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住友ゴム工業が本社・工場約80部署でRPAを活用した業務改革を実施
定型業務の自動化により削減時間は年間約35,000時間にのぼる

2022/01/21 スライダー, トピックス, 導入事例



組織の概要

1909年(明治42年)創業、独自のゴム技術を生かし、タイヤ事業からスポーツ事業、 産業品事業まで多岐にわたる事業を展開する住友ゴム工業株式会社。グローバルに広がる開発・生産・販売体制を基に、400年にわたり脈々と受け継がれている「住友事業精神」に則り、持続可能な社会の実現に貢献する活動も継続・強化しています。

【課題】業務改革・働き方改革を進める中で「定型業務の省力化」が課題に

タイヤ・スポーツ・産業品事業を軸に、多岐にわたる事業を展開する住友ゴム工業株式会社。同社は、かねてより企画・分析など本来業務に注力できる環境を目指した業務改革を検討していました。同社 RPA推進室 舛田和也氏は、「従業員が日常的な定型業務に忙殺され、なかなか業務改革がうまく進まない課題があった」と話します。

そこで定型業務の自動化にRPAを導入することが検討の俎上にのぼりました。舛田氏によると「経営企画部主導で外部のコンサルタントも加えて、トップダウンで動き出し、2018年末に1-2業務で試して成功したため、2019年初頭から本格検討を開始した」ということです。

まずは各部業務の課題を洗い出すことからはじめ、属人化した業務のルール明文化や不統一なルールの標準化、部門間をまたがる業務の連携といったテーマが検討され、まずはいくつかの業務を対象にテスト導入を行い、効果を検証することになりました。

そして、RPA専門の推進部署として2019年4月に発足したのがRPA推進室です。同推進室の廣田慎一氏は「発足当時のRPA推進室は専任が1名、兼任で担当する担当者が8名の体制だった」と説明します。RPA推進室では、どんな業務をRPA化するかという要件定義を行い、またRPAにこだわらず課題解決策を提示することにも取り組んでいます。そして、IT部門がRPAの開発を担当して、ノウハウや知見を蓄積し、ゆくゆくはユーザー開発に舵を切っていく方向性が定められました。

「2021年12月現在のRPA推進室は専任が4名、兼任で担当する担当者が14名の体制となっています」

【ソリューション】開発の操作性や開発後の管理面の使い勝手が決め手

RPAツールの選定は、2018年第3四半期頃から開始されました。同社 RPA推進室 岸保安里沙氏は、「代表的なツールから3つくらいの製品に絞り、当初はユーザー開発よりもIT部門による開発に重点が置かれていたため、機能面から最終的に2製品に絞った」と説明します。

検討に加わったコンサルティング会社でノウハウを持っていた点や、同社のシステム子会社の検証結果とその評価を参考にAutomation Anywhereの選定を決めました。

特に「開発したあとのRPAの管理面の優位性」が選定の決め手に挙げられます。舛田氏は「ロボット管理機能では、サーバーにアップロードされたロボットなどのファイルを管理するリポジトリ機能など、管理機能が使いやすいと感じた」と話します。

また、ロボット開発機能も、条件分岐などの処理の追加など開発の過程が視覚的に分かりやすく表示されるため「作ったり修正したりするのがやりやすい」というのも決め手となったポイントです。

RPA 推進室 舛田 和也 氏

 

こうして、「Automation Anywhere Enterprise」の採用を決定。2018年第4四半期よりまずは効果の見込みやすい経営企画部の業務からパイロット導入されることとなりました。

具体的には、国内外のグループ会社の業績を集計、連結して表にするなどの定型作業があります。「各社から資料を受け取り、いくつかの業務システムを閲覧してデータを集めExcelに転記する作業を自動化することに取り組んだ」(岸保氏)ということです。

自動化の結果、「RPA化以前は月間で約20時間要していた作業が約30分に短縮され、経営会議直前には丸一日以上を要する作業が大幅に軽減された」と岸保氏は話します。集計したデータを分析する本来の業務に「これまでは資料を整えてギリギリ会議に臨んでいたのを、分析に時間を十分にかけて会議に臨めるようになった」ということです。

メリット

稼働中のロボット数:226(2021年10月時点、動作検証中も含む)

削減時間:年間約35,000時間

導入済みの部署の割合:本社と工場約180部署に対し約80部署

【詳細】「感度の高い」社内ユーザーを中心に徐々にユーザー開発を拡大

こうした成果により、2020年からは本格的にユーザー開発のトライアルを開始しました。コロナ禍もあって大幅な計画の見直しはあったものの、2020年後半から各工場にも拡大し、2021年も継続しています。

