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デジタルトランスフォーメーションとは?そのために必要なことは?

2020/09/18 コラム, スライダー



少し前から「デジタルトランスフォーメーション (Digital Transformation: DX)」がニュース、新聞、雑誌などでも大変注目されている。あらゆるITベンダーのセミナーや提案書にもDXの文字が躍る。まるですべてのIT投資がDXを実現するためのものであるかのように。DXへの投資はいままでのIT投資と何が違うのか。また、DXを実現するには何が必要なのか。この記事ではそれを読み解いていく。

 

デジタルトランスフォーメーション (DX) の定義

はじめにデジタルトランスフォーメーションのことをなぜDXと書くのかを考えてみよう。英語の綴りから言うと、”DT” となりそうなものである。これは”X”という文字が”trans-” で始まる単語の省略形として、trans の代わりに使われることによる。Xfer = transfer、Xmit = transmitというような例がある。欧米では”DT” と書くこともよくあるようだが、日本ではDXの方が通っているようだ。

DXには決まった定義は存在しなく、いくつかの組織・団体が少しずつ異なる定義を行っている。

2004年にスウェーデンのウメオ大学のエリック・ストルターマン教授が「デジタル技術が人間の生活のあらゆる面に影響を与えることで起こる変化」と提唱したのが最初だといわれている※1。

調査会社のガートナーは、いくつかの重要なデジタル技術を活用して、強力な「デジタル・ビジネス」(仮想と物理の世界を融合して人/モノ/ビジネスが直接つながり、顧客との関係が瞬時に変化していく状態が当たり前のビジネス形態)のモデルを作り出す過程であるとしている。(ガートナーでは “デジタルビジネストランスフォーメーション” とも呼んでいる※2)

調査会社のIDCはデジタルトランスフォーメーションを「企業が第3のプラットフォーム技術(クラウド・ビッグデータ/アナリティクス・ソーシャル技術・モビリティー等)を利用して、新しい製品やサービス、新しいビジネスモデル、新しい関係を通じて価値を創出し、競争上の優位性を確立すること」と定義している。

 

DXを実現するためのテクノロジー

定義によって登場するテクノロジーも少しずつ異なっている。ガートナーの定義では「ソーシャル」「モバイル」「クラウド」「インフォメーション」「スマート・マシン」「IoT(モノのインターネット)」が取り上げられている。

IDCではクラウド・ビッグデータ/アナリティクス・ソーシャル技術・モビリティーといった「第3のプラットフォーム」に加えて、IoTや、人工知能(AI)を含む認知システム、ロボティクス、3Dプリンティング、次世代セキュリティーといった「第4の階層」である。

 

デジタルトランスフォーメーションは産業革命でもある

このように、いくつか異なる定義が存在するDXだが、共通して言えるのは「業界における既存ビジネスから脱却して、デジタル技術の活用によって新たな価値を生み出すこと」というところだろう。

似たような単語に「インダストリー4.0 (Industry 4.0: I4.0」「第四次産業革命」といった単語がある。インダストリー4.0は2011年にドイツにて生み出された言葉で、もともとは主に製造業で「スマートファクトリーの実現」をベースに、IoT、クラウド、ビッグデータ、AIを活用して生産ラインの高効率化、予知保全等を行うことである。しかし、しばしば第四次産業革命とも関連付けられる。

第四次産業革命は「石炭による蒸気機関」の利用による第一次産業革命、「石油・電力による重化学工業」「工場での大量生産」に特徴づけられる第二次産業革命、「情報通信技術の活用」による第三次産業革命に続くもので、「ロボット工学、人工知能 (AI) 、ブロックチェーン、ナノテクノロジー、バイオテクノロジー、量子コンピュータ、生物工学、モノのインターネット (IoT) 、3Dプリンター、自動運転車、仮想現実、拡張現実、複合現実などの技術革新」が含まれるとされる。あまり統一的な見解は存在しないようである。

いずれの場合も、DXで重要とされる技術革新と同じものが基盤となっていることが注目される。つまり、デジタルトランスフォーメーションの別の側面がインダストリー4.0、第四次産業革命ともつながっているといえるだろう。産業革命もまた「業界における既存ビジネスから脱却して、デジタル技術の活用によって新たな価値を生み出す」という側面があるからだ。

 

デジタイゼーション、デジタライゼーション、デジタルトランスフォーメーション

新たなビジネス価値を生み出すために、企業がデジタルトランスフォーメーションへの道筋を描く際には、既存のビジネスについて、まず紙をはじめとするのアナログな方法で行われているビジネスプロセスを、ITを使った仕組みで置き換える必要があるといわれている。しかし、これにはいくつかの段階がある。

