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京都銀行がRPA導入、38の本部業務で合計11,000時間(年間)の削減効果 開発者研修による育成で現場行員による内製化体制の移行も実現

2022/08/26 スライダー, トピックス, 導入事例



【組織の概要】

京都市に本店を置く地方銀行として1941年(昭和16年)に創立した株式会社京都銀行。近畿地方最大の地方銀行として、従業員数は約3,500名、国内外に190を超える拠点を擁する広域型地方銀行です。2020年にはすべてのお客さまとデジタルで繋がる「デジタルコネクト」を基本方針とする第7次中期経営計画「Phase Change 2020」を発表し、デジタル戦略を進めています。

 

【課題】本部業務改革に着手、140業務のうち70業務にRPA導入が決定

京都銀行のデジタル戦略について、同行 イノベーション・デジタル戦略部 審議役の日野 正喜氏は、「これまで築き上げてきた対面主体の顧客接点に、デジタルコネクトを加えることでより強固なつながりを実現していく」と説明します。

 

具体的には、「銀行サービスのデジタル化」や、RPAやAI-OCRなどの活用による「銀行業務・事務手続きのデジタル化」、そして「お客さまのデジタル化推進」という3つのデジタル化を実現していきます。

 

RPAによる業務効率化は上述した「銀行業務・事務手続きのデジタル化」に位置づけられます。京都銀行では、営業や事務効率化の企画、営業支援などを担う本部各部に、約800名の行員が従事しています。「しかし、様々な管理資料や計数の取りまとめなどの日々の事務作業に忙殺され、なかなか本来の業務に専念できない課題がありました」(日野氏)。

 

そこで、業務の抜本的な改革を進め「本来の企画や営業に専念」できるよう、2020年4月から本部業務改革のプロジェクトがスタートしました。

 

3年間で約80名相当の業務効率化をKPIに定め、日野氏によれば「初年度は30名程度を目標とした」ということです。そして、外部のコンサルタントを招聘して、140にわたる本部業務の洗い出し・整理が行われ、「廃止、集約すべき業務」や「RPAによる自動化に適した業務」「AIやチャットボットなどRPA以外のデジタル技術の活用に適した業務」に仕分けされました。

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その結果、「本部業務のうち70業務がRPAに適しているとされた」ということです。

株式会社京都銀行 イノベーション・デジタル戦略部 審議役 日野正喜氏

 

 

【ソリューション】大量データ処理が可能でボット開発が容易である点、導入後のサポート体制を評価

RPAの選定、導入は2019年秋から進められました。日野氏によると「2018年から別の1部署で国産RPAツールを導入し、14業務にボットが稼働して年間1,500時間相当の効率化を実現していた」とのこと。また、2019年12月には「Automation Anywhereが主催したハンズオンセミナーに参加し、使い勝手の良さや有用性を認識」していました。

 

こうしたことから、本部業務全体にRPA適用を拡大するにあたり、Automation Anywhereを含む複数製品が比較検討されました。

 

検討項目は、まず「開発、運用、セキュリティ面での機能性」が挙げられます。それまで導入していたRPAツールでは「夜間処理が難しかった」(日野氏)ことから、夜間を含めた24時間処理が可能かといったポイントや、大量データの処理が可能かといった点が重視されました。

 

また、「開発の容易さ」というポイントも挙げられます。これは「ボット開発を開発経験のない現場担当者が行う体制を想定していた」(日野氏)ためで、直感的な操作で容易に開発が行えるかといったポイントも検討されました。

 

そして期限までに目標の70業務にRPAを適用可能にする開発支援などの「導入後のサポート体制」といった項目なども含めて検討された結果、導入実績やコストなども総合的に勘案し、「Automation Anywhere IQ Bot」を含む、「Automation Anywhere Enterprise A2019」のオンプレミス版を導入することとなりました。

 

導入前には3つの業務でPoC(概念実証)が行われました。たとえば、調査依頼に対して預金残高を調べ、回答書を作成する「預金調査対応業務」は、毎日、手作業で数人が従事し、単純だがミスが許されない業務です。これをRPAで自動化することにより、夜間に処理が完了、年間で2,600時間にのぼる削減効果が実証されました。

 

