【2021年版】 6大RPAツールの徹底比較

2021/04/26 コラム, スライダー



はじめに

RPA (Robotic Process Automation: ロボティック・プロセス・オートメーション)は、人間がパソコン上で行っている定型業務の操作を再現することで自動化する仕組みである。元々は海外で提唱された仕組みであるが、日本では世界に先駆けて流行っており、国内外の様々なRPAソフトベンダーがしのぎを削っている。その数はざっと20~30以上はあるだろう。

 

インテリジェントオートメーション、ハイパーオートメーションとは

 

ただし、そのような数のソフトウェアの特徴をいちいち調べて比較するのは時間の無駄である。RPAは発展途上のソフトウェアであり、これから紙や人間とのやり取りなどの非定型業務に至るまでを自動化できるポテンシャルがある、RPA x AIの最先端技術を使えるRPAソフトベンダーを選びたいところである。

そのようなRPAソフトベンダーは各調査機関からも高い評価を得ており、かつ市場でも顧客から評価され高いシェアを持っている。現在はRPAソフトが乱立している状態であるが、数年も経つと整理・統合されるだろう。つまり、調査機関や顧客から評価を得ているトップ5~6のものを押さえておけばよい。

 

RPAの価格感は?

 

この記事では、日本においてシェアを持っている6大RPAツールを中心に、各ソフト/ベンダーの特長を見て行こう。

 

WinActor

WinActor (ウィンアクター)は、NTT-AT (アドバンステクノロジー)が提供する純国産のRPAソフトである。NTTデータをはじめとする日本全国のNTTグループが協力にバックアップしており、特別定額給付金の話題があってからは、全国の地方自治体に提案が進んでいる。

サーバ型の機能 (WinDirector、NTTデータが開発) も取り揃えているが、主に採用されるパターンはデスクトップ型が多く、かつ画像認識で画面を操作するため比較的カスタマイズが少ない単純な自動化業務に利用されることが多いようである。サーバ機能のクラウド版としてWinActor Manager on Cloudというサービスもある。

WinActor Cast On Callと呼ばれる従量課金のクラウド型も2019年9月より正式に提供開始となっており、デスクトップ型、サーバ型、クラウド型の自動化機能のポートフォリオをそろえている。AIやOCR機能は他製品との組み合わせとなる。

ベンダー発表では2021年4月の時点で国内顧客は6,000社※1にのぼり導入社数では国内最多である。最新バージョンは同時期にVersion 7.2.1が登場している。価格はフル機能版90,8000円/デバイス(税別)、実行版248,000円/デバイス(税別)、サーバ機能2,280,000円(税別)となっている。

 

WinActorの特長

  • 純国産である
  • NTTグループが強力にバックアップ
  • 導入社数が最多。

 

UiPath

UiPath (ユーアイパス)は、米国に本社を置く企業で、同名のRPAソフトを提供している。

サーバ型の機能 (Orchestrator) も取り揃えているが、主に採用されるパターンはデスクトップ型が多いようである。マイクロソフトが開発したWindows Workflow Foundationというプラットフォームをベースにしており、少し複雑な自動化業務にはVB.NETの開発を伴うことが多いようだ。そのためか、パートナー企業にはSI企業が多く名前を連ねている。開発環境は通常のStudioと、初心者向けに簡単にしたStduioXの2通りを提供する。

製品の機能は最も豊富な部類に入り、SAP、Citrix、ターミナルの操作など、自動化が難しい環境にも対応している。2019年にStepShot社とProcessGold社を買収し、2020年2月にタスクマイニング機能をUiPath Explorer Expertとして、5月にプロセスマイニング機能をUiPath Process Miningとリブランドして日本で提供開始した。その他にもAutomation Hub、Document Understanding、AI Fabric、Test Suite、Insightsなど幅広い製品ポートフォリオを持つ。ロボットマーケットプレースとしてUiPath Go!を提供している。

サーバ機能のOrchestratorはクラウド型の提供も2020年5月より始まっている。同時にライセンス体系/価格体系が変更されている。同時利用ユーザー数でライセンスを購入する「Concurrent User」型のライセンスが2021年4月以降購入できなくなるなどの変更が入る。

ベンダー発表では国内顧客は1,500社にのぼる※2。ITR等の調査会社の発表では国内売上シェアが最も高い。大手企業でのシェアが特に高いようである。Google Trendによるとインターネット上での製品名の知名度もRPAの中で最も高い。価格はデスクトップ型での導入が約50~70万円程度から、サーバ型での導入が約350~400万円程度からとなっている。中小企業や開発者向けには無料のCommunity Editionも提供される。

製品バージョンはLTS (Long Term Support)とFTS (Fast Track Support)の2つに分かれているのがユニークであり、LTSは安定性を、FTSは最新機能を優先する場合に採用する。

 

UiPathの特長

  • .NET開発者にもフレンドリーな使い勝手
  • 自動化対象にできるアプリケーションが多い
  • 自動化に取り組むフェーズ別の製品ポートフォリオが豊富

 

 

BizRobo!

