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T D K「IQ BotとRPAの導入で、膨大で複雑な経理業務を約30%も時間短縮 業務の属人化も排し事業継続性にも寄与」

2021/08/30 スライダー, 導入事例



 

組織の概要

TDKは、1935年に創業した世界有数の電子部品メーカーです。磁性技術の強みを活かし、「受動部品」「センサ応用製品」「磁気応用製品」「エナジー応用製品」などを主軸に、高い創造性をもって成長を続け、現在では30以上の国や地域に250以上の工場、研究開発拠点および営業拠点を有し、世界の文化、産業の発展に貢献しています。その中でも電子部品ビジネスカンパニーは、TDKが扱っている電子部品のうちコンデンサーやフィルターなどの受動部品と呼ばれる商品の営業部隊として、TDK全体の売り上げの約半分を占め、TDKの発祥からある事業の中核を成す部門です。

 

TDKではDXの推進にあたって、IT部門や経営企画部門が全社一律で進めるのではなく、異なる業務を遂行する各部門が、それぞれに見合った形でDXを推進するとうい文化で取り組んでいます。

 

 

課題

営業経理と受発注に関わる煩雑な業務の自動化

TDKの電子部品ビジネスカンパニーでは、多種多様な電子部品の取引に関わる業務を担っています。売り上げ規模も全社売り上げの約半分に上り、その経理業務と受発注に関わる業務は膨大かつ複雑です。経理系の業務の多くは会計システム上で行う管理会計業務が主体と思われがちですが、それ以外にも、検収や照合、注文書の取り込みなど、多くの自動化できない日常業務があり、大変な負荷となっていたため、早くからRPAの導入に着目していました。

 

今回RPA導入を実現した企画管理統括部 営業経理部門では、特に全社でERPを導入した際に既存システムを廃止されたため、関連する経理業務には大きな負荷がかかっていたといいます。

 

例えば売掛金の照合業務では、どうしても金額の「不照合」というものが発生します。こうした場合、経理部門では正否の判断はできないため、営業担当へ確認して修正してもらう必要があります。また、修正する金額の大小によっては承認依頼が必要になります。この一連の業務は、ERP導入以前は自前のシステムで行っていましたが、ERPを導入してからはエクセルやメールを介して行われていました。17名いるメンバーの内、この照合業務には7名が当たっています。当然ERPに組み込むことはできますが膨大なコストがかかってしまいます。

 

また、検収/支払明細データの取込というプロセスでは、約700社の顧客からのデータを取り扱います。このうち2/3はEDIなど自動で処理できる状態でデータを受領します。しかし残りの約200社は顧客指定の書式など、自動で処理できないものでした。こうしたマニュアルで行う業務を自動化し、経理業務の効率化を行うためにRPAの導入を検討したということです。

 

ソリューション

「使い易さ」と「海外展開への対応力」でAutomation AnywhereのRPAおよび IQ Botを導入

営業経理では、2019年のRPA導入にあたってシニアエキスパート 菊池 栄一氏と業務担当者の2名でツールの選定をしました。選定にあたっては、国内ベンダーが提供するRPAも使ってみましたが、「けっこう大変」という印象だったと言います。実際に業務を担当しているメンバーとAutomation Anywhereをハンズオンセミナーなど含めて使ってみて、その使い易さを実感しました。

 

また、TDKはグローバル展開しており、営業経理部門でも海外とのやり取りが多く発生します。その点、同じくグローバル展開しているAutomation Anywhereはサポート面でも安心感がありました。他のRPAと比較し、「実務担当者の評価による使い易さ」と「海外展開への対応力」の観点と、また、適用業務を検討していく中で、Automation Anywhereのドキュメント処理ソリューションであるIQ Botが活用できるということもわかりAutomation Anywhereの導入を決断しました。

 

メリット

  • PDFなど直接取り込めないデータに費やす時間的ロス 経理1人あたり 1/3軽減
  • 年間人件費1人あたり200万円削減
  • 稼働Bot 約130

 

詳細

段階的な適用で確実な運用を狙う

導入は、推進を統括する菊池氏を筆頭に、営業経理部門1名、IT部門1名の合計3名でスタートしました。

 

経理部門で対応する顧客は約700社。この内、顧客指定の紙やPDFの請求書など自動で取り込みができなかった約200社に関わる業務に焦点を当てて、IQ Botを活用したデータの抽出とRPAによる自動化をスタート。各社それぞれ異なった書式に最適化するため、検収作業ではデータ量の多い顧客から自動化を行うことにしたといいます。

 

また、自動化する業務の担当者も絞ってスタートしました。難しいプログラムを自分で書くということはないにせよ、ロジカルに業務を考えられ、対象業務に対する実務経験値が高いメンバーでスタートし、「“全員が一斉に使えるように“ではなく、使う人と業務範囲を絞ってスタートする」という意識で確実な運用の定着を狙いました。

 

菊池氏は「小さく始めて確実に進めるという意識で導入しました。RPA自体を知り、触ってみて現場にあったものを作ってみる。全社で足並みを揃え、コンサルを挟んで導入していくような進め方と違い、現場主導で導入したことで上手く導入できました」と言います。こうした進め方の結果、社内からネガティブな意見が出ることもありませんでした。

 

経理業務に続いて自動化のターゲットになったのはCS業務(受発注業務)です。CS業務では、顧客ごとに仕様が異なる電子部品の注文に対して、工場への納期確認、工場との各種調整、顧客への回答など、多くのマニュアル業務が発生していました。この一連のプロセスも自動化を実現しています。

 

自動化プロジェクトを統括した 菊池 栄一氏

 

結果

導入2年で130のBot 経理一人当たり1/3の時間削減

導入から2年が経過した現在では、検収作業で約7、受発注業務(CS業務)で約123、併せて約130のBotが稼働しています。その結果、従来PDFなど直接取り込めないデータに費やす時間的なロスを経理1人あたり1/3も軽減できたと言います。これは年間人件費に換算すると1人あたり約200万円分の稼働を削減できました。

 

また、自動化の恩恵はコストだけではないと言います。経理業務にかかる負荷は非生産的なものが多く、企業として付加価値を生むものではありません。業務効率化によって得られた時間を本来“人”がやるべきクリエイティブな業務にリソースを再分配することが可能です。RPA化推進のプロジェクトを通して、関連部門との関わり方や相乗効果の模索など、新たな展望も見えてきたといいます。

 

さらに、「副次的な効果ですが、RPA化を進める上でできたドキュメントやBotのプログラムは、業務の属人化への対策にもなります。自動化により業務が可視化され、人員の入れ替わりにも業務の継続性が担保される」といいます。

 

今後

購買部門など他部門でも展開

プロジェクト開始時点で自動化の対象となった業務は軌道に乗り、効果も検証できました。これからは17名いる他の経理担当者の業務へ転用していく予定です。また、営業経理部門では、信用情報など顧客の情報を集めてデータベース化する債権保全の業務でもRPA化を実現する予定です。

 

さらに、TDKでは部門の枠を越えて購買部門など他部門でもAutomation Anywhereの利用を検討しています。今回の導入で得たノウハウを発信し、TDK全体でのDX推進を支援していきたいと考えています。

 

自動化されたプロセス

  • 営業経理業務
  • 受発注業務(CS業務)

 

業界

  • 製造

※本記事の内容は、2021年6月時点での情報を元にしております。