また、日本銀行のサイトにアクセスして、外国為替の情報を取得する「外国為替相場取得業務」は、作業頻度が少なく削減時間が限られるものの、自動化しやすく人の作業がゼロにできる効果が期待されました。これについては「業務系と情報系でネットワークを分離するインターネット分離により、ボットがうまく稼働しないなどの課題点が検証によって明らかになった」と、日野氏は効果と課題両面で得られるものが多かったと振り返ります。

 

メリット

ロボットが稼働する業務数:38業務

削減効果:年間11,000時間

 

【詳細】開発管理体制の整備や開発者研修、情報提供などを進め、ユーザー開発がスタート

RPA開発推進体制は日野氏が所属するイノベーション・デジタル戦略部が全体統括を行い、システム部が開発支援や本番運用、外部委託先管理を担当します。

 

そして、ボット開発は、本部各部の行員による開発と、システム部の開発による体制となりました。

 

「RPAに適しているとされた70業務のうち、削減効果や開発の難易度などを勘案し、比較的開発が容易なものは現場行員が開発し、開発難易度の高いボットはシステム部で開発することとしました」(日野氏)。

 

導入に際して注力した点は、まず「開発管理体制の整備」が挙げられます。単なるRPAの導入だけでなく本部業務の改革プロジェクトである点に鑑み、進捗状況について毎月の定例会を経て関係部署で共有するような体制の構築に注力しました。

 

また、「Automation Anywhere Enterprise A2019」は、ノーコードによる直感的な操作での開発が可能とはいえ、開発スキルのない現場行員が開発を行うには一定の知識が必要です。そこで、「開発人員の育成」としてAutomation Anywhereのプロフェッショナルサービスによって3日間の研修プログラムを実施しました。

 

また、行内LAN上に「RPA専用サイト」を開設し、情報提供にも努めました。「こうした取り組みの結果、ユーザー部署での開発を円滑にスタートすることができました」(日野氏)。

 

【結果】38業務、11,000時間の削減効果を実現、内製化にも移行

2020年10月からは開発が本格的にスタート。上述した開発者研修や、Automation Anywhereのコンサルタントが毎週1回、常駐してマンツーマンでボット開発のサポートを継続した結果、2021年4月以降は内製による開発体制に移行することができました。

 

2021年3月には本番環境が整備され、AI-OCR(Automation Anywhere IQ Bot)の試行も開始されました。これは、取引先から受け取った紙の見積書をAI-OCRで読み込んでデータ化し、決裁ワークフローに取り込む業務で、これまで手作業で入力していた業務を自動化するものです。

 

こうした取り組みの結果、2021年12月現在、「38業務、11,000時間の削減効果」の実績を残すことができました。また、RPAやAI-OCRに関する開発者研修には、のべ35名が受講を完了し、「そのうち20名程度が実際にボット開発を行えるレベルに達している」(日野氏)ということです。

 

日野氏は「2021年度中には70業務の計画を達成する目標だ」と述べました。

 

【今後】適用業務を拡大するとともに、改革カルチャーの浸透に期待

今後の展望について、日野氏は「インターネット取引にRPAを適用させていきたい」と話します。たとえば、2021年4月には、ホームページやアプリで顧客の問い合わせなどにAIが回答する「AIチャットボット」サービスが開始されました。

 

今後もインターネットで提供されるサービスへのRPAやAI-OCRの適用を拡大すべく、さらなるAutomation Anywhereの支援を期待したいとのことです。

 

また、RPA対象業務の拡大も大きなテーマで、「今後は自動化が未着手の業務、部署での業務自動化を進めていきたい」(日野氏)ということです。

 

そして、RPA開発人材の育成も継続していきたいということです。「一定の内製化体制は実現できたものの、約800名の本部行員が一人でも多く内製によるボット開発に従事できるよう人材育成に取り組んでいきたいです」(日野氏)。

 

日野氏は、本部業務改革を通じて「現場のリーダーが率先して改革に取り組む必要がある」ことを実感しました。今回のRPA導入を契機に、業務改革カルチャーを本部全体へ浸透させ、さらには行内全体にカルチャーが広がっていく活動を進めていきたいとのことです。

 

自動化されたプロセス

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