BizRobo! (ビズロボ)は、RPAテクノロジーズが提供するRPAソフトであり、米Kofax社のソフトウェアのOEMをベースに機能を追加している。ソフトバンクが提供するSyncRoidなど、BizRobo!のさらにOEMの製品もいくつか存在する。

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デスクトップ型RPAのBizRobo! Miniとサーバ型RPAのBizRobo! Basicの2つが主な製品体系となる。プライベートクラウド型のBizRobo! DX Cloudや、2020年8月に発表されたSaaS型のBizRobo! as a Serviceなどのクラウド型の提供も始まっている。

製品としては、MC (Management Console) (サーバ型のみ)、DS (Design Studio)、DAS (Desktop Automation Service)という3つのコンポーネントに加えて実行サーバ環境としてRS (RoboServer)を導入する必要があるのがユニークである。元々Webの自動化とデスクトップアプリの自動化のモジュールが分かれていたことに由来する。ブラウザを内蔵し、実行環境は独自ブラウザを使用する。

ロボットの実行はサーバ型の場合は、サーバ上でバックグラウンドで実行するUnattended型が基本であるが、Version 10.3以降はAttended型のシナリオもDA端末上でサポートしている。AI-OCRはBizRobo! Document Enterprise/miniという2製品の他に、サードパーティ製AI-OCRとも積極的に連携している。2020年6月より電子ペーパーソリューションBizRobo! Paper-freeも提供開始している。

ベンダー発表では顧客数は国内で1,560社以上。最新版は2020年6月にリリースされたVersion 10.7.0.4。価格はデスクトップ型が90万円/年から、サーバ型が720万円/年である。2020年8月より、BizRobo! Basicの廉価版としてBizRobo! Liteが120万円、BizRobo! Lite+が180万円で発売されている。

 

BizRobo! の特長

  • サーバ型はサーバ上でバックグラウンド実行される
  • 価格の違いはロボット同時実行数
  • 製品提供形態が豊富

 

Automation Anywhere

Automation Anywhere (オートメーションエニウェア)は、米国に本社を置く企業で、同名のRPAソフトを提供している。

標準構成はSaaSのWebベースのサーバ型RPAでありデスクトップ型の構成はない。オンプレミス版も提供される。セキュリティ/内部統制の機能に優れている。また、RPAの他にAI-OCRのようなIQ Bot、タスクマイニング機能を持つDiscovery Bot、分析機能を持つBot Insightを自社製品として搭載する。MacやLinux上でのRPAもロードマップに入っているのはユニークである。RPAの機能としてはトリガー機能が豊富なことで知られる。

2019年10月に提供開始され、2021年3月に改名されたAutomation 360でアーキテクチャを大きく作り替えてWebベースのフロー型開発環境となり、SaaSでの提供が標準となった。機能はUiPathと並んで豊富であり、SAP、Citrix、ターミナルの操作など、自動化が難しい環境にも対応している。Human-In-the-loop機能としてInteractive Forms機能やRobotic Interfaceの機能も2020年中盤になってリリースされている。

また、ロボットマーケットプレースとしてBot Storeを業界で最初に提供した。ベンダー発表では顧客数は全世界で4,000社以上、稼働しているロボット数は280万以上で1社あたり稼働ロボット数が多い。価格は最小構成が120万円/年程度からである。中小企業や開発者向けには無料のCommunity Editionも提供される。

 

Automation Anywhereの特長

  • Webベースで内製化でき、スケールする仕組み
  • 高度なセキュリティ/内部統制/パスワード管理機能
  • サーバ型RPA導入の最小構成価格がBlue Prismと並んで最も安い。

 

Blue Prism

Blue Prism (ブループリズム)は、英国に本社を置くRPAの老舗で、RPAという言葉を発明した企業であるといわれている※3。高度な管理機能が標準搭載されたサーバ型RPAでありデスクトップ型の構成はない。セキュリティ/内部統制の機能に優れている。主要RPAベンダーの中では唯一レコーダーによるロボット作成をサポートしていない。これは設計思想によるものだとのこと。

