音大卒の人事担当が、RPA を手にして実現した企業改革とは

2021/12/13 インタビュー, ウェビナー, スライダー



オートメーション・エニウェア・ジャパン株式会社は、11月17日に2週連続となる、【全社展開の秘訣をプロに聞く座談会】と題したオンラインセミナーを開催しました。
今回はその第2回目となる「音大卒の人事担当が、RPA を手にして実現した企業改革とは」を開催。

RPA 導入後に思うような成果が上げられず、課題に直面している企業の皆様に向けて、全社展開を進めるうえでのコツや、推進担当者が重視すべきポイント自動化の文化を社内に根付かせるための考え方などについて、多くのRPA プロジェクトに携わってきた“RPA 推進のプロ” が語ります。

【パネリスト】
オートメーション・エニウェア・ジャパン株式会社

カスタマーサクセス カスタマーサクセスマネージャー 山脇 智美

プロフェッショナルサービス本部 本部長 渡部 貴志

司会進行:
エンタープライズ事業本部 ビジネスアナリスト 佐野 千紘

IT未経験の事務職が、RPA研修を受ける

佐野:本日は、音大卒の人事担当というITとは無縁の経歴ながら、RPAの全社展開を実現した山脇さんの取り組みをご紹介します。山脇さん、自己紹介をお願いできますか?

山脇:私は今年の6月にオートメーション・エニウェアに入社するまで、前職にて3年間、オートメーション・エニウェアのユーザーでした。ITとは無縁だった私が、なぜRPAを全社展開することができたのかを語り尽くしたいと思います。よろしくお願いします。

佐野:まず、RPAと出会ったきっかけを教えてもらえますか?

カスタマーサクセス カスタマーサクセスマネージャー 山脇 智美

山脇:当時はアパレル企業の人事部門に所属し、主に給与計算や税務処理を担当していました。2人の子どもを保育園に預けていたため、定時には必ず仕事を終えて迎えに行くというミッションと毎日戦っていました。
そんなある日、社内でRPAプロジェクトが立ち上がり、決められた人だけがオートメーション・エニウェアのトレーニングを受けられると耳にします。もともと業務の効率化に興味があったったので上司に上申し、トレーニングを受けさせてもらいました。

佐野: IT経験ゼロでBot開発を習得していくのは大変だったのでは?

山脇:かなり大変でした。社内でマクロが書ける人に聞いてみたり、書籍を読み漁ったり、インターネットで検索したりと夢中になって調べ、本業を続けながらBot開発をしていきました。そして、トレーニングを受けてから1か月後ぐらいにようやく自分が作りたいと思ったものを作れるようになりました。

最初のBotが完成、他部署の仲間にプレゼン

佐野:最初にBotが動いたときの気持ちはどうでした?

山脇:最初にエラーなくBotが動いたときは“かっこいい”の一言でした。仲のいい人にも見てほしくて、「これすごいでしょ」って自分が作ったBotを見せて回りました。
反応としては、3割ぐらいの人が「これが噂のRPAか」とか「速い、もう終わったの」とかすごくいい反応で、自分の部署でも使いたいと言ってくれました。でも、7割の方はふーんという反応だったり、自分の仕事を奪うんじゃないかと思われたり、「うちはいいよ」と言われました。

エンタープライズ事業本部 ビジネスアナリスト 佐野 千紘

佐野:否定的だった人の反応が変わってきたタイミングはありました?

山脇:まず、いいねと言ってくれた人たちにBotを作ってあげて、こういうことできますか、ああいうことできますかというリクエストに応えていったら、その人たちがまた広めてくれて。否定的だった人たちも少しずつ興味を持ってくれた感じです。3か月ぐらい経ったときにそういう変化が起き始めました。

渡部:まさに我々が“SMEドミノ”と呼んでいる広がり方ですよね。SME(業務のエキスパート)は業務を熟知しているため、自動化のアイデアをたくさん持っています。また、課長や部長もSMEに相談するケースが多く、部門の実権を握っています。さらに、他部門のSMEと横のつながりがあります。「こんな便利なものができたらしいよ」という評判がSMEを介して全社に広がっていくので、SMEを巻き込むことが重要になります。

役職に関わらず、とにかく各部門の業務に一番詳しい人が“SME”

「業務の棚卸」の必要性

佐野:具体的には、どういうリクエストがきましたか?

