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DSP五協フード&ケミカル、導入後半年で投資費用の回収を実現 ERPとの柔軟な連携が可能なRPA

2020/06/19 スライダー, 導入事例



お話をおうかがいした方:

DSP五協フード&ケミカル株式会社 経営管理本部 システム部 部長 吉永 勇樹氏(右)
DSP五協フード&ケミカル株式会社 経営管理本部 システム部 主任 大杉 昌平氏(中)
DSP五協フード&ケミカル株式会社 経営管理本部 システム部 大塚 浩介氏(左)

組織の概要

大日本住友製薬のフード&スペシャリティ・プロダクツ部門と子会社であった五協産業が事業統合して2010年に発足したDSP五協フード&ケミカル株式会社。“「役に立つ」を揃えます。”をコーポレートスローガンに掲げ、大日本住友製薬グループ会社として、多糖類を中心とした食品素材をはじめ、医療品原料や化粧品原料、コーティング材料・工業薬品、電子薬剤といった化成品分野の幅広い商品を提供しています。研究開発部門を持つメーカーとマーケティング力や幅広いネットワークを持つ商社としての機能を兼ね備えることで、研究・開発・販売 一体型企業としての強みを発揮しています。

課題

Web EDI関連業務の自動化を推進

 2010年に発足したDSP五協フード&ケミカル株式会社では、これまで利用してきた基幹システムがEoSを迎え、環境変化にも柔軟に対応できる基幹システムへの刷新を目指したプロジェクトを2014年に発足させました。「取引量も増えるなか、基幹システムの更改とともに、業務負担の高かったWebEDI関連の業務を自動化するための仕組みづくりをスコープに入れていました」と経営管理本部 システム部 部長 吉永 勇樹氏は当時を振り返ります。当初は企業間EDIの整備も検討したものの、食品・化学・医薬品・化粧品メーカーや特約店など取引先が多業界に及んでおり、4000を超える取引先全てを網羅できる単一のEDI構築は困難だと判断。そこでWebブラウザに特化した自動化ツールを検討したものの、ツールで対応できる範囲が狭いこともあり、なかなか実装が進まない状況が続いていました。

 その後、新たに同部 主任 大杉 昌平氏が同社に加わり、自動化に向けたプロジェクトを再度推進していくべく、新たな仕組みを模索。そこで注目したのが、すでに市場に広がりつつあったRPAでした。「少子高齢化が進む日本において今後、十分な労働力の確保が難しくなるという危機感も抱いていました。さまざまな業務の効率化に貢献し、既存業務を補完してくれるツールとしても、RPAに期待を寄せていたのです」と吉永氏は語ります。

ソリューション

OBICとの連携が可能で豊富なトリガー機能が魅力

 大杉氏に続いて、2019年には大塚 浩介氏が同部に加わり、RPA導入に向けて情報収集を開始。そこで注目したのがAutomation Anywhereでした。「当社では、基幹システムや申請システムなどパッケージ製品を利用しているケースが多く、それらに横断的に対応できるものを検討しました」と社内システムとの親和性を重視したと大塚氏。なかでもWeb EDIによる受注情報を登録する基幹システムにはOBICを採用しており、リモートデスクトップサービスを経由して利用していました。その環境下でもオブジェクトがきちんと認識できるかどうかが大きな要件でしたが、「PoCによる検証を進めた結果、十分なシステムの操作が可能だったのが、オブジェクトクローニングといった優れたコマンド群を持っていたAutomation Anywhereだったのです」と大塚氏。特にリモート接続で登録画面を起動する際には、OBICでは新たにウィンドウが立ち上がる仕様となっており、他社製品では単にピクチャが変更されたという認識しかできないものも。「動作の分岐となる登録画面の起動がキャッチアップできないと、今後のRPA展開がスムーズに進みません。Automation Anywhereであれば懸念が払しょくできると考えたのです」と説明します。

 また、WebEDIによる受注時には顧客から送られてくるメールをトリガーにBotが作動することが必要でした。「Automation Anywhereであればトリガー機能なども豊富で、開発生産性の面でもメリットが高いと判断しました」と大塚氏は力説します。さらに、紙文化が根強く残る同社において、将来的なAI OCRへの展開など、拡張性の面でも他社RPAよりも一歩先んじていると評価します。

