのオプションを入れると外資系RPAよりも高価になる。7.xになってアクセシビリティAPIでの画面操作に対応したり、最先端機能の実装、英語UIへの対応などを行い、グローバル調査会社の調査対象にも登場するようになってきている。
日本語の情報が豊富なのはメジャー製品に限られる点にも注意したい。WinActorは書籍も複数出ておりフォーラムも充実している。書籍が出ているのは、他にはRobo-Patのみであり、WinActor以外の製品はインターネット上での情報提供も十分とは言えない。
国産RPAを使うべきユーザー、使うべきでないユーザー
お勧めするユーザー
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お勧めできないユーザー
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外資系RPAの特徴
外資系RPAは老舗のRPA専業ベンダー、AIベンダー、または専業ベンダーを買収した大手ソフトウェアベンダーなどが開発しているRPAである。米国、英国、ルーマニア、インド、イスラエル、ブラジル、など様々な起源をもつ企業がグローバル市場でしのぎを削っている。カートナーやIDCといったグローバル調査会社が定義するインテリジェント・オートメーション、ハイパーオートメーションといった共通の枠に従って、ビジョンの先進性や製品の完成度などで競争をしている。
RPAの中核製品に加えて、紙のデジタル化 (インタリジェント・ドキュメント・プロセッシング: Intelligent Document Processing、IDP)やプロセスマイニング、プロセスディスカバリ、デジタルアシスタントといった、RPAと一緒に使うことで適用業務範囲を増やしたり、効率を上げたりする最先端ツールを一緒に開発しているベンダーが多い。また、デスクトップ型RPAの機能を基本機能として切り離して提供しているベンダーもあるが、大抵の企業はサーバ型RPAの機能を一緒に提供している。直近1年間はクラウド化、ツールポートフォリオの拡充、サーバ機能のクラウド化などに注力しているベンダーが多かった。
多言語に対応している反面、UIの一部には英語が残っていたり、わかりにくい日本語になっていることもある。機能がシンプルではない分、価格もシンプルな機能のみを持つ国産RPAと比べると高いものが多い。その代わり、組織的に効率化の成果を出していく際にはなくてはならない機能が搭載されている。インターネット上に日本語の情報が少ない場合がある (フォーラムなど)が、英語まで含めると日本でのユーザーよりももっと多くのユーザーが利用しており、日本語では利用できないかなり細かい情報まで利用できる場合がある。英語で検索することが苦にならない場合は、YouTubeやフォーラム、Slideshareなども含め、検索してみるとよいだろう。
主な特徴
良い点
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悪い点
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例としては、UiPath、BizRobo!、Automation Anywhere、Blue Prism、Power Automate Desktop、NICEなどが挙げられる。
UiPathは国産RPAも含めてRPA製品の中では書籍数が一番多い。書籍は他にはAutomation Anywhereでも出ている。
今年3月に正式版がリリースされたMicrosoft Power Automate Desktopは、他の外資系RPAとは一線を画するソフトウェアだ。Windows 10にも標準搭載されるくらいなのでソフトウェアやドキュメントの日本語の品質も良く、デスクトップ型RPA機能なら追加費用無し、サーバ型RPAの機能も安価に利用できるという点で、いままで国産RPAの領域だったところに、より安価に (追加費用無し)あたってきている。
特定の条件下での無料版はPower Automate Desktop (Windows 10ユーザー)の他にUiPathとAutomation AnywhereがCommunity Edition (中小企業にデスクトップ型RPA機能を提供)という形で出している。
外資系RPAを使うべきユーザー、使うべきでないユーザー
お勧めするユーザー
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お勧めできないユーザー
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まとめ
国産RPAと外資系RPA、それぞれ良い所と悪いところがある。大まかには国産RPAはシンプル、単機能、低価格、外資系RPAは高機能、高価格だ。よく「国産RPAはMade In Japan品質だ」と主張する人がいるが、ソフトウェアにMade In Japan品質は当てはまらないことに注意されたい。日本品質は自動車や家電製品といった工業製品や農産物などの目に見える形のある製品には当てはまるのだが、ソフトウェアの分野では当てはまらない。考えてみると、いまわれわれが使っているソフトウェアはすべて欧米製品である。RPAソフトウェアでも、日本品質というのはUIの日本語がわかりやすい、日本語ドキュメントが丁寧、というところ位にしか当てはまらない。機能については外資系RPAの方が優れているものが多い。
また、いままでは、それぞれの特徴を元に国産RPAと外資系RPAは市場の棲み分けがされてきたが、Microsoft Power Automate Desktopが登場し、国産RPAの領域に進出してきており、Windows 10にも標準搭載されることから、今後、国産RPAの居場所はかなり厳しくなることが予想される。