2020年になってからはクラウド型の提供にも力を入れており、Thoughtonomy社を買収してBlue Prism Cloudとして提供開始をすることで、オンプレミス版、IaaS版の他にクラウド上で動作する機能を拡充している。

複数環境管理ツールとしてBlue Prism Cloud Hub、Human-In-the-LoopインターフェイスとしてBlue Prism Interact、ロボット実行最適化AIエンジンとしてBlue Prism Cloud IADAを提供している。従来Unattended型が主流であったが、Blue Prism Cloud Interactの提供によりAttended型にも踏み込んでいる。

また、ロボットマーケットプレースとしてBlue Prism Digital Exchange (DX)も提供する。ベンダー発表では顧客数は全世界で1,500社以上。価格は最小構成が120万円/年程度からであり、本番稼働するまでライセンス料を取らないという特徴がある。最新版は2021年3月にリリースされたVersion 6.10.1。

 

Blue Prismの特長

  • 傑出したセキュリティ機能、内部統制機能
  • スケールするノウハウを製品と一緒に提供
  • サーバ型RPA導入の最小構成価格がAutomation Anywhereと並んで最も安い。PoC中は無料。

 

Power Automate Desktop

Power Automate (パワーオートメイト)は、マイクロソフトが提供するDynamics製品群/Power Platform製品群の一部であり、元々はSaaS製品間でAPIを使ってワークフローを自動化するiPaaSのプラットフォームであったが、2019年11月にUI flowsを発表し、RPAにも進出した。

2020年4月にUI flowsの正式提供が開始されたが、他の製品に比べて機能がかなり限定されていたため、5月にSoftomotiveを買収し、デスクトップ型RPAのWinAutomationをポートフォリオに加え、Power Automate Desktopと名付けた。

Power Platformは元々エンドユーザーコンピューティングでの自動化を支援する仕組みであり、ユーザー管理機能がクラウド上にある。また、オンプレミス型の構成もない。

2021年3月の発表で、Power Automate DesktopをWindows 10に標準搭載することが明らかになった。同時に、サーバ型RPAの構成や、簡単なAI-OCRやプロセスディスカバリの機能も追加できるようになった。ただし、複数メンバーで組織内のロボット一覧を見ることはできず、デスクトップ型RPAとしての使い方をするのがいまのところは現実的である。

マイクロソフトはAIやOCR機能をはじめとする様々な製品を自社で持っており、Azureで提供されるComputer Vision APIも単純な文字認識だけでなくフォーム認識も行えるようになってきているが日本語の認識率はそんなに高くはないようだ。価格はさまざまなパターンがあるが、Attended型ライセンスは4,350円/月/ユーザーから、フロー5件あたり54,350円/月からである。

 

Power Automateの特長

  • 大手ソフトウェアベンダーの製品
  • SaaS同士の連携は実行環境不要でクラウド上で完結 (iPaaS)
  • 少人数、少量で使う場合の最低価格が安い

 

その他の主要なRPAソフト/ベンダー

他にもいくつか今後有力と思われるRPAソフトを取り上げておく。

  • WorkFusion: デスクトップ型RPA。Gartnerのマジッククアドラントでもリーダーポジションに入っている。Intelligent Automation Cloud Expressに含まれる無料バージョンWorkFusion Studio (旧RPA Express)が有名だったが、2020年4月に突如ダウンロード提供が終了した。
  • Autoジョブ名人 (ユーザックシステム): 大阪の企業による国産RPA。デスクトップ型RPAであり、ブラウザ名人などいくつかのエディションが存在する。導入社数は国内900社以上※4。価格は開発版が60万円/年、実行版が18万円/年。
  • BizteX cobit: 2018年7月からサービスを開始した比較的新しいクラウド型RPAサービス。国内導入社数は1,150以上、ロボット数は4,200以上。価格は月額10万円から。

 

※1 RPAツールWinActor®Ver.7.2.1を販売開始 ひな型ファイルからのシナリオ自動生成機能を搭載!, NTT-AT 2021年4月

※2 ITRの調査レポートで、UiPath社がRPA市場シェア1位を2年連続で獲得, 2019年11月

※3 Blue Prism社年表

※4 RPA導入成功の鍵をユーザックシステムの小ノ島名人が語る, ASCII, 2020年8月