エンタープライズ企業のための「次世代RPA」メディア

フジテック「ユーザー主体の開発でデジタル化を推進。年間7,280時間の業務時間短縮と、マネジメントサイクルの高速化を実現」

2021/08/19 スライダー, 導入事例



組織の概要

フジテックは、エレベータ・エスカレータ・動く歩道を取り扱う、空間移動システムの専業メーカーです。徹底した品質管理のもと、研究・開発、販売、生産、据付、保守、モダニゼーションまで、一貫体制で “安全・安心” な移動を実現し、世界の都市機能に貢献しています。1948年の創業からこれまで、専業メーカーとして、業界に先駆けてグローバルに進出し、現在は23の国と地域に事業を展開し、10の生産拠点を有しています。日本国内には2つの研究・開発拠点、そして全国120ヵ所を超えるサービスセンターで保守にあたっています。

 

「人と技術と商品を大切にして、新しい時代にふさわしい、美しい都市機能を、世界の国々で、世界の人々とともに創ります。」という経営理念のもと、日本、東アジア、南アジア、北米、南米、欧州、中東に広がるグローバルネットワークを通じて、世界のユーザーに信頼される商品とサービスを提供しています。
そしてフジテックのRPA導入を牽引するデジタルイノベーション本部は、グローバルも含めたフジテックグループ全体のデジタルイノベーションを推進する中核部門です。

 

課題

開発、設計、生産、据付、保守…多様な部門で固有の業務を自動化

フジテックでは、「クラウドファースト」「モバイルファースト」という考え方のもと、先進技術を積極的に導入していこうという方針で様々な業務改革に取り組んできました。グループウェアやWebミーティング、ワークフローシステム、クラウドストレージ、オンライン承認によるペーパーレスなど、コロナ禍以前からいち早く導入していました。

 

こうした風土の中、2019年に情報システム部門がデジタルイノベーション本部へと改組。テクノロジーによる更なる業務品質向上に向けて、2019年5月に各部門の業務プロセスの調査を実施しました。

 

プロセス調査ではデジタルイノベーション本部が各部門の現場に実際に出向いて行いました。開発、設計、生産、据付、保守など多種多様な部門では、既存の基幹システムだけではカバーしきれていない、集計などのルーティン業務が残っていることが分かりました。こうした業務を自動化することで更なる業務改善が行えるのではないか?と2019年6月にRPA導入の検討を開始しました。

 

ソリューション

安心してユーザー主体の開発ができる環境を実現

RPAを導入するにあたり、5つの製品を比較検討しました。比較検討では具体的な比較項目を設定。「ユーザー主体で開発できる」「集中管理ができる」「安全性と将来性が高い」という3つの軸で検討を進めました。

 

その結果、他社製品と比較しても「特別なプログラムの知識を求めずにコマンドが豊富」「レコーディング機能の便利さ」といったポイントからAutomation Anywhereをユーザー主体で開発できるソリューションと判断。さらに「AWSで管理可能」「Control Roomという一括管理の機能」「フロー型ではなくリスト型のUIなため、開発もしやすく現場で開発されたBotを解析して管理しやすい」「サーバー型で一元管理がしやすい」といった点から集中管理に適している面も評価されました。

 

さらにデジタルイノベーション本部 システム管理部 主事 中尾英世氏は「Automation Anywhereは高いセキュリティ機能はもとより、日本語対応だけでなく多言語対応しており、サポート面も充実。グローバル展開しているフジテックの実情に見合っていた」と言います。

 

こうした比較検討を経て実務ベースのPoCへ進み、社外のシステムと連携して行う業務を選んで実証実験を行いました。

 


デジタルイノベーション本部 システム管理部 主事 中尾 英世氏

 

メリット

  • 年間7,280時間の業務削減
  • 稼働Bot数68
  • ユーザー部門開発の稼働Bot数59

 

詳細

より自由な働き方が選択できるような環境づくり

プロジェクトの初動で行ったプロセス調査では、働く“場所“や“時間“、そして“人“に縛られている業務が多いことが分かったといいます。
例えば“事務所に帰らないとできない業務”によって場所が拘束される。集計作業では、月次の集計を算出するために、“必ずこの時間に入力しなければならない”といった時間の拘束。また“Aさんでなければこの業務はできない“というような人による拘束。

