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日立ソリューションズ、250のロボットが各部門で稼働 聖域なき業務改革に大きな効果を発揮するRobotic Process Automation

2020/04/23 スライダー, 導入事例



お話をおうかがいした方:
株式会社 日立ソリューションズ
営業企画本部 営業戦略部 部長代理/エバンジェリスト 松本 匡孝 氏(右)
株式会社 日立ソリューションズ
IT・情報セキュリティ本部 経営システム部 RPAセンタ 主任技師 井手 悦雄 氏(左)

組織の概要

 日立グループの情報・通信システム事業の中核を担うIT企業として、製造や流通、通信などさまざまな事業領域に対して各種ソリューションを提供している株式会社日立ソリューションズ。「未来の扉をひらく。ゆるぎないチカラとともに。」を経営ビジョンに掲げ、業種・業務ごとに蓄積された豊富なノウハウと最先端のテクノロジーを駆使し、顧客の課題を解決するためのソリューションを幅広く展開。米国の関連会社と連携し、シリコンバレーのベンチャー技術を調達して、いち早く日本のマーケットに投入するなど顧客からの支持を得ています。

課題

聖域なき業務改革に取り組む働き方改革

 同社では、2016年頃から全社を挙げて働き方改革に取り組んでおり、聖域なき業務改革を進めることで業務の無駄を省き、長時間労働の削減や生産性向上、そして働く社員のエンゲージメント向上に向けた活動に注力してきました。それでも、Excelによる集計業務や報告書作成といった周辺業務は必要不可欠なものとして残っており、これらについても効率化するための手立てを検討することになったのです。

 また、2015年にはグループ全体での組織再編があり、同社の基幹システムが日立製作所の標準的なシステムに移行することが求められました。「独自に作り込まれたシステムからの移行に伴い、これまで活用してきた個社独自の機能が付加できず、既存業務を補完するために手作業による業務が増えたことも大きな課題になっていたのです」と営業企画本部 営業戦略部 部長代理でエバンジェリストの松本 匡孝氏は当時を振り返ります。

松本 匡孝 氏  これらの課題を解決するためには何らかのシステム開発が必要でしたが、小さな業務を改善するためだけでは投資対効果を得るのが難しい状況に。それでも、現場の負担を軽減するために何らかの改善策が求められていたのです。

ソリューション

海外での豊富な実績と優れたメンテナンス性を評価

そんな折、社内で海外ソリューションを調査するチームから話が挙がったのが、当時日本では大きな潮流となっていなかったRPA(Robotic Process Automation)でした。「業務改善による生産性向上を検討していた流れと相まって、RPAが解決策になりうるのではないかという話につながっていったのです」と松本氏。ただし、さまざまなソリューションを提供するインテグレーターである同社では、自社での運用ノウハウを蓄積することで最終的には外販も意識した形でRPAを検討する必要があり、事業投資に向けた事業計画書などをまとめながら、国内外のさまざまなソリューションを検討することになったのです。

そのなかで同社が注目したのが、Automation Anywhereが提供するRPAソリューションでした。「今後のビジネス展開を考えると、グローバルで実績のあるものを選択するべきだという社内の声が多く寄せられました。グローバルでメジャーなものの1つがAutomation Anywhereであり、その実績を高く評価したのです」と松本氏は説明します。

また、シナリオ開発の手法がリスト型である点も大きなポイントの1つでした。「フローチャート型は可視化しやすい面はありますが、メンテナンスの面では苦労することも。一般的にRPAは、運用段階に入ると環境面の影響で動かなくなることがあり、画面の撮り直しなどが頻繁に発生するものです。リスト型のほうが開発者固有の癖が出にくく、どの処理をメンテナンスするのかがすぐに分かりますし相手にも伝わりやすい」とIT・情報セキュリティ本部 経営システム部 RPAセンタ 主任技師 井手 悦雄氏は評価します。

井手 悦雄 氏

さらに、対応するシステムが豊富な点もポイントの1つに挙げています。「画像認識や座標などを活用したソリューションでは、画面の解像度が変更されたりセキュリティパッチが当たったりしただけでRPAが止まってしまうことも。オブジェクトを認識するAutomation Anywhereであれば、外的な影響を最小限におさえることができます」と井手氏。特に日立グループの基幹システムとして採用されているSAPやレガシーなシステムも存在していることから、Automation Anywhereであれば柔軟な対応が可能になると考えたのです。

