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コニカミノルタ、約200のロボットで年間2万時間以上の削減効果 RPAの自律的推進が「課題提起型デジタルカンパニー」への変革を牽引

2020/04/30 スライダー, 導入事例



お話をおうかがいした方:
コニカミノルタ株式会社 IT企画部 ITプロジェクト推進グループ マネジャー 田中久美子氏(中)
コニカミノルタジャパン株式会社 マーケティング本部 オフィス事業統括部 オフィス事業企画部 企画2グループ 武藤崇志氏(右)
コニカミノルタ株式会社 IT企画部 ITプロジェクト推進グループ 大川裕司氏(左)

組織の概要

 2003年に経営統合して誕生したコニカミノルタ。複合機とともにお客様の働き方に合わせたサービス・ソリューションのご提案を行うオフィス事業を中核に、世界約150カ国、約200万社のお客様の業務の現場に、高付加価値な製品・サービスを提供しています。現在、ビジネス社会・人間社会の進化の為に、デジタル技術を使って新たな価値を創造する「課題提起型デジタルカンパニー」への変革を進めているところです。

課題

デジタルを使ったプロセス改革の切り札としてRPA導入に着手

 デジタル・トランスフォーメーション(DX)の重要性が認識される中で、コニカミノルタは、デジタルの力でお客様企業のワークフローを変革し、生産性向上と新たな付加価値をもたらそうとしています。

 そのために、まずは自社実践としてデジタルを活用して改善・改革することが不可欠とのことで、RPAの推進を牽引するのが同社 IT企画部 ITプロジェクト推進グループ マネジャーの田中久美子氏と、コニカミノルタジャパン マーケティング本部 オフィス事業統括部 オフィス事業企画部 企画2グループの武藤崇志氏です。

武藤氏

 武藤氏は、「RPA導入プロジェクトは、今あるビジネス基盤の生産性向上や効率化を目的に、業務改革側とIT側の両輪でスタートした」と説明します。

 業務改革側では、コーポレート部門を中心に2015年ごろよりBPM(Business Process Management)に取り組みながら、業務の可視化を行いました。その結果、社員一人あたりの業務パフォーマンスは高く、「ある程度、効率的に仕事をしていたことがわかった」そうですが、さらなる改革を進める上で白羽の矢が立ったのが、当時、業務改革ツールとして浸透しつつあったRPAでした。

 折しも、2017年度に策定した新中期経営計画「SHINKA 2019」でも、「デジタルを使ったプロセス改革」が定められており、RPAは、特にホワイトカラー業務の効率化に親和性があるとの判断がありました。

 一方、田中氏はITツールを活用した業務改革を進めていました。「IT部門としての中期計画にも業務効率化の推進がテーマとして掲げられていた」ことから、全社の業務改革プロジェクトとして「バックオフィスの業務をよりコンパクトにし、戦略や企画業務により多くのリソースを割くこと」を目的に、RPA導入を検討することになったのです。

ソリューション

グローバルでの豊富な実績と現場での使い勝手の良さが決め手

 RPA導入プロジェクトがスタートしたのは2017年4月で、まずRPAツールの選定が行われました。選定のポイントとして、武藤氏は「海外拠点で使えることを想定し、グローバルに対応するツールである点と、ソフトウェアロボット(Bot)の開発のためのエンジニアを持たず、導入先の業務部門が自律的に推進していくことを想定し、使い勝手のよい製品である点を重視した」と説明します。

 複数の候補の中から、トライアルを含めPoCを約3カ月にわたって行い、予算を含めて総合的に判断した結果、サーバー型RPAの「Automation Anywhere Enterprise」の導入を決めました。決め手となったポイントとしては、「事業部のメンバーにとっての使い勝手を最も重要視した」とのこと。

 特に、RPAを業務プロセス改革のツールとして活用したかったため、非エンジニア人財でもBotを作りやすい操作性の良さが決め手となりました。

 また、デスクトップレベルの業務効率化ではなく、プロセスレベルで効率化を考えるのであれば、全社レベルでのガバナンスがきちんと機能している必要があります。現場部門で開発したBotを実行するための「実行Bot」の操作権限は付与せずに、かつ、野良Botが乱立することがないよう、「管理機能が充実している点もポイントだった」と武藤氏は述べます。

 「課題提起型デジタルカンパニー」へ生まれ変わるためには、働く人の改革意識の醸成が最も大事で、RPAをはじめとするデジタル技術を活用し、業務を改革する意識が、それぞれの部署の現場に芽生えてくれることに期待したということです。

田中久美子氏

詳細

運用設計からコアメンバーへの教育などの初期導入のフェーズが最も重要だった

 ツール選定後の2017年6月から9月に運用設計を行い、その後、2017年10月からは初期導入のフェーズとして、コアメンバーの育成を実施します。これは、RPA活用を積極的に考えている部署から、開発者とその上長を対象に、約40名規模で実施されたものです。「コンサル企業の支援のもと、教育資料を作り、5日間のカリキュラムを組みました。カリキュラム内容は、コニカミノルタとしての改革の考え方や、RPAの理解、BPRに関する研修などが半分を占めます。実際にツールを使った研修も実施しました」と田中氏は説明します。

