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失敗しないRPA導入のために—RPAの種類とそれぞれのメリット・デメリットを知る

2020/05/07 コラム, スライダー



 働き方改革を取り組む企業が増加するにつれ、一層注目されるようになったRPA(Robotic Process Automation)ツールである。大まかに分類すると、ガバナンス (統制) 型で「デスクトップ型」と「サーバ型」、展開形式で「オンプレミス形式」と「クラウド形式」に分けられ、それぞれにメリット・デメリットがある。導入規模や想定する利用形態に合ったRPAツールを選択することが肝要である。

人が行っていた作業をそのまま自動化するなら「デスクトップ型」

 デスクトップ型は、ロボットが特定の端末にインストールされ、その端末上のみで稼働する。導入がしやすく利用価格も割安なので、特定のPCなどで行っている業務だけを、まずは自動化したいという場合に適している。

 一方でデスクトップ型は、複数の端末にそれぞれインストールすることは可能だが、個別の端末ごとに自動化の設定を行い、ロボットも個別管理しなくてはならない。複数の端末に導入するとなると、コスト高にもなり運用管理の負荷も重くなる。また、デスクトップ型は現場レベルで導入・運用されるケースが多く、全体最適が難しく組織レベルでの成果が出しにくかったり、管理されない「野良ロボット」が決められた業務以外に勝手に使われたりすることもあり、セキュリティの面でもリスクを高める要因となる。

組織的に複数業務で利用したいと考えるなら「サーバ型」

 サーバ型のRPAは、ロボットをサーバ上に作成して利用する。この場合、サーバ上で作られたロボットを各端末に配布して利用する場合と、各ユーザーがサーバにアクセスし、サーバで稼働するロボットを利用する場合がある。どちらの形態のほうが優れているかどうかは一概にはいえない。システム全体の構造からどちらの形態のほうが使いやすいか、レスポンスに問題がないかなどで判断する。

 いずれにせよサーバ型は、各端末で利用するロボットをサーバ側で一括管理することができる、というメリットがある。端末の台数が増えても、同じロボットを利用するなら簡単に稼動させることができる。また、操作する現場担当者が退職、異動などで利用しなくなっても管理者側で消去したり、ユーザーを変えたりするなどの操作ができる。

さらに一部のユーザーがロボットを勝手に改変し、業務の標準化を阻害するといった心配もなく、個人情報を扱うような高いセキュリティ要件が必要な業務にも利用しやすくなる。

サーバー型の2パターン

あらゆる要件に対応できるがハードルが高い「オンプレミス形式」、コストや管理面の負担が軽減される「クラウド形式」

 オンプレミス形式とは、ソフトウェア製品を購入してサーバにインストールして利用する従来の形式である。すべてを自前の環境で用意をするために思い通りにカスタマイズできるが、ソフトウェアの更新やサーバの運用管理は企業側で行わなければならず、特に専任者が不在の状態では導入のハードルが高くなる傾向にある。

 一方、クラウド形式 (SaaS形式)のRPAサービスは、ロボットがクラウド上で作成されるタイプのもので、Webプラウザを使って利用する。

 クラウド形式では、インフラはサービス事業者が用意したものを利用するため、利用者が増えても基本的には、サービス利用料金を利用者の人数に合わせて支払うだけでよくなる。従って、ハードウェアのリソース増強のための費用がかからなくなる。また、ソフトウェアのバージョンアップなどに対する管理コストも不要となり、利用者が全員最新バージョンのサービスを利用できるようになる。

 このようにクラウド形式は、オンプレミス形式と比べ、コスト・運用管理両面から負担が軽くなり、しかも、新しい機能などが出た場合は、バージョンアップに対応した製品を購入することなく、すぐに利用できるというメリットがある。

 クラウド形式を利用する場合に気を付けなければならないのがセキュリティ管理である。サービス事業者のサーバにアクセスして利用するため、社員以外の人物にID/パスワードを盗まれると簡単に重要データを盗まれるリスクがある。特に事業者サーバへのアクセスを、インターネット回線を通じて行っている場合などは、セキュリティ上大きなリスクとなりえるので、多要素認証や専用回線を利用するなど適切な処置が必要となる。また、セキュリティだけでなく、業務スピードを落とさないようネットワーク帯域幅や構成が適正な状態となっているかを確認しておく必要がある。

クラウド形式

 RPAの製品選定にあたっては、デスクトップ型とサーバ型、オンプレミス形式とクラウド形式の特徴を理解し、試験導入の段階から将来的な利用方法も視野に入れながら検討していくとよい。さらには、野良ロボットの発生、自社のインフラのひっ迫、セキュリティリスクについても事前に考慮すべき事である。RPAツールは、ある部署で一定の成果を出すと、利用範囲が広がっていく。そのときのことを最初から念頭におき、導入を進める必要がある。