メリット

  • トータル削減時間 累計2万6800時間
  • 稼働中のロボット数 250超
  • 業務管理の集計業務における削減工数 95%

詳細

人事総務などのスタッフ部門から各事業部まで、あらゆる部門に適用

 現在は、人事や総務、調達部門など主にスタッフ部門についてはセンタ(社内システムを管理する情報システム部配下の組織)側でロボットを開発し、6つある各事業部とグループ会社3社ではそれぞれ現場にてロボット開発を実施しており、すでに250を超える業務にRPAが適用されています。全社展開にあたって、まずはソフトウェアロボット開発ガイドを策定し、基本的な処理や禁止事項などのガイドラインを設定。各部門は評価シートを使って適用したい業務がロボット化しやすいかどうかを判断します。そして、Process inVisionを活用して業務の流れを可視化する仕様書を作成し、ロボット開発が行われることになります。事業部側で開発可能な場合、現場にBot Creatorを提供し、各事業部で開発が行われます。ただし、ガバナンスの観点からControl Room側にロボットを入庫してもらい、センタ側で管理することで野良ロボットを防ぐ運用を行っています。

 また同社では、統合システム運用管理のJP1を活用してロボットの実行監視やジョブスケジュールを管理しており、稼働予定のロボットとその実績がガントチャート上で確認できるなど、数多くのロボットを効果的に運用するための仕組みづくりにも取り組んでいます。

 具体的な活用例を挙げると、例えば人事総務部門では半年に1度行われる5000人ほどの社員の査定調書作成時に、各種システムの社員情報や勤怠データ等の様々なデータを収集し、それらのデータから査定調書の作成をロボットで行っています。また財務部門では、各部門で集計されるExcelでの業績管理シートの作成や集計をロボットにて行っており、SAPへのデータ投入時にもロボットが活躍しています。さらに調達部門では、発注システムに登録された情報に対して納品日が過ぎた案件の状況確認などのフォローアップにロボットを活用しています。各事業部門では、数多く動いているプロジェクトの進捗状況を各リーダーにレビューするための資料作成など、各システムからのデータ収集や転記作業、編集作業といったさまざまな業務に活用されている状況です。

結果

業績管理の集計業務で95%の工数削減、全体で2万6800時間の削減を実現

 Automation Anywhereによる自動化が進んだことで現場の業務改善に大きく貢献、全体で2万6800時間が削減できたと試算されています。例えば調書作成でいえば、専任者が5000人ほどの調書作成に1か月あまりかかっていましたが、今では1週間ほどで業務が完了できるように。「査定に関わる情報の作成にロボットを用いることで、ミスや不正防止につながります。給与に関わる部分だけに、担当者の心理的なストレスも軽減できているはずです」と松本氏は評価します。業績管理の集計業務では、事業部や本部単位に詳細な資料作成が求められますが、以前は数週間かかっていたものがわずか1日で終わらせることができ、95%の工数削減につながっています。

今後

RPA2.0に向けたさらなる自動化に向けて業務への適用範囲を広げたい

現在定型業務を中心にRPAによる効率化を実現していますが、今後はさらなる自動化に向けた形に進化させていきたいと井手氏は語ります。「今はRPA1.0というレベルの定型業務が中心ですが、これをデジタルワークフォースとしての能力をフルに発揮できるよう、さらなる自動化に向けたRPA2.0の世界にまで広げていきたい」。

具体的には、業務フローを定義するBPM基盤を軸に、APIで処理できるプロセスとともに、APIを持たないレガシーシステムやメール連携などを部品化されたRPAが行い、最終的な確認が必要な担当者とのインターフェースをチャットボットが担うような仕掛けです。「RPAを適材適所で活用していくことで、さらなる業務の自動化につなげていきたい。最終的にはAIを用いて自律化できるような世界も描いていければと考えています」と松本氏に語っていただきました。

※本記事の内容は、取材を行った2019年9月時点での情報を元にしております。