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【全社展開成功の秘訣をプロに聞く】 RPA導入の「次の一手」を本気で語るオンライン座談会

2021/12/06 インタビュー, ウェビナー, スライダー



 

オートメーション・エニウェア・ジャパン株式会社は、11月9日にRPA導入の成功・失敗の分かれ目や、成功する企業の共通点、推進のベストプラクティスなどについて討論したオンラインセミナーを開催した。
本記事では、数々のRPAプロジェクトに携わってきた3人のエキスパートが座談会形式で行ったこのオンラインセミナーの内容の一部を紹介する。

【パネリスト】オートメーション・エニウェア・ジャパン株式会社


プロフェッショナルサービス本部 本部長  渡部 貴志

プロフェッショナルサービス本部 シニアRPAプログラムマネージャー  中川 武也

カスタマーサクセス シニアカスタマーサクセスマネージャー  西條 孝史

司会進行:
エンタープライズ事業本部 ビジネスアナリスト 佐野 千紘

うまくいっている企業・いっていない企業の違い

シニアカスタマーサクセスマネージャー 西條 孝史

佐野:最初に、「RPA導入・推進がうまくいっている企業とうまくいっていない企業の違い」についてお聞きします。両者の違いは、どういったところにあると思いますか?

西條:トップダウンのメッセージがうまく効いている企業のほうが成功度合いも大きいですし、成功までの期間も短いと思います。RPAは、使う人が一般の業務ユーザーになりますので、ボトムアップだとなかなか難しい。できれば本当に上のポジションの方、CEO、CIO、CFOといった役職の方にRPAの良さを理解していただき、「RPAを使うぞ」と全社にメッセージを落としていただく。そうすることによって部門長やマネージャーレベルの意識が変わり、さらにその下の業務ユーザーも前向きに取り組むというようなサイクルが生まれると思います。

渡部:「ガバナンスやり過ぎ問題」と名付けているのですが、各種申請手続きや承認などのお作法が多すぎてRPAがなかなか案件化しないお客様も多いですね。最初の段階ではガバナンスをやり過ぎず、RPAのメリットを宣伝したり、開発能力を上げるところに注力したほうがいいと思います。

シニアRPAプログラムマネージャー 中川 武也

中川:うまくいっている企業を見ていて、特に重要だと思う点が4つあります。まず1つ目は、内製化です。特にユーザーが自ら開発するユーザー開発モデルを行うと、RPA開発にスピード感が出ます。変化や変更にも柔軟に対応でき、その結果、コストが削減できます。ここでポイントとなるのが、RPAの推進役であるCoE(Center of Excellence)の開発スキルが十分にあること。ユーザーがうまくいかないときにCoEが支えてあげることが重要になります。

2つ目は、RPAを重く考えすぎず、常に身軽でいること。開発標準や野良ロボ対策など押さえるべきポイントは押さえながら要領よくプロセスを作っていくことが重要です。

3つ目は、業務の棚卸をして見える化すること。そのときにRPAをBPR、つまり業務改革、業務標準化の機会と捉えると、RPA単体では成し得なかったような大きな効果が得られるという事例が多くあります。

最後は、推進役の熱量・発信力です。私たちが立ち上げのサポートさせていただく際に、どこかのタイミングで「もう自分たちでできるよ、あとは任せて」というようなやる気にみなぎっているお客様ほどうまくいくケースが多い印象があります。

うまくいくためには何をすべき?

「3つの見える化を実践する」

佐野:うまくいっていないと感じているCoEやRPA推進担当に何かアドバイスはありますか?

渡部:うまくいっていない企業には、「3つの見える化」をお願いしたいんですね。まず、「成果の見える化」です。Botの数や削減時間などわかりやすいKPIを設定し、関係者全員に周知し続けてくだい。ポータルサイトに上げても、壁に貼ってもいいです。これを毎日目にすると、グラフの角度を上方向に持ちあげたいというモチベーションが必ず湧いてきます。

2つ目は、「開発能力の見える化」です。スケールする・しないの分かれ目は、組織としての開発能力(個人の開発能力×人数)で決まります。CoEは、開発者の人数やそれぞれの開発能力を詳細かつタイムリーに知っておく必要があります。

3つ目は、「開発状況の見える化」です。「選定→設計→開発→UAT→移管」という各工程の増減を見ていくことが極めて重要です。

工場の製造ラインをイメージしてください。どの工程に仕掛中のBotが何台流れているか、あるいはスタックしているか、この増減を毎週チェックして下さい。
これを各部門ごとに見える化すれば、ボトルネックがわかります。このボトルネックを解消してあげれば、全体のKPIが一気に上がるわけです。

中川:私が重要だと思うのは、RPA推進体制の省力化・仕組化です。RPAの適用範囲が広がると、各部門からの質問もどんどん増えていきます。それを一手にCoEで受けているとパンクします。そのため、各部門内にリーダーを擁立し、できる限り役割を委任していく必要があります。また、同時に研修を仕組化・セルフサービス化することも大切です。あとは、野良ロボの監視や削減効果のトラッキングといったCoEが抱えている定常業務を自動化する“自動化のための自動化”を進めていくことも重要になります。

RPAはROIが出にくい?