岸保氏は、「2020年はユーザー開発の進め方を手探りで工夫した」と振り返ります。

「当初、様々な部門でRPA化に適した業務を棚卸ししたのですが、IT部門が開発する体制では、開発側の工数もあるため、削減時間が相当ないと投資対効果がそれほど見込めないことがわかったのです」(岸保氏)

しかし、工場などの経理部門におけるExcelなどへの転記を行う“細々とした”定型業務も、積み重なれば大きな効果につながります。そのため、何とか自動化する方法がないかを検討していたとき、「経理や人事総務、品質保証部門、工場などいくつかの部門で、感度の高い社内ユーザーが何人か手を挙げてくれた」(舛田氏)ということです。

自発的に手を挙げてくれた社内ユーザーにAutomation Anywhereを使用してもらったところ、「意外とスムーズに開発できそうだとの確信を得た」ため、2021年に入って徐々にユーザー開発を拡大していったということです。

それまでIT部門で蓄積したノウハウや知見を横展開しながら、「IT部門が主導する大規模な開発と、ユーザー開発をベースにした現場での開発を両方選択できる環境を整備していった」と舛田氏は話します。

【結果】本社と工場約80部署でRPAを導入、年間約35,000時間の削減実績

こうした取り組みの結果、2021年10月時点で稼働中のロボットは、動作検証中を含めて226、本社と工場約180部署に対し約80部署で導入され、削減時間は年間で約35,000時間という実績となりました。

また、同社が行う稼働状況調査によると、定性効果として最も多かったのが「業務の正確性が高まった」「新しい仕事に取り組めるようになった」「定型業務のミスのプレッシャーから解放され気持ちが楽になった」などの回答でした。

「残業が減った、納期を気にしなくてよくなった、休暇が取りやすいという回答を想定していたので、業務の正確性が高まったという回答が最多だったのは想定以上の成果だといえます」(岸保氏)

また、廣田氏によると、これまで出社前提の定型業務が自動化されたおかげで「在宅でも可能になり、コロナ禍での働き方に対応することが可能になった」ということです。

これは、RPA化を機に業務整理を行った結果、「それまで紙ベースで回覧していた業務がExcel化されるなどの、出社を前提にしなくてよい環境が作られていたことが背景にある」と廣田氏は話します。

そして、担当者の業務改革に対する「気づき」につながっている点もポイントです。RPA導入のスローガンは「変われる経験を提供し続ける」「従業員体験の向上」にあり、RPA導入により業務が効率化される業務改革の経験を通じて自分自身の成長や、自分や家族との時間確保、そして、業務改善に協力し合える組織文化の醸成につながっている──、廣田氏はこのように述べました。

同社では2020年より年1回、RPA開発者のモチベーションアップと、社内事例の共有を目的に同推進室が社内イベント「RPA Meets」を開催しています。

表彰式や開発体験のハンズオン、講演会などが行われ、表彰式の模様は「Microsoft Teams」でライブ配信され「今年、RPAによる自動化業務数が200件を超え、内ユーザー開発したものも100件を超えた」と廣田氏は説明します。

RPA 推進室 廣田 慎一 氏

 

【今後】全社展開をさらに進め、社内開発者への教育にも注力していく

今後は、「全社展開をさらに拡充していきたい」と舛田氏は話します。

「国内だけでもグループ会社が数多くあるため、特に販売会社における業務課題の解決に応えていきたい」ということです。社内普及が拡大していくとRPA推進室だけで展開を進めていくことには限界があるため、運営体制強化を含む、社内の協力体制の構築、情報共有をさらに強化していくことも重要だということです。

特にユーザー部門での開発を進めていくために「動画をはじめとしたコンテンツの発信、また、すでにRPAの教育、研修を受講したものの休眠状態にあるユーザー開発者に対する再研修の促進などのテーマに取り組んでいきたい」と岸保氏は述べました。

RPA 推進室 岸保 安里沙 氏

 

廣田氏は、「IEのサポート終了やWindows 11への移行などの状況変化へも柔軟に対応していくことや、ユーザー開発の効率・品質を上げる共通部品の拡充など、さまざまな課題の解決に取り組んでいきたい」と抱負を述べました。

また、さらなる業務改革に向け、紙の帳票類のデータを自動で抽出可能な「Automation Anywhere IQ Bot」も、本格導入に向けた検証に取り組んでいる段階とのことで、オートメーション・エニウェアに対して、今後も業務改革のパートナーとして引き続き支援を期待するということです。

自動化されたプロセス

  • 主に以下のような業務システムからExcelへの転記作業
    • 経営企画部における業績集計作業
    • 品質保証部における各種試験レポート作成
    • 人事総務部における出社率算出
    • 工場製造部門における日次生産状況レポート作成

業界
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