エンタープライズ企業のための「次世代RPA」メディア

2020年代のRPAのトレンド~業務アプリ、機械学習、人間を協業させて効率性を追求

2020/04/24 コラム, スライダー



2016年頃から大きく注目され始めたRPAであるが、2020年代に入りトレンドも大きく進化しようとしている。コンピューター上のUI操作を自動化することで単純作業の効率化を進めてきたRPAであるが、一方単純なUI操作のみだと適用できる業務範囲が限られてしまう課題もある。

2020年のトレンド『ハイパーオートメーション』とは

ガートナーが2020年の戦略テクノロジー・トレンド※の筆頭に挙げているのが「ハイパー・オートメーション」である。ハイパー・オートメーションとは、「複数の機械学習 (ML)、パッケージ・ソフトウェア、自動化ツールなどを組み合わせて一連の仕事を実行する概念と実装」のことを指す。この概念は単純なRPAだけでは実現できず、ツールの組み合わせによって、人がタスクに関与している部分を模倣できるよう支援することが必要になってくる。

RPAがUI操作を行う「手足」だとすると、ハイパー・オートメーションには「頭脳」にあたる複数の機械学習エンジンがあり、ここで分析・判断が行われる。加えて、専門的なタスクを行うさまざまな「パッケージ・ソフトウェア」をシームレスにつなぎ合わせる能力が求められる。ハイパー・オートメーションは昔からある「インテリジェント・オートメーション」と似たようにも見えるが、「従来型RPA/AIを組み合わせたプロセス全体の自動化を実現する手法」をより具体的に一歩進めた概念であると考えることができる。

一方、AI/機械学習の領域については、ハードウェアやクラウドプラットフォームの発達による、計算に使えるコンピューティングリソースの劇的な増加によってここ数年かなる注目されていたが、人間やアニメ/映画で登場するアンドロイドと比べてまだまだ及ばないこともわかってきている。少し複雑で非定型な作業になると、やはり人間の判断が必要になることが明らかな業務もある。そのため、機械的な自動化だけですべてを行おうとせずに必要な箇所には人間も巻き込んで、全体で業務がスムーズ且つ効率的に流れるようRPAが間を取り持つ仕組み (「アテンデッド・オートメーション2.0」とも呼ばれる) を取り入れることが一般的になってきている。ここで使われるのが人間とのインターフェイスをつかさどる「チャットボット」で、テキストや音声、ボタンなどで必要に応じて人間の指示を受ける処理が自動化された業務フローに組み込まれている。

 

ハイパー・オートメーションの例は?

具体的なイメージを付けるためにひとつわかりやすい例を提示しよう。保険業務はAIを利用した事務処理が進んでいる分野の一つである。自動車保険で事故の保険金支払業務を考えてみる。紙で送られてきた申請書と事故で破損した自動車の写真を受領すると、RPAがAI-OCRと連携して申請書をデジタルデータに変換する。同時に自動車の写真を画像認識AIに引き渡し、保険金の概算額を算出させる。そして保険金詐欺でないことを過去の事例と照合して自動判定して、確率が低ければ自動で承認通知を依頼者に出してしまう。いずれもAIによる判定が難しいと判断された小数のケースはチャットボットで人間にエスカレーションされ、人による判断がなされるが、人間がかかわる業務量は1/10以下に減少する、といった具合だ。

 

国内主要RPAベンダーの対応状況は?

国内のRPAソフトウェア/ソリューションを見てみると、大小さまざまなRPAがひしめきあっている。多くのソフトウェア/ソリューションは従来型RPA、しかもデスクトップ型のRPAのみの機能しか持ち合わせていないが、主要なRPAソフトウェア/ソリューションであるWinActor、UiPath、BizRobo!、Automation Anywhere、Blue PrismのいずれもRPAとAIを組み合わせたソリューションを提示している。

しかし、ハイパー・オートメーションで言うところの「複数の機械学習 (ML)、パッケージ・ソフトウェア、自動化ツールなどを組み合わせ」がシームレスにできるかどうかは各社で事情が異なっている。特にMicrosoft、Amazon Web Services、Google Cloud、IBM Watsonなどの著名なAI APIやAI-OCRなどの「頭脳」と簡単に連携ができる専用の仕組みがあるかどうか、SAPなどよく使われるがUI自動化操作が難しいようなパッケージ・ソフトウェアに標準対応しているか、ロボットを設計するための業務整理ツールや可視化ツールが標準で用意されているか、またチャットボットなど人間とRPAが適切に連携できるソリューションが用意されているか、など、自社で行おうとしている自動化に必要な仕組みが備わっているか、事前にきちんとした検討が必要になる。

RPAの成功は必ずしもツールだけによるものではないが、使うツールによって可能性の幅が大きく異なってくるため、単純に目に入ったツールや安価なツールを使う前に主要なツールを2、3比較してみてもよいだろう。

※参考:2020年の戦略テクノロジー・トレンド