 

デジタルイノベーション本部 プロセス管理部 部長 山本 健治氏は「こうした場所・時間・人の拘束を排除し、それぞれの部門が専門的な業務に専念できること、より自由な働き方が選択できるような環境をつくることを目指して自動化を進めることにしました。また、このような業務は機械的な業務であることが多く、人間は創造的でワクワクするような仕事に専念できるようにしたかった」と語ります。

 


デジタルイノベーション本部 プロセス管理部 部長 山本 健治氏

 

実際に業務を自動化するにあたっては、ユーザー部門ではシステム開発すべき業務とRPAで対応すべき業務の線引きはできないため、ユーザー部門向けの説明会を行い、どのような業務にRPAが向いているのか条件を説明。すると現場からは 約200の候補業務が集まったといいます。この候補をもとに、さらに現場に聞き込み調査を実施して業務を分析。RPAと相性なども鑑みて30の業務を対象に開発をスタートしました。

 

また同時に、ユーザー部門に対してトレーニングを行いました。オンラインや動画でのトレーニング、グループチャットを活用して、希望者がいつでも気軽に受講や相談ができる支援体制を実現しています。デジタルイノベーション本部 プロセス管理部兼テクノロジー研究部の石岡早織氏は「RPAの導入は実際に業務にあたっている部門が開発します。デジタルイノベーション本部では、この開発をどのように支援できるか?というスタンスで、メンバーの大半はサポートや教育にあたっています。サポートメンバーはきめ細かいサポートができるように日々工夫しています」と語ります。

 

現場の開発者へのサポートは、サポートメンバーの情報共有やユーザーへの教育研修に留まりません。定期的に「開発者番付」を掲載。「開発されたロボット数」や「ロボットによって得られた効果」などを提示することで開発者同士が切磋琢磨しています。

 


デジタルイノベーション本部 プロセス管理部兼 テクノロジー研究部 石岡 早織氏


結果

稼働中Botの87%がユーザー部門の独自開発

現在では開発、設計、生産、保守、検査など23部門の中で68のBotが稼働。このうちデジタルイノベーション本部で開発したのは9つのみで、59のBotはユーザー部門が独自に開発しました。

 

こうしたRPA稼働の恩恵として、RPA導入プロジェクト開始時に掲げた「2021年度に年間4,000時間の業務削減」「2024年度には年間7,000時間の業務削減」という目標も、3年前倒しで実現。2021年6月までに年間7,280時間もの業務削減効果を生み出しています。

 

また、山本氏は「RPAの効果は業務時間削減や人件費削減だけではない」と言います。「自動化を進める中で、今回自動化の対象とならなかった業務への効率化の意識も高まった。また、自分たちでも開発できるということが、テクノロジーの民主化に繋がった」と語ります。

 

 

今後

よりインテリジェンスな活用を視野に

自動化のメリットは、当初想定していなかった様々な部門や業務にも出ています。
例えば、そもそも「前月の集計を翌月の初めに可視化する」のは集計作業の手間が原因です。こうした集計業務は、自動化することで月次から週次や日次で行われるようになりました。情報の鮮度が高まることによって、問題の早期発見や対策の早期化、マネジメントサイクルの高速化に繋がりました。

 

今ではBIツール推進チームとコラボレーションし、集計作業に特化した業務調査を実施。集計作業の効率化だけでなくBIツールと連携し、マネジメントサイクルの可視化にもRPAの活用を開始しています。

 

山本氏は「今RPAは業務の“手”や“足”に相当する部分を担っています。今後は、AIやBIとRPAを連携させて判断という“頭”に相当する部分の改善につなげていきたいと考えています。業務時間の削減はいずれ頭打ちになってしまいます。今後はもっとインテリジェンスに深化させる方向に活用を進めていきたい」と語ります。

 

フジテックでは今年、新バージョンであるAutomation 360へ切り替えて、よりユーザー部門が開発しやすい機能を活用していく予定です。

 

自動化されたプロセス

  • 社外システムへのデータ入力
  • 23部門での各種事務作業
  • BIツールと連動する各種集計業務
  • 集計頻度の向上によるマネジメントサイクルの高速化

 

業界

  • 製造

※本記事の内容は、2021年6月時点での情報を元にしております。