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RPAはトップダウン型導入とボトムアップ型導入のどちらが正解?

2020/06/06 コラム



 RPA (Robotic Process Automation) 、つまりパソコン上の操作のソフトウェアロボットによる自動化を導入するときに、よく「トップダウン型」で始めるのがいいのか、「ボトムアップ型」で始めるのがいいのか、と問われることがある。ボトムアップ型とは、組織全体での意思決定を経ずに、自動化ニーズのある現場ごとに身の回りの業務の自動化から始めていくやり方である。一方、トップダウン型とは、社内IT部門や経営企画部門等をまきこんで、組織としての意思決定をしたうえで現場に落とす方法である。

 結論から言うと、どちらの方が絶対に正しいということはなく、組織の性格、対象業務範囲などによって、「トップダウン型」「ボトムアップ型」どちらの型で始めるのが良いのかは異なってくる。欧米では組織内の複数部門で行われる業務は「業務オーナー」がやり方を規定しており、業務の自動化はこの業務オーナーと一緒に進めてトップダウンで各部門に落とすことが多い。欧米では職務が明確に定義されており、異なる文化の多様な人種が働いており、転職も頻繁に行われるため、業務のやり方を標準化する必要があるためといわれている。このため同じ業務を行っている対象部門が多いほど、自動化により大きな恩恵を受ける。

 一方、日本では似たような業務でもやり方は各部門に任されていることが多く、自動化の仕方も一元的にはいかない場合が多い。終身雇用を前提に、業務のやり方が人に依存しており、現場で業務を行う人の発言権が大きい場合が多い。そのような場合、最初はどうしてもボトムアップで自動化を始めざるを得なくなる。実際、この23年の日本でのRPAブームはボトムアップでの導入にけん引されていた。ボトムアップの方が意思決定が早く、安く、小規模で始められる傾向にあり、日本において長い間紙とハンコ、FAXを使ってアナログで行われていたデスクワークをデジタル化するきっかけを担ったといわれている。実際、日本のほうが欧米よりもRPA導入率では進んでいる。

 2019年まではボトムアップでのRPA導入が進み、年商1,000億円以上の大手企業は51%※1まで導入が進んだ。しかし、同時に現場でRPAを導入しはじめて、思い通りに成果が出なかったり、より規模を拡大したりするときに課題を抱えている企業も多く出てきたようだ。RPAで業務工数を20%以上削減できたというケースは、全体で5%にも満たない※2ともいわれており、きちんとした効果を持った形でRPAを実装できている組織はまだまだ多くない。また、身の回りの作業の自動化で使っていたRPAツールや手法を、そのまま組織全体の自動化に適用できるとは限らない。なぜなら、ボトムアップでの導入時によく使われるデスクトップ型RPAツールは、自動化作業としてできることが限られていたり、中央での管理・監視・セキュリティ順守を行うための機能が付属していないことが多いためだ。そのために、デスクトップ型RPAツールを使っていた組織が、他の業務への適用を見据えて、より高機能でコスト削減効果の高いRPAツールに乗り換えたり併用したりするケースも出てきている。

 RPAの導入をトップダウンで始められる場合は、最初から組織全体への展開を見込むことが可能だ。大抵の組織では約1年をかけて組織全体に適用業務を広げていっているという。ボトムアップで導入を始めた場合でも、まず現場でRPAというものに慣れ、その次に適用業務拡大のステップに進むことができる。ただし、その際にはRPAツールや展開手法を変更して進めることを迫られる場合もあるので、あらかじめ認識しておこう。

 RPAを導入する際にまず考えるべき項目の主なものを書き出してみた。これで全部ではないが、これらボトムアップ、トップダウンどちらの手法で導入するにしても最低限考えておくべきものなので、参考にしてほしい。

 

RPA導入前に考えるべき主なチェックリスト

  • RPAの導入自体が目的になっていないか考え直す。RPAの導入が目的になってしまっている場合は、そもそも導入する前に本来の目的を定義しよう。
  • 個人的に身の回りのことのみを自動化したいのか、(最終的に)組織全体の効率をアップさせたいかを考えてみる。これを決めることで最終的な目標設定が決まってくる。
  • 利用者のパソコンのスキルレベルをチェックする。Excelマクロが組めるか、プログラミングができるか。複数の業務に広げる場合は、上記スキルが組織内で卓越している人のレベルでなく平均レベルをチェックする。他にもソフトスキルとしてプロジェクト推進の経験があるか、コミュニケーション力があるか、等。これにより、導入すべきRPAツールの種類が変わってくる。
  • RPAの対象業務が組織内である程度広く使われており横展開ができる内容かどうか考える。横展開ができる業務であるほど、導入したときの業務工数削減効果が大きく出る。

 

1 MM総研「RPA国内利用動向調査2020

アビームコンサルティング株式会社 執行役員 プリンシパル安部慶喜氏「RPA DIGITAL WORLD TOKYO 2019」講演