エンタープライズ企業のための「次世代RPA」メディア

削減時間だけではない! RPA導入の推進者が知っておくべき6つのメリット(前編)

2020/05/01 インタビュー, スライダー



 企業がRPAに寄せる効果として、業務にかかる時間の大幅削減を挙げる声は大きい。実際に、削減時間は数字として分かりやすく、特にROIを評価する必要のある経営者にとって重要な定量的評価指標であることは間違いない。

 しかし、実際の導入企業を見てみると、本当の意味でのRPAの導入効果は、「必ずしも削減時間ではない」と話すのは、米系RPA企業であるオートメーション・エニウェアでカスタマーマーケティングを担当する長橋明子氏だ。「ユーザーへの取材を重ねるうちに、時間以外の効果を強調する声の方が大きいことに気がつきました。RPA導入にかかわる意思決定者や推進者が知っておくべきメリットがいくつかあります」と強調する。

メリット1:品質が向上する

時間の削減以外のメリットとは何なのか。1つめは、作業品質が向上することだ。

「人間が手でやっていた作業をロボットが代替するようになると、作業はより早く、かつ正確になります。人が行う作業には、どうしても間違いが発生するリスクがありますが、ロボットはルールさえ決まっていれば間違えることはないからです」(長橋氏)

例えば、入力間違いなどの人為ミスがなくなり、作業の品質が向上するのは大きな効果であろう。

  • メールやExcelから手作業でデータを転記する作業
  • アカウントや品目などの登録や変更、削除作業
  • 複数のシステムやデータからさまざまな数値を取り出し、1つのファイルに統合する作業

ミスがゼロになり、品質が向上するとすれば、時間の削減以上の効果があるという指摘にも納得できる。人が行う作業の正確性を100%にし、それを担保することは非常に難しいが、ロボットであれば間違いをしないことが分かっているため、「人為ミス0%」と主張できる。また、結果として、従来人が行っていたダブルチェックの作業がなくなるという大きな効果も期待できるのだ。

メリット2:社員のストレスが軽減される

次に、特に現場からよく聞こえてくるRPAのメリットが、社員のストレス軽減だ。

「ルーティンワークが人に与えるストレスやプレッシャーは実は非常に大きいのです。オートメーション・エニウェアが実施した調査では、『世界一嫌われている業務はデータ入力』であることが分かっています。ちなみに日本では、経費処理やデジタルデータの整理がトップでした」(長橋氏)

調査では、調査対象者のほぼ全員が、「自分の本来の業務ではない反復的な手作業のデジタル業務を自動化で排除するべきである」(85%)と回答しており、「変革によって幸福度が増す」(88%)と期待しているという。

以前、長橋氏がTwitterで投稿をしたところ、多くの方に賛同の声をもらったと打ち明ける。

「RPAやAIが人の仕事を奪う」という議論が盛んだが、導入企業の声を集めていくと、ルーティンワークが人にプレッシャーを与える悪影響について、われわれが本気で考えるべきであることが見えてくる。できて当然のことを期日通りにこなすだけの仕事は、ロボットに任せた方が従業員の満足度は高まるという前提を持つべき時が来ているのかもしれない。

このルーティンワークによるプレッシャーにはさまざまな種類がある。

間違いが許されないプレッシャー

給与や査定に関する業務は非常にセンシティブであるため、決して間違いが許されない。そのプレッシャーはかなり大きい。

常に席にいなければならないストレス

ある会社では30分に1回システムから送られてくるメールの処理をする必要があるため、業務時間中は席にいながら断続的にその対応をしなくてはならない。

見たくない情報を見てしまうことによるストレス

人事評価などセンシティブなデータを当事者以外が見るべきではないが、それでも取りまとめなどの作業が必要になった場合は、人事部門の担当者などの第三者が見ざるを得ない状況になる。見てしまうことによる精神的なストレスは相当なものである。

Excelなどの細かい作業による身体的負担など

細かい数字を見ながらの作業は肩こりや眼精疲労につながる。

メリット3:業務が平準化する

3つめは、業務の標準化だ。単純な業務時間の削減とは別に、週末、月末、月初、年末、年度末など、特定時期に集中して発生する作業をロボットが代替することで、「繁忙期」の忙しさが軽減するのである。

「ある会社では、週次の売り上げデータを翌週月曜日の朝に提出する必要があるため、取りまとめ作業を必ず土日に休日出勤してやっていましたが、この作業をロボットに代替させるようにしました。これによって、担当者が休日出勤をしなくて済むようになりました」(長橋氏)

後編に続く