エンタープライズ企業のための「次世代RPA」メディア

アズビル、PLMパッケージを99%標準機能で利用。業務とのギャップを埋めるためにRPAを導入

2020/06/15 スライダー, 導入事例



お話をおうかがいした方(左から順に):

アズビル株式会社 技術標準部 技術標準グループ 課長代理 三島 崇 氏
アズビル株式会社 技術標準部 部長 加藤 誠司 氏
アズビル株式会社 技術標準部 技術標準グループ 佐藤 高志 氏
アズビル株式会社 業務システム部 運用管理グループ システム運用管理チーム 野村 由美子 氏

組織の概要

アズビルは、1906年に創業した大手制御・計測機器メーカーです。2012年4月に「株式会社山武」から現社名へ変更し、現在は「azbil」ブランドのもと、「ビルディングオートメーション」「アドバンスオートメーション」「ライフオートメーション」の3つを柱に事業を展開。グローバルでライフサイクル型事業を強化しながら、新たなオートメーション領域の開拓、環境・エネルギー分野の事業拡大に取り組んでいます。

課題

PLMシステムと業務のギャップ解消を目指す

同社は、製品の設計図や部品表のデータを企画段階から廃棄に至るまでの全行程で共有・管理し、製品開発力の強化と設計作業の効率化を実現するために、PLMパッケージ「Windchill」を2017年5月に導入しました。PLMシステムを構築する場合、自社の業務プロセスに合わせてパッケージをカスタマイズすることが一般的です。ところがアズビルは、それとは異なる選択をしました。PLMパッケージの導入を主導した同社 技術標準部 部長の加藤誠司氏は、次のように説明します。

「当社ではPLMシステムを構築するにあたり、パッケージの標準機能をできる限り利用することにして、逆に業務プロセスを見直すという方法を選択しました。パッケージをそのまま利用すると、莫大なカスタマイズ費用を抑えることができるほか、パッケージをバージョンアップする際の検証作業が最小限で済むというメリットが得られるからです。この方針に基づいて、当社では99%という極めて高いパッケージの標準機能使用率でPLMシステムを運用することにし、それに合わせて事業ラインごとに定められていた業務を標準化しました」(加藤氏)

しかし、パッケージの標準機能に業務プロセスを合わせるのは、簡単なことではありません。当然のことながら、標準機能を使用することによる業務とのギャップが浮き彫りになりました。

「PLMパッケージは、同一業務であっても導入企業ごとの違いを吸収するように、汎用的に作られています。そのため、パッケージの標準機能と当社の業務との間にギャップが生じるようになりました。例えば、PLMパッケージに入力する際の入力ウィザードの中に、当社の業務で使わない機能があるのですが、それをスキップするにはカスタマイズしなければならないので、わざわざスキップ操作を行う必要があります。こうしたギャップにより、ユーザーが使いにくいと感じて作業効率が低下するという課題を抱えるようになりました」(技術標準部 技術標準グループ 課長代理 三島崇氏)

また、標準機能で画面に表示される「オブジェクト」「ライブラリ」といった用語が社内で使われる用語と違うため、利用者が用語と自分の業務を結びつけることが難しいことも課題でした。さらに、同じ画面操作を繰り返し行わなければならないといった冗長な操作にも悩まされたそうです。

ソリューション

決め手は、複雑な画面への対応

パッケージの標準機能と業務とのギャップを埋めるために、アズビルでは解決策を模索しました。最初に着手したのは、Excelファイルによる申請書ベースで行っているPLMシステムの管理業務を改善することでした。

「まず考えたのは、Excelのマクロを利用することでしたが、Webアプリケーションとして提供されているPLMパッケージとの相性が悪く、直接操作することが困難でした。独自のアプリケーションを開発することも考えましたが、パッケージをカスタマイズするのと大差ないほどのコストがかかってしまいます。そうした中、取引先のベンダーから紹介されたのが、RPAを利用する方法でした」(技術標準部 技術標準グループ 佐藤高志氏)

