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税理士法人F様:税務関連書類の作成業務等をRPAで自動化。職員のストレスも軽減し、担当件数も3倍超に増加

2020/05/20 スライダー, 導入事例



概要

 税理士法人Fは、特殊な団体の税務申告業務を効率化するために、Automation AnywhereのRPAを導入しました。契約数の増加に伴う業務量の増大に悩んでいた同社では、最初に会計事務所向けクラウドグループウェアを導入して業務内容の見える化を実施。属人的な業務を標準化・マニュアル化したのちに、人的判断を伴わない定型的なルーティン業務にRPAを適用しました。RPAで業務を自動化したことで職員の作業時間が大幅に削減し、顧客対応など本来の専門的な業務に取り組めるようになり、職員のストレスも軽減しました。

課題

契約数の増加に伴う業務量の増大と人手不足が大きな経営課題

 税理士法人Fは、特殊な団体の税務申告業務を得意とする税理士事務所です。代表社員  公認会計士・税理士の津村美昭氏によると、特殊な団体向けの業務は2015年頃から急激に増加しました。

 

公認会計士・税理士の津村美昭氏

 

 「税理士法人Fは、特殊な団体の税務申告というニッチな市場のパイオニア的な存在です。この業務は2015年頃から短期間のうちに急激に増え、業務効率化が経営課題になっていました。職員を増やしたくても新規採用が難しく、せっかく採用できてもなかなか定着しませんでした。」(津村氏)

 こうした状況から抜け出すために、津村氏は業務効率化を目指して業務そのものの大胆な見直しに着手します。最初に取り組んだのは、業務内容を見える化することでした。

 「特殊な団体の税務申告業務はニッチな専門的分野のため、一般企業とは異なる知識や経験が必要になります。その一方、定型的・機械的な業務が多いのも特徴です。しかしながらRPA導入前は職員の知識や経験への依存度が高く、標準化されていない業務が散見されていたため、まずは業務内容を見える化するところから始めることにしました」(津村氏)

 津村氏はこうした業務の課題を解決するために、会計事務所向けに特化した名南経営コンサルティングのクラウドグループウェア「MyKomon」を導入しました。

 「MyKomonを使って顧客データベース、業務マニュアル、進捗管理表などを整備し、業務を組織的に進められる体制にするとともに業務内容をひと通り見える化することができました。同時に属人的な業務内容の標準化・マニュアル化も進めました」(津村氏)

 MyKomonの導入により、ある程度の業務効率化は達成できました。ただし、業務内容の標準化・マニュアル化が進んでも人手による作業を続ける限り、業務負荷を大きく軽減するまでには至りません。そこで津村氏は、標準化・マニュアル化した業務のうち、定型的・機械的な業務を自動化することを検討しました。

ソリューション

人手不足を解消する抜本的な切り札として、RPAの導入を決断

業務内容を見える化したのに続いて、業務の自動化を目指すことにした津村氏は、まずはさまざまな業務に利用しているExcelのマクロでプログラムを組んで対応しようとしました。しかし、Excelのマクロは容易に開発できるものではなく、時間やコストもかかるために断念せざるを得ませんでした。次の一手を考えていたちょうどそのとき、ASIMOV ROBOTICS(アシモフ・ロボティクス)社から提案されたのが、RPAでした。

「RPAは会計事務所の業務を効率化するツールとして徐々に使われ始めており、当社も情報収集を行っていました。当初、ASIMOV社からはRPA業務を検討している他の会計事務所の紹介を依頼されたのですが、RPAの説明を伺っている中で他の会計事務所ではなく自社の業務を自動化するために適用できるのではないかと考えました」(津村氏)

税理士法人Fでは、すぐにRPAの導入を決定。RPAツールには、ASIMOV社と業務提携関係にあるAutomation Anywhereの製品を導入しました。

「業務を熟知しているASIMOV社から唯一の選択肢として提案してもらったことがAutomation AnywhereのRPAを選定した一番の理由ですが、当社としても他のツールと機能やコストを比較検討したうえで、当社の業務を自動化するにはAutomation Anywhereが適していると判断しました」(津村氏)

