上段左から 山田様、中山様、石積様、佐野様、高田様
下段左から 藤田様、柳原様、入江様
お話をおうかがいした方:
丸喜産業株式会社 代表取締役社長 小薗雄治様
シティック・キャピタル・パートナーズ・ジャパン・リミテッド 世古大蔵様
Contents
概要
プラスチックの原料販売、リサイクル材の回収・開発などを展開する丸喜産業は、受注から工場への加工指示までの業務にAutomation AnywhereのRPAを導入しました。導入ではASIMOV ROBOTICS(アシモフ・ロボティックス)のコンサルティングを受け、業務の整理を進めながらロボットによる自動化を実施。現在は加工依頼書の自動作成と工場への自動送信などに適用しています。これらの業務を担当していた営業部 業務課では1日あたり一人2~3時間の残業が常態化していましたが、ロボット導入後は年換算で3,800時間の削減が実現しています。
課題
業務のほとんどは、Excelで管理、作業の属人化、重複化の解消が不可欠
富山県に拠点を置く丸喜産業は、プラスチックの原料販売から着色、リサイクル材の回収・開発、製造販売を一貫して行い、県下に4つの工場を有しています。2016年に50,000㎡の大規模拠点を設置し、再生材のさらなる安定供給を可能にする生産体制を整えるなど、資源循環型社会の実現のためにリサイクル事業に力を入れています。
同社の営業部業務課では、取引先からのオーダーを管理ファイルに入力するほか、工場への製造指示、売上・仕入の管理など、営業・製造現場のバックオフィス業務を5名体制でこなしています。
こうした業務のほとんどはExcelで管理され、Excelファイル間や販売管理システムとのデータ連携ができておらず、重複した入力などに多くの手間がかかっていました。また、さまざまな業務が属人化し、同じ商品なのに複数の商品名が存在したり、売上稟議書のフォーマットが複数あり手書き処理が残っているなど多くの課題がありました。
代表取締役社長の小薗雄治氏は、「これらの課題を解決するにDXを進めなければならないと感じていました。しかし、大前提である業務の整理ができておらず、さらに専任のIT担当者がいない、予算が厳しいという状況で、自動化については二の足を踏んでいる状態でした」と話します。
ソリューション
スモールスタートが可能なシステム導入と丁寧なコンサルティング
課題解決の糸口となったのは、同社の株主であるシティック・キャピタル・パートナーズ・ジャパン・リミテッドから紹介されたASIMOV ROBOTICS(以下、ASIMOV)との出会いでした。
「RPAを使えば、大がかりなシステムを一度に導入しなくても、段階を踏んで効率化を進められる」というASIMOVからの説明を受けた小薗氏は、RPA導入が自社にとって最適な改革方法だと判断し、ASIMOVのコンサルティングを受けながらAutomation Anywhereの導入を進めていくことを決断しました。
シティック・キャピタル・パートナーズ・ジャパン・リミテッドの世古大蔵氏は、ASIMOVについて次のように話します。
「RPA導入前のハイレベルなビジネスの議論から、導入後の実務的な相談までシームレスにサポートをしてもらえることが、ASIMOVをパートナーにする最大の魅力でしょう。特に、入口の議論に関しては、目先の問題を解決することに主眼を置くのではなく、顧客のビジネスの全体像をきちんと把握した上で、業務上の問題点を社員の皆さんと一緒に丁寧に棚卸ししてもらえます」
詳細
多方面にヒアリングして課題を抽出、「見える化・標準化」「運用の見直し」に取り組む
丸喜産業とASIMOVは、まずは業務全体のヒアリングを通じて業務を見える化し、課題を特定してからRPA化する業務を絞り込んでいきました。最初のヒアリングでは、対象となる本社の業務課だけではなく工場まで足を運び、工場のスタッフから直接「困っていること」を聞き出しました。こうしたことが、現場でのRPAの導入・運用をスムーズにします。
「RPAの導入そのものを目的化せず、あくまでも業務効率化を目指す一つのツールだと考え、会社が実施すべき業務の『見える化・標準化』『運用の見直し』を一緒に取り組んでいくというASIMOVの姿勢には大変共感しました」(小薗氏)
フェーズ1では、受注から工場への加工指示までの流れについての整理と自動化を進めました。
従来、仕入先からの見積書を業務課でまとめた後、管理表に入力し、各工場に加工依頼書を発行する作業をExcelベースで行っていました。また、販売管理ソフトで行っている売上処理について、Excelに入力された情報をもう一度販売管理ソフトに手入力するという二度手間が発生していました。こうした作業について自動化を進め、Automation Anywhereのロボット4種類を開発して稼働させています。
これらの作業は、丸喜産業がある富山とASIMOVの拠点がある東京との間で、チャットツールやWEBミーティングで頻繁に進捗や仕様の詳細を確認しながら進めました。プロジェクトのスタート時にASIMOV担当者と十分に話しておくことで、その後のオンラインでのコミュニケーションも違和感なく進められました。
RPA導入の立役者、石積氏
結果
年換算で3,800時間削減、業務改善を自主的に考える気風も生まれる
フェーズ1が終了するころには、従来1人につき1日2~3時間の残業が常態化していたものが、目に見えて減っていきました。同じタイミングで社員の1人が産休に入り派遣スタッフに変わるということがありましたが、慣れないスタッフが加わったにもかかわらず残業時間は減っていきました。
業務課全体として残業が1日あたり延べ16時間減ったことで、1カ月では約320時間、年換算では3,800時間削減できたことになります。
「RPAの導入準備にあたっては業務整理をする必要があり、特に商品マスターの統一など多くの負担がありましたが、関わってくれたメンバーは本当によく頑張ってくれました。これだけ大変な作業を乗り切れたのも、その先にある『ロボットとの協業』というゴールの絵を共有することができていたことにあると思います」(小薗氏)
また小薗氏は、今回の成功体験から想定以上の副産物が生まれたと話します。
「ASIMOVと一緒にRPAの導入作業をしていく中で、見える化・標準化をすれば業務が効率的になるという考えが社内に浸透しました。今では、今回RPAの対象となっていない業務でも、さまざまな業務改善を自主的に考え、進めてくれるようになりました。いつかは自分たちでロボット開発にチャレンジしてみたいという気持ちも出始めています」
また世古氏も「業務課のメンバーは、ASIMOVメンバーと一緒に『問題の見える化』のプロセスを体感することで、結果として従来以上に問題意識を高く持つようになりました。普段の業務においても、より良く効率的にするにはどうしたらよいかを自ら考えるような習慣が根付いてきたようです」と話します。
今後
フェーズ1の成功をきっかけに、RPAの適用範囲を生産現場や営業活動などにも拡大
現在進行中のフェーズ2では、複数の工場にある在庫管理表の一元化を図る予定です。さらにフェーズ3では、営業担当者が商談中にリアルタイムで在庫を確認できる仕組みを作ることで機会損失を減らし、営業効率の向上につなげていく計画です。
「計画をスピーディに進めていくための作戦を、現在ASIMOVと策定しているところです。また、業務課のスタッフには、フェーズ1で削減した時間をフェーズ2のための業務整理に当ててもらっています。フェーズ3まで完了した後は、人の判断が必要な営業業務に注力してもらうことで、受注から納品までのリードタイムの短縮、ひいては、顧客満足度のさらなる向上に努めたいと考えています」(小薗氏)
新型コロナウィルスの拡大もあって、スタッフの表情も沈みがちで疲れが見えていました。しかし、「ロボットが動き出したころから表情が明るくなり、笑顔が増えていきました。このことが一番うれしかったことです」と、小薗氏にも笑顔が広がります。