 運用面については、Automation Anywhereが持つControl Room にてBotのバージョン管理が可能なだけでなく、認証情報を管理するCredential Vaultが備わっているなど、Automation Anywhereだけで完結できる点を高く評価しました。

 サポート面でも、豊富な技術情報を持つAutomation Anywhereを評価しました。「インターネット上に情報が豊富に存在しているだけでなく、A-Peopleなどのコミュニティサイトが用意されており、開発支援という面でもサポート体制が充実しています。また、カスタマーサクセスマネージャーが大阪におり、何かあれば迅速に支援いただけることも心強かった」と大塚氏。

 結果として、同社における業務効率化を実現するためのツールとして、Automation Anywhereが採用されることになりました。

メリット
業務削減効果 導入後半年で596時間の業務時間を実現
ROI:半年間でRPAライセンス含めた投資費用の回収に成功

詳細

開発・運用を効率化しながら、ROIの高い業務を優先して自動化

 RPAを社内で展開するに当たり、同社ではBot開発・運用を担うシステム部のメンバーが少数精鋭であることから、メンバーにかかる負担をできるだけ少なくしつつ、効果的に開発・運用を行うという方針を策定しました。

 たとえば、自動化業務の選定においては、要望があったすべての業務を自動化するのではなく、本来やるべき対象業務を絞り込んだうえで、RPAが解決策として適正であり、ROIが高いと判断された業務を優先して対応することで、RPAの導入効果を高めるというアプローチを採りました。

 また、開発を効率化するための工夫として、システムへのログイン・ログアウトやエラー時の管理者通知といった機能群を20あまりの部品としてBot化し、システム変更などの際の運用コストが減らせるようアプリケーション管理を効率化するという工夫を行っています。

 さらに、運用に当たっては、現場がRPAを利用する際の手続きを最適化するため、必要な情報をMicrosoft Formsによって作成されたフォームに現場が直接入力し、自動ワークフローツールであるMicrosoft Power Automateにてメールを送信。このメールをトリガーにRPAが実行されるように構築しました。システム部に連絡せずともRPA利用が可能となったことで、Bot管理の手間が省け、システム部と現場双方の負担が少ない運用が可能になりました。

 「Botが数多く作成されると仕組みの変更が後々難しくなりますし、システム部でないと動かせないようなRPAでは、運用的な負担も大きくなってしまう可能性も。プロジェクト当初から、システム部の負担を減らせるような運用を念頭に、部品や実行インターフェースを先行して用意してきました。現場でRPAが実行できる環境によって、RPAがユーザー部門の持ち物として意識しやすくなっているはず」と大杉氏はRPA運用の工夫を語ります。

 自動化の適用例としては、たとえば主に輸出入品の入荷状況を管理している部門において、刻一刻と変化する原料入荷のスケジュールや発注状況をシステムから取得し、現場が求める形にExcel加工、社内ポータル(SharePoint)に掲載を行う業務を自動化しています。

 また、もともと基幹システム刷新時のスコープであったWeb EDIについては、顧客から届いた発注に関連したメールをトリガーに、発注情報を出力したうえでメールを担当者に送付する部分の自動化を実現すべく実装中です。「Automation Anywhereに各種トリガー機能が備わっているからこそ、Power Automateとの連携も含めて自動化が可能です」と大塚氏は評価します。

 なお、RPA自身を“ミスタールーチン”通称“ルー君”として擬人化することで、RPAに対する愛着を現場に感じてもらい、メンテナンス時には「ルー君は午後半休です」と現場に知らせるなど、現場になじみやすい環境づくりにも注力しています。

RPA全体概要図(クリックで画像を拡大します)

結果

導入後半年で596時間を削減、システム投資も回収

 今回RPAを導入したことで、導入後半年ほどで596時間もの業務効率化を実現することに成功しており、導入前に各部門へのヒアリングによって削減可能とされた1408時間のうち42%ほどを達成しています。「596時間の業務削減によって、RPAのライセンスをはじめ、サーバー費用やRPA開発工数など、システム導入に関わる投資コストがすでに回収できています。対応業務をさらに増やしていけばいくほど、リターンが享受できる環境です」と大塚氏は語ります。特に開発面では、Bot Storeを活用するなど、開発生産性を高める仕組みが用意されている点でAutomation Anywhereを高く評価しています。