詳細

税務関連書類の作成等の定型的・機械的な業務をRPAで自動化

Automation Anywhereを導入することにした津村氏は、ASIMOV社の担当者とディスカッションを重ねながら、RPAが適用できる業務を探りました。

「定型的・機械的な入力作業を自動化することが得意というRPAの特性を考え、職員の判断が少なく実行できる月1回以上のルーティン業務をRPA化の検討対象としてピックアップしました」(津村氏)

このときに対象としてピックアップしたのが、「メール文案の作成(2プロセス)」「各種書類作成(2プロセス)」「ソフトウェア間のデータ取込(1プロセス)」「各種書類印刷(1プロセス)」「税務署からのメッセージ確認・印刷(1プロセス)」の業務でした。これらの業務を3つのフェーズに分け、導入が比較的容易なメール作成の業務からスタートし、段階的に難易度が高い業務をRPA化していきました。

「例えば『メール文案の作成』は、お客様に対して決算業務のご案内のメール文案を作成するという業務です。これまでは職員が前年送信したメールなどのコピペなどして行っていましたが、作業自体は定型的・機械的でありRPA化に適した業務です。こうしたところからスモールスタートで始め、徐々に工程数の多い業務へと適用しました」(津村氏)

RPA化した業務の中でもメインと言えるのが「各種書類作成」の業務です。税務申告に関連する各種書類の作成のうち、入力・転記作業などの機械的・定型的な業務をRPA化の対象としました。ただ機械的・定型的と考えていた業務も、実は職員が細かい判断をしていたり、職員ごとに異なる方法をしていたりしていたので、RPA化の手順を作成するまでが大変でした。

「導入当初は想定外のトラブルが発生して修正やサポートをお願いしたこともありましたが、ASIMOV社とオートメーション・エニウェア社のタイムリーかつ的確な対応によって迅速に解決できました」(津村氏)

結果

職員のストレスも軽減し、担当件数も3倍超に

 上記業務をRPAで自動化したことにより、税理士法人Fではさまざまな効果が得られています。業務削減効果はトータルで年間約1,400時間にものぼり、コスト削減効果は従来に比べて5~6分の1に達します。

 「RPAの導入によって定量的な効果も得られましたが、当社ではそうした作業時間の削減によって職員が能力を発揮すべき専門的な業務へシフトできたという定性的な効果が、RPAを導入したことによって得られた最大の効果だと感じています。職員一人の担当件数も、従来の3倍超に増えるなど、当社が目指していた業務効率化は確実に実現できました。また、ソフトウェアのデータ取込のような作業の待ち時間が削減され、職員のストレス軽減や労働環境改善にもつながっています」(津村氏)

 また、RPAによる業務の自動化を推進していたおかげで、2020年3月頃から拡大した新型コロナウイルスの影響により在宅勤務の要請があった際も、職員がスムーズに在宅勤務に移行することができました。

 「リモートでBotを起動・運用できる仕組みを整えたことで、全社員が通勤しなくても、在宅で通常業務を行うことができるようになりました。リモートワークとRPAは相性がいいと思います。担当者は出勤しなくても、サーバー上の作業で事務所のロボットが動いて仕事してくれています」(津村氏)

今後

コストメリットを見極めながら他の業務にも適用へ

 税理士法人Fでは、今回RPAを導入した業務の効果をさらに検証したのち、RPA適用の幅を広げていく考えです。

 「当社ではRPAのBot開発をASIMOV社に担当してもらっていますが、Botを開発して導入するまでには、業務を見直して改善すべきかどうかコストメリットを見極めるといったマンパワーが求められます。そのために何をやりたいのかという検討を十分に重ね、ターゲットを絞り込んでから次のRPA化に取り組もうと考えています」(津村氏)

※本記事の内容は、取材を行った2020年4月時点での情報を元にしております。