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JTB、「4つのフェーズ」によるRPA導入で約40,000時間の削減に成功 社内の「アールピーエイター」がDXに向けた業務改革を牽引

2021/04/27 インタビュー, スライダー, 導入事例



組織の概要

JTBグループを統括する事業持株会社である株式会社JTB。JTBグループは「ジャパン・ツーリスト・ビューロー」として1912年に創立し、1963年に日本交通公社として設立されました。2018年4月に『新たな価値提供に向けた経営改革』を実施するため、地域ごとに分かれて事業展開していた北海道から九州まで15社を統合し、さらには2021年4月に中期経営計画「『新』交流創造ビジョン」の実現に向け、新たな事業戦略の3つの柱である「ツーリズム」・「エリアソリューション」・「ビジネスソリューション」を推進するために組織の再編を行い、新たなグループ経営体制をスタートいたします。お客様の求める価値を実現するために、3つの事業を掛け合わせて取り組むことによって、お客様のより高い実感価値を実現してまいります。その結果とし、現下の厳しい経営状況を克服し、これまでにないスピードで再び成長軌道に回復することを目指します。

 

課題

顧客目線に立った「JTBならではの価値」提供に向けDXを推進

JTBグループでは、法人分野でのMICE(Meeting、Incentive tour、Convention、Exhibitionの頭文字をとった造語)や地域交流ビジネス、個人分野でのオーダーメイド型商品の販売など、総合旅行業からソリューション提供型のビジネスモデルへ転換しようとしています。

 

そのために、デジタル技術を活用し、ビジネスモデルや働き方を変革するDX(デジタルトランスフォーメーション)にも積極的に取り組み、6つの経営方針の一つである“「デジタルの基盤」の上に「ヒューマンならではの価値」を生かす”との経営方針に基づき、様々な施策を行っています。

 

RPA導入及び運用のリーダーを務める、JTB 国内仕入商品事業部 営業管理部 担当課長の当摩牧子氏は、国内旅行商品を例に、これまでの業務でどんな課題があったのかを説明しました。国内旅行商品は、目的地の宿泊施設との間でプランや料金交渉を行い、移動手段である飛行機や新幹線の手配や交渉、滞在中の交通機関の交渉や、旅行先でのアクティビティや追加の旅行素材の交渉を行い、価格決定を経て商品化されます。

 

「出発地と目的地の組み合わせは全国にわたり、これまでは全国の組織で、商品企画に必要なすべての機能を備えていた」ことから、業務フローを標準化し、デジタルツールを使って業務生産性を高めていくことが急務でした。

 

そこで、「生産性向上には、これまで手作業で行っていた業務をRPAによって自動化することが有効だ」と考え、RPAツールの導入の検討を開始したということです。

 

ソリューション

管理者負荷を軽減する「開発、運用のしやすさ」と処理スピードの早さが決め手

2017年から、国内外のRPAツールについて情報収集を開始しました。当摩氏は「外部の協力会社などの協力も得て、導入実績が豊富な国産ツールと、国内外で導入実績のある海外製ツールの導入を決めた」と説明します。

 

そして、導入を進めながらツールの習熟につとめ、2018年にはソフトウェアロボットの開発を拡大する段階に入りましたが、適用業務の範囲を増やし、開発を内製化していくには、「管理面と開発スキルに課題があった」と当摩氏は話します。

 

RPAの導入当初は、ロボット開発者と運用者は同一であるケースがほとんどでした。しかし、社内でRPAの利用が拡大していくと、「ロボットを開発しない(できない)ものの、実行する」担当者が増えていきます。すなわち、開発者と運用者が別のケースが増えていくのです。

 

具体的に、RPAツールの運用で問題となるのが「デスクトップ型かサーバー型か」という問題です。一般的に、デスクトップ型ツールの場合、開発者が開発したロボットを「実行者のパソコンに1台1台、インストールされ」、実行者のパソコンで管理されます。

 

一方、サーバー型ツールの場合、ロボットはサーバーで一元管理されます。今後、少数の開発者に対し、多数の実行者でRPAを運用するときに「シナリオの修正などが発生した場合、実行者のパソコンにインストールしたロボットをそのつど修正しなければならない」手間が発生します。

 

また、「実行者が増えれば増えるほど、ライセンス費用が高額になるケースがある」ことや、「ロボットの実行ログが取得できないため、管理者が管理しきれない“野良ロボット”が発生してしまう可能性も懸念された」と当摩氏は説明します。

 

この点、デスクトップ型では管理者負荷が高まる可能性があり、本来、業務効率化に寄与するはずのRPAが、担当者の業務負荷を高めることにもつながりかねません。

 

いくつかのRPAツールを試行した結果、2019年4月にクライアント・サーバー型RPAの「Automation Anywhere Enterprise」に一本化することとなりました。決め手となったのは「開発、運用のしやすさ」です。

 

「プログラムを開発できない人も、1時間程度のレクチャーで開発が可能であることに加え、ロボットの部品化が可能でした。同じシナリオは部品化することで重複する開発を減らし、修正コストも低減できると考えました」(当摩氏)。

 

また、処理スピードも高く、「処理時間を計測、比較したところAutomation Anywhereが一番早かったことも決め手となった」ということです。

 

メリット

  • 稼働中のロボット数:約100ロボット
  • 削減時間:約40,000時間
  • 導入済みの部門の割合:3/5部門

 

詳細

4つのフェーズでRPA導入を進め、RPAに前向きな「アールピーエイター」が業務改革を牽引

RPAの展開・推進の取り組みは、対象業務を「導入効果」を縦軸に、「開発の難易度」を横軸にして分類した上で、「4つのフェーズ」で行われました。

 