 現場からは、RPAによって人為ミスの削減が可能になり、精神的な負担の軽減につながっていると評価の声が寄せられています。また、削減できた時間を使って現場とのコミュニケーション機会を増やし、これまで着手できなかったテーマの検討など、新たなことにチャレンジする時間の創出にも役立っています。さらに、RPAで業務改善が可能になったことで、他の業務にもRPAを活用できるのではという業務改革意識の醸成にも大きく貢献していると大塚氏は高く評価しています。

 経営層からは、RPAに対して従業員の削減につながる仕組みとして従業員が警戒しないかと一部懸念する声が上がっていたものの、思った以上の効果を発揮していると今では経営層からも好評だと吉永氏。「RPAは、従業員の業務負荷を軽減して新しいことにチャレンジできる、クリエイティブな業務に専念できる環境を提供してくれるツールだと思っています。Bot数はまだ少ないものの、RPAを活用することで多くのリターンが享受できていることを経営層に報告できました」と評価しています。

 同社でのRPA導入が成功したのは、ROIを意識しながら対象業務を選定したことだと大杉氏は語ります。「多くのBotを運用している他社事例もあるようですが、少数精鋭で開発運用している我々だけに、効果が得やすい部分から適用していくことがうまく進められたポイントの1つ。現場へヒアリングしながら、RPAの適用可否を判断し、業務そのものを見直すことも進めてきました。BPR的なことも含め、業務部門とともに推進できたことが大きな効果につながっています」。

今後

全社的にRPAを展開、AI OCRも含めた新たなBot開発にも意欲的

 今後については、Web EDIに関する基幹システムへの登録についての自動化を進めながら、営業部門や研究開発部門、品質管理部門といった、経営管理本部以外の部署にて行われているルーチンワーク業務の自動化を進めることで、全社的にRPAを展開していきたいと語ります。「いまだに紙文化が根強い当社だけに、AI OCRなど次のステージにつながるRPAによるBot開発にも取り組んでいきたい」と吉永氏。AI OCRを実現するうえでは、Automation AnywhereのソリューションであるIQ Botに興味を持っていると大塚氏は語ります。

 また全社展開に向けては、開発体制の強化など体制面での見直しを進めていきながら、社外の情報と社内の情報を連携させるといったことも含め、利活用の幅を広げていきたいと語ります。「Botを増やしていくにしても、アプリケーション管理はシステム部で継続していきながら、部品化したBotをうまく活用できるよう、人的リソースも含めた体制面をしっかりと整備していきたい」と大杉氏は語ります。

 なお、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で同社もテレワークに取り組んでいますが、従来FAX注文だった顧客からメールでの発注に切り替えたいというニーズが寄せられているなど、ニューノーマル時代に向かって新たな業務フローへの対応も求められている状況です。「RPAを使うことで、新たな働き方にも対応できるはず。変化に対して柔軟かつ素早く対応できるツールとして、今後も期待しています」と大杉氏。特に経済活動が制限されている今、残念ながら企業の倒産も増えつつあるため、同社の経営企画部門では倒産報告などの信用情報を外部から収集し、自社との取引履歴と紐づけて関係者へ通知しています。業務負荷が高まる可能性のあるこれら与信管理の業務にも、RPAが活用できるのではと大塚氏は期待を寄せています。

 

自動化されたプロセス
・利用している外部Webサービスの請求データをサービス事業者のサイト経由で自動収集
・輸出入状況などの情報をシステムから取得し、Excel加工後に社内ポータルに自動掲載
・Microsoft Formsを使ってBotへの情報収集指示をユーザー部門自ら実施できる
・Excelにまとめられた当月調達情報を読み込み、OBICへ自動登録
・顧客からの通知をトリガーに、各顧客サイトから関連情報を自動取得し担当者へ連絡

※本記事の内容は、2020年5月時点での情報を元にしております。