山脇:まず、経理部門から仕訳伝票処理の依頼がありました。毎月、締め日の直前に残業が増えてしまうため、RPAで解決してほしいと言われました。あと、多かったのは商品企画部門の会議用資料の作成です。前職は小売業でしたので、毎週月曜日の午前中までに前週の売上速報を商品ごとに出さなければならず、多くの社員が月曜の早朝に出勤していました。それをRPAで解決ほしいというリクエストでした。

佐野:山脇さんとは違って、「RPAのネタが見つからない」という課題を抱えている方もいると思います。渡部さんからアドバイスはありますか?

プロフェッショナルサービス本部 本部長  渡部 貴志

渡部:まず、業務の棚卸をする必要があります。そのときに、これはRPAに向くかも・向かないかもという考えは一度取り払って、全部棚卸することが重要です。次に、棚卸した業務をどう整理していくかですが、「ECRS(イクルス)」というフレームワークを使います。Eliminate:無駄なことをやめる。Combine:似ている作業をまとめる・組み合わせる。Rearrange:入れ替える。Simplify:簡素化する。ECRSを使って整理することで、RPAのネタが見つけやすくなります。

人事部門を離れ、CoEを立ち上げる

佐野:すべてのリクエストに応えてあげたんですか?

山脇:人事業務と兼務していたので、リクエストがあるのに応えてあげられず、悔しく思っていました。せっかくRPAという素晴らしいものがあるのでぜひ使ってもらいたい、そのためには私がBot開発の専任にならないと実現できないと考え、15年間いた人事部門から、RPAプロジェクトの事務局があった経営企画部門への異動を願い出ました。そしてCoEを立ち上げ、正式にRPAプロジェクトリーダーとなったわけです。

佐野: CoEができた後は、順風満帆にいきました?

山脇:いえ。プロジェクトがスタートして半年から1年で、目標を見失いがちになりました。何をもって導入効果とするかがわからず、とりあえず年間削減時間を掲げて走り出そうとしたのですが、CoEのメンバーから強く反発されました。トレーニングを受けていないメンバーもいましたので、「何ができるかわからないのに削減時間だけ言われても」ということだったと思います。
そこで、改めて社内研修を行いました。さらに、以前私がBotを見せて回ったように、そのときよりも高度なBotを作って各部署を回りました。そうするうちにCoEのメンバーもRPAの適用範囲がわかるようになり、この部署では年間何時間ぐらい削減できそうかという見通しが立てられるようになりました。

また、社内研修を受けたメンバーのうち2名がBot開発を定期的に行うようになりました。私のほかに2人も社内で実行されているBotについて把握し、メンテナンスができるようになってくれたことはとても心強かったです。

効率化の意識を全社に根付かせる企業改革に成功

山脇:全部署にBotが配置できた頃から、各部署の部長が事業部ごとの会議でRPAのユースケースや、それによって削減できた時間を発表するようになり、いい意味で各部署が競うようになっていきました。
ある日、普段関わりのない部署の部長が「うちの〇〇さんが仕事のレベルをアップさせたいと言っているので、ぜひRPAのレクチャーをしてほしい」と私の上司にお願いしにきたときには、「ああ、社内の推進がうまくいっているんだな」と実感できて嬉しくなりました。

佐野:最後に、皆さんにメッセージをいただいてもいいですか?

山脇:本日お話したことは、私だけが経験する特別なことではないと確信しています。皆さんの会社に、毎日定時で仕事を終わらせている人、ITの経験はないけど業務を1秒でも早く終わらせるために工夫している人はいませんか? そんな人がいらっしゃいましたらぜひBot開発を体験させてあげてください。強い武器を手にした勇者がきっと皆さんの会社を変えてくれるはずです。また、オートメーション・エニウェアにはユーザー会があります。そこには多くの仲間がいますので、安心してRPAの冒険に出発していただけると思います。本日はありがとうございました。