佐藤氏によると、RPAであればWebアプリケーションとの相性が良いというメリットがある上に、パッケージのユーザーインターフェイスが変わっても修正が容易であり、PLMシステム以外のアプリケーションにも適用できることから、RPAの導入を前向きに検討することにしました。

技術標準部では、複数のRPAツールを導入候補としてピックアップし、それぞれのツールの機能を比較・検証しました。

「RPAツールをPLMシステムで使おうとしたところ、パッケージのユーザーインターフェイスが複雑すぎるため、ほとんどのツールは処理できないという課題に直面しました。そうした中、唯一自在に操作できたのが、Automation Anywhereでした。これが決め手となり、2018年5月にAutomation Anywhereを導入することにしました」(佐藤氏)

詳細

RPA適用を前に業務を見直して単純化を図る

Automation Anywhereを導入することにした技術標準部は、まずは部署内に部分的に導入し、どの程度まで使えるのかという検証を重ねました。

「検証を進めた結果、管理業務以外でも開発成果物の新規登録業務や変更業務で行うPLMシステムヘの入力作業は、その多くがRPAとExcelによるbotヘの作業指示で自動化できることがわかりました。そこでパッケージと業務とのギャップを埋めるツールとして、RPAを本格的に展開することにしました」(三島氏)

Automation Anywhereを適用するにあたり、もう一度業務プロセスを見直すことにしました。

「ユーザーは、知らず知らずのうちに業務を効率化・最適化しています。そうした属人化された業務をそのままbot化することは難しいため、業務を見直して単純化することにしました。もう一つ注意を払ったのが、アプリケーションの不具合やネットワークの遅延によってBotが止まってしまったときの対処方法です。Botが止まったときに、最初からやり直すのでは効率が悪いため、Botが止まっても続きから再実行できるように設計しました」(佐藤氏)

このようにRPAの適用を進める一方で、技術標準部はRPAの利用に関するルール作りにも着手しました。

「RPAを利用するには、社内のガバナンスを効かせる必要があります。そこで技術標準部と業務システム部(社内IT部門)が協力しながら、RPAの利用に関するガイドラインを策定することにしました。2019年3月にドラフトをまとめ、現在も正式版の発行に向けて調整を進めています」(業務システム部 運用管理グループ システム運用管理チーム 野村由美子氏)

結果

導入5カ月で20Bot約200時間の削減効果

独自の工夫によってRPAを効果的に利用することが可能になったアズビルでは現在、PLMシステムのユーザー登録・削除、登録情報の閲覧許可、変更開始ワークフロー、変更実施ワークフローといった業務にRPAを活用しています。稼働中のAutomation AnywhereのBotは20以上になります。
「RPAを適用した結果、人手で行っていたときに比べて処理にかかる時間を5分の1から半分程度まで削減するという効果が得られました。本番運用を開始した2018年11月から年度末の2019年3月までの5カ月間の効果を棚卸ししたところ、稼働中の20Botで約200時間の削減効果が得られています。また、これまではしばしば発生していた入力ミスのようなヒューマンエラーがゼロになったことも大きな効果です。年末など、特定の時期に集中していた時間外労働がなくなり、業務の負荷変動をBotが吸収してくれていると思います」(三島氏)

「RPAの導入の際に業務を改めて見直したことで、属人的な業務のブラックボックス化を排除し、業務の内容を共有できるようになったことも大きな導入効果だと考えています」(佐藤氏)

今後

PLMシステム以外の業務への適用を視野に

Automation AnywhereのRPAによる自動化によって、PLMシステムの業務効率が向上したアズビルでは今後、他部門への水平展開も視野に入れています。

「現在は技術標準部とIT部門、事業部門がタスクチームを組織し、RPAの全社導入の可能性を模索しています。RPAの導入によって業務品質が向上することがわかったので、今後は計画的にPLMシステム以外の業務にもRPAの適用を進め、さらなる業務品質の向上を目指していきたいと考えています」(野村氏)

※本記事の内容は、2020年3月時点での情報を元にしております。