第1フェーズでは、「効果が大きく、開発の難易度が高い」業務をターゲットにしました。導入効果を経営層をはじめとする社内に認知してもらうことが狙いで、当摩氏によれば、「開発難易度は高いものの、少なくとも導入後、2〜3年でコスト効果が出る業務を選定した」ということです。

 

具体的には、「宿泊仕入れ」業務を対象に、トップダウンで導入を推進しました。最初は2拠点で導入を開始し、ロボット開発は外部の協力会社の支援を得ながら進め、その後、順次、全拠点へと拡大していきました。その結果、拠点によっては、残業時間が対前年比で60%削減される効果を得たということです。

 

第2フェーズは、「開発難易度が小さく、コスト効果も小さい」業務が対象となりました。この段階は、社内の開発スキルアップに重きが置かれ、ボトムアップでファンを増やす段階と位置づけられました。

 

具体的には、「社内に小さな成功事例を作りアピールするとともに、開発の適性があるメンバーを掘り起こし、運用体制を整備すること」を目的としました。

 

続いて、第3フェーズでは、「第2フェーズよりも難しい開発の内製にチャレンジし、社内の開発メンバーのスキルを最大限引き上げる」ことを主眼としました。

 

具体的には、「社内で開発を行うが、対象業務選定の判断では開発の難易度は考慮しない」ことを原則に、開発教育体制や、運用時に発生するエラーに対応する体制として「RPA専属チームとして、社内横断のCoE(Center Of Excellence)を立ち上げた」と当摩氏は説明しました。

 

そして、第4フェーズとして、「RPAとは関係のない、業務のボトルネック解消に向けた変革」に着手しました。具体的には、アンケートなどで社内業務のボトルネックを把握し、その解消に社内でプロジェクトチームを組成しました。そして、「ボトルネックとなっている業務をやめる、他の業務と統一する、RPAやマクロなどのプログラムを用いて省力化するといように仕分けを行った」ということです。

 

このフェーズでは、RPAを活用した改革に前向きなメンバーを「アールピーエイター」と名づけ、社員に向けてRPAを身近な存在に感じてもらう工夫もしました。

 

RPA導入及び運用のリーダー、当摩牧子氏

結果

稼働時間6000時間の目標に向け、改革の取り組みを進める

これら4つのフェーズの取り組みによって、社内の5部門のうち3部門が導入済みで、約100のロボットが稼働中です。2020年度には、KPIとして定めた月間のRPA稼働時間4000時間を突破し、新たな目標である6000時間稼働へ向け、着々と取り組みを進めているところです。

 

当摩氏は、「稼働時間については、コロナ禍の影響もありバラツキがあったものの、2020年11月以降は一気に増加し、KPIに設定した月間4000時間の目標を突破、6000時間にKPIを上方修正したところだ」と説明します。

 

自動化されたプロセスは、基幹業務システムへの各種登録業務、分析・交渉用データ抽出、増売用販促物作成などがあります。登録業務は、「勤怠や会計などの基幹業務システムにリストのデータを登録していく業務をRPAが代行する」(当摩氏)もの。また、分析データの抽出は、旅行商品は時価であるため「他社の旅行商品の金額を分析して戦略的な価格設定を行うためのデータの抽出作業を自動化するもの」です。

 

そして、増売用販促物作成は、チラシやパンフレットの作成工程にRPAを組み込み、簡単なチラシの作成をRPAに代行させたり、ある旅行商品の内容が変わったときに、対応する箇所を修正する業務をRPAが代行することで、人件費などのコストを最適化する取り組みです。

 

RPAによる自動化が進んだことで、実務担当者からは、「延々と続く単純作業や登録ミス(漏れ)のリスクが一気に解決でき、大変重宝している」「手作業だと実現不可能な作業も、ロボだと実現できる」「虚しい繰り返しの作業や処理待ち時間をロボに任せることができてストレスがなくなった」などの声が聞かれています。

 

 

今後

実行PCのクラウド管理によって、ロボットのさらなる安定稼働を実現したい

今後はさらにRPA実行者が増えていくことが考えられます。一人の実行者の処理量を増やしていくには、「一人が多くのパソコンを操作すること」が有効です。たとえば、実行指示をWebブラウザーの管理コンソールから行えるようになれば、離れた拠点のパソコンなど「実行PCから遠隔にあるPCを操作する」ユースケースにも対応できます。

 

さらに、遠隔にあるパソコンの「Windowsアップデートや業務アプリケーションの更新など、ソフトウェア管理を一つの拠点から集中管理できるようになる」と当摩氏は話します。これにより、ソフトウェアの稼働状況が管理できるようになり、ライセンスの有効活用やコストの最適化と行った効果も見込めるようになります。

 

JTBでは、オンプレミスで運用してきたサーバーのクラウドへの移行に向けた準備が進んでいます。一方、クライアントPCについては、「今のところノートPCに統一しているものの、機種の違いなどでロボットの挙動が不安定になるケースもある」と当摩氏は話します、

 

そこで、今後は「クライアントPCも、VDI(仮想デスクトップ)などのテクノロジーを用いて、クラウドで集中管理することで、機種依存の問題を解消し、ロボットの安定稼働を実現したい」ということです。

 

VDIは情報漏えいなどのセキュリティリスクの軽減や、働き方改革の観点でも必要となってくることから、当摩氏は「会社の方針と足並みを合わせて進めていきたい」と締めくくりました。

 

自動化されたプロセス

  • 基幹業務システムなどへの登録業務
  • 分析・交渉用データ抽出
  • 増売用販促物作成など

 

業界

  • 旅行業

※本記事の内容は、2021年4月時点での情報を元にしております。