「ボリュームが大きく、効果の出やすいものから始めるのが鉄則」

エンタープライズ事業本部 ビジネスアナリスト 佐野 千紘

佐野:巷ではよく「RPAはROIが出にくい」といった意見も聞かれますが、これに対する皆さんの見解はいかがですか?

西條:導入して期間が経つと定量的な効果はある程度出てくると思うんですね。そのあとによく言われるのが、定性的な効果で、私も何社かご依頼をいただいて定性的評価の調査をやらせていただきました。数字に表れないところでも実はたくさんの効果が出ていることを上層部にアピールしたいという要望があるのだと思います。あるお客様にお聞きすると、RPAを使うことによってお家に早く帰れて従業員の満足度が向上するのであれば、それだけでも効果としては素晴らしいのではないかとおっしゃっていました。

渡部:ROIの効果を大きく出そうとするのであれば、ボリュームが大きくて簡単なものから始める、これが鉄則ですね。あとは西條さんがおっしゃる通り、最初の半年、1年ぐらいはROIにこだわり過ぎず、定性的な効果に着目して自動化の文化を根付かせるところにフォーカスしたほうがいいと思います。

中川:ROIを目指す上で重要なのは、人と業務を切り離し、業務の棚卸しを行うこと。”見える化”してまずは敵を知る/相手を知る、そうしないと何も始まらないと思います。

多忙なSMEを巻き込むには?

「何か一つでも業務を自動化し、体験してもらう」

佐野:SME(内容領域専門家)と呼ばれる業務に精通する人が自動化の推進において非常に重要な役割を果たすと言われています。ただ、そういう人は忙しいですし、抵抗勢力となるケースもあると思うんですね。これに対してどう手を打てばいいと思いますか?

プロフェッショナルサービス本部 本部長  渡部 貴志

渡部:多忙なSMEにアプローチすると、大抵新しいことに手を出している暇がないと言われます。でも、引き下がっては駄目です。むしろチャンスで、ここぞとばかりに「何が忙しいんですか?」と質問してください。すると「社員の入退社の処理で忙殺されています」とか「納品・検品の処理が終わらない」といった答えが返ってきますので、彼らを忙殺している業務を何か1つでも自動化して楽にしてあげましょう。

実際に自動化の効果を目の当たりにすると、自ずと次、また次とやってほしいことが出てくるはずです。また、SMEは多くの場合、他部門のSMEと人的ネットワークでつながっているため、他部門への展開のチャンスが一気に広がります。これを“SMEドミノ”と呼んでいるのですが、SMEに自動化のメリットを体現してもらうことが全社展開への最短ルートになります。

中川:SMEで少し頑なな方には、動く本物(試作品)をお見せするとすごく効果があります。そのときに大事なのがスピード感。今日話題が出たら次の日にお見せするぐらいのスピード感が必要です。あとは、ぜひ、動画に撮ってデモ動画としてお見せすることをおすすめします。「こんなに簡単にできるのか」と思っていただけるはずです。

西條:導入から1年ぐらい経ったお客様から「社内にどう啓蒙していけばいいのか」というご質問をよくいただきます。どういったプログラムで成功体験を共有していくのかもキーポイントだと思います。

佐野:いろいろな話がありました。まず、うまくいっている会社の特徴としては、内製化や身軽でいること、業務の棚卸といったキーワードが出ました。また、ROIを出すには、ボリュームが大きくて効果の出やすい業務から行うのが鉄則という話もありました。最後に、全社展開の鍵を握るSMEに対しては、「なぜ忙しいのか」と一歩踏み込んで聞いたり、動く本物を見せることが大切とのことでした。

最後に企業が目指せる姿・目指すべき姿とは

中川:自動化できることはやりつくす、それが前提になる時代が来ています。今後は、RPA自体が更に進化して参ります。そこへ我先にと追随していく企業が一歩先へ行くのではないでしょうか。

西條:皆さまのPCには表計算ソフトが当たり前に入っていますが、最終的にはRPA製品も初めからPCに入っていてRPAを使うことが業務の前提となり、人間しかできない仕事がまだまだたくさん残っていると思います。そういったところに時間を使うために多くの方がRPAを使いこなして、より創造的な、人間しかできない仕事をしていく。今後人的リソースは不足していくので、RPAでそのギャップを埋めていく手助けを私達もできればと思っています。

渡部:世の中は常に変化していくので、変化に対応できるようにするにはRPAが役に立つ。1年後、2年後、3年後と、人や企業に求められる役割も変わっていくので、そのような変化をチャンスととらえて対応していくために時間を使うことができる。こういったことがRPAに課されている役割ではないでしょうか。

佐野:今忙しくて仕事がある状態でも、少子高齢化の中で立ち行かなくなることがわかっているので、定型的な業務や属人的な業務をなくし、手順や業務は会社の資産としてそれを標準化していくこと、人にしかできない業務をするためには今とは違うスキルを磨いていく必要があり、そういうところを会社の施策として考えていく必要がありそうですね。皆さま本当にありがとうございました。

※この座談会の様子はオンデマンドで視聴可能です。下記よりご視聴ください。

https://www.automationanywhere.com/jp/resources/rpa-webinars/coe-best-practice

座談会メンバー

座談会参加のメンバー 左より中川 武也、佐野 千紘、西條 孝史、(Web遠隔参加は渡部 貴志)