 この教育カリキュラムは、現在も短縮されて実施されているとのことで、田中氏は、PRA導入は、「運用設計から初期導入のフェーズが最も重要だった」と振り返ります。

 「導入を成功させるには、社内にRPAを正しく理解してもらうことが一番重要でした。現場の中には、自分たちの仕事が奪われるのではないかとか、RPAは万能のツールで、どんな業務も自動化できるというような誤解があったからです。そこで、RPAそのものが目的化しないよう、正しく理解してもらうことが大事だったのです」(田中氏)。

 そして、2018年の4月から本格展開を行いました。運用フェーズにおける、現場技術者のサポートやシステム運用管理などを担当するコニカミノルタ IT企画部 ITプロジェクト推進グループの大川裕司氏は、「最初から100%を求めないこと」がRPA定着のポイントだと話します。

大川裕司氏 「まずは小さな成功を積み重ねることです。7〜8割の自動化率であっても、RPAによって業務が自動化され、削減効果が実感できれば、次の改善に向かって周囲の関心も高まっていくからです」(大川氏)。

 同社の運用の特徴は、バーチャルチームとしての「RPA事務局」が推進組織となり、導入、運用の技術相談は「よろず屋」という組織が担うことで、各部門がRPA運用を“自走”できるような、自律的推進をめざす点にあります。

 この「よろず屋」を担当する大川氏は、印象に残るエピソードとして、「大切なのはスキルや能力ではなく、パッションだ」と感じたエピソードを紹介してくれました。

 あるグループ会社の担当者は最初はBotの作り方がわからない状態からスタートしたものの「自分でいろいろと調べて、コマンドやツールの使い方を頑張ってマスター」し、Botを開発しただけでなく、今では、社内勉強会なども自分から主催し、成功事例を発信する「伝導役」を果たすまでに成長したとのことです。実際にこの部署では、RPAの推進の結果、社内で最も時間外労働が少ない部門になったという成果につながりました。

 現在は、現場部門への教育として「異なるITスキルレベルにあわせた教育カリキュラムの整備」や、開発したBotの運用として「始業前の時間帯など、複数のRPAが重複して稼働する状況で、どのように優先順位をつけていくか、全体最適の視点に立ったスケジューリング」などの課題に向き合いながら、さらなるRPA定着に向けた体制整備に取り組んでいるところです。

結果

社員自らによるデジタル(RPA)活用が功を奏し、生産性が劇的に向上

 現在、IT部門や業務改革部門、国内グループ企業のコーポレート部門をはじめ、19のビジネスユニット・コーポレート部門の約7割のホワイトカラー業務にRPAが導入されています。各部門で自発的にユースケースを考えてくれた結果、稼働中のロボット数は約200にのぼっている」と武藤氏は話します。

 導入後の成果として、たとえば、品質保証の分析前の工程をRPAで自動化。Excelのマクロを実行して、分析しやすい形式に加工したデータをBIツールに移行し、ダッシュボード化する一連の業務が自動化されるなど、社内業務における削減時間は年間24,000時間を実現しています。

 これらの成果は、コニカミノルタの目指す「課題提起型デジタルカンパニー」を担う人財が、まさにデジタル(RPA)活用により生産性を向上させた結果と言えるでしょう。

 また、定性的な効果では、財務部において、銀行の稼働日にあわせて行う業務があり、「コニカミノルタの休業日と合わない場合は、休日に当番で出社し、人力で行っていた」そうです。これをRPAによって自動化した結果、休日出勤の必要がなくなり、「会社にいないとできない業務」が削減された結果、在宅勤務をはじめとする、より柔軟な働き方が実現できるようになったということです。

今後

自社改革で得られたナレッジをもとに、パートナーとしてRPAの外販も拡大していく

今後については、目下、ヨーロッパやアジアパシフィック、中国など、グローバル拠点への展開を進めており、さらに、RPA導入前から想定していた「社内改革で蓄積されたナレッジをもとに、オートメーション・エニウェアのパートナーとして、社外のお客様への外販していくこと」を強化していく考えだ。

武藤氏は、自社のRPA導入によって得られた気づきや仕組みなどを用いて、人的サポートを含むお客様のDX支援を進めていきたいと今後の抱負を語ってくれました。

また、大川氏は、「自律的推進」の先を見据え、より「集中型」ともよぶべき、プロアクティブなRPA展開、社内定着を進めたいと話します。

これまでは、どちらかというと、来た要望に対して対応する「待ち」の姿勢だったものを「RPA導入を次の変革につなげていくために、今後は、よりプロアクティブな対応が可能になるように、推進体制も、社内ニーズや環境に合わせて工夫していきたい」ということです。

※本記事の内容は、取材を行った2019年11月時点での情報を元にしております。