第一段階目の「デジタイゼーション」は、アナログ情報をデジタル形式に技術的に変換することである。紙でいえば、スキャナーで取り込んでPDFの状態にすることである。デジタイゼーションは「情報」のデジタル化が対象になる。

第二段階目の「デジタライゼーション」は、デジタイゼーションによりデジタル化された情報を使って、「ビジネスプロセス」をデジタル化することである。紙を使った稟議で言えば、紙に書いてある情報をデジタル情報にしたうえで、ITシステムで組まれたワークフローシステムで実施することに相当する。デジタイゼーションの手法に関して言えば、紙を単純にPDFにするだけではデジタライゼーションは実行できず、OCRをかけてデジタル情報を抜き出す必要がある。

そして第三段階目の「デジタルトランスフォーメーション」は、「デジタライゼーションによりもたらされる社会への全体的効果」ということになる。

 

既存プロセスの置き換えはDXなのか?

だが、ここでひとつ疑問が出てくる。既存のビジネスプロセスの置き換えは本当にDXと関係があるのだろうか。別の言葉でいえば「デジタライゼーション」を行えば必ず「デジタルトランスフォーメーション」に結び付くのだろうか。

 

デジタライゼーションがDXにつながるための条件

結論から言ってしまうと、「必ず」とはならない。DXにまでに結び付くには2つの条件、①デジタル化するプロセスがDXにまでつながるポテンシャルがあり、②単純なアナログからデジタルへの置き換えでなく価値を生み出すモデルに従ってプロセスを組みかえる実装を行う、ということが必要になってくるだろう。

例えば社内稟議のプロセスで見てみると、今まで紙とハンコで行っていたプロセスをITシステムで実装したとして、紙でやっていたのと同じ重厚長大なプロセスでハンコやルールで実装するだけだと、それはDXにまでは結び付かない。せいぜい効率が少しよくなるくらいだろう。デジタル化したことを機に、信頼性を担保したまま一気にプロセスを簡素化し、かつそのデータをリアルタイムで他のシステムからすぐに認識できるようにすると、いままで集計に1カ月かかっていたことが数秒で完了するようになり、もしかすると全く新しいビジネス価値につながる可能性が出てくる。(実際につながるかどうかは、扱っているビジネスの内容にもよるだろう)

 

2025年の崖にも注意して取り組むべき

このように、デジタル化によって破壊的に状況が変革 (ディスラプション) すればDXへのチャンスは出てくるだろう。しかしプロセスのデジタル化がすべてDXにつながるわけではないことも認識しておくべきである。経済産業省も、「ITシステムの2025年の崖」という題目※3で「2025年までの間に、複雑化・ブラックボックス化した既存システムについて、廃棄や塩漬けにするもの等を仕分けしながら、必要なものについて刷新しつつ、DXを実現することにより、2030年実質GDP130兆円超の押上げの実現」を目指しているが、実施に当たってはどのプロセスでDXを目指すかは明確にしたうえで取り組んだ方が良いだろう。

また、社内システムを実装する際に、「パッケージソフトウェアを自社のプロセスに合うようにカスタマイズ」するケースもよくみられるが、これはパッケージソフトウェアが持っているベストプラクティスを放棄して既存のプロセスに戻すことを意味するため、最小限に抑えるべきである。

 

日本のデジタルトランスフォーメーションの現状

ここからは日本におけるDXの取り組みの現状と他国との比較、そしてDXを推進していくためのキーポイントについて見て行くことにする。

 

日本ではデジタルトランスフォーメーションは遅れている?

さて、日本はデジタルトランスフォーメーションで世界から遅れているという論調をよく聞くが、本当なのだろうか。実は、いくつかの調査によってこれは裏付けられている。

2019年夏に日経BP総合研究所イノベーションICTラボが実施した調査「デジタル化実態調査」※4によると、日本でDXを推進していると回答した企業は約4割にとどまる。一方、同じ質問を米国やシンガポールの企業にすると、DXを推進しているという企業は9割近くに上る。

また、スイスのビジネススクールIMDが発表した「デジタル競争力ランキング」によれば、2019年は日本が23位、一方、1位は米国、2位はシンガポール、3位はスウェーデン、韓国10位、台湾13位、中国22位ということで、アジアの主要国と比べても日本は競争力で立ち遅れていることがわかる。

同様の結果は2018年に日本マイクロソフトとIDCが行った調査でも得られている。つまり、日本は欧米、アジアの主要国と比べてもDXに遅れているという現状が浮かび上がってくる。

 

高いIT外注比率とIT内製化の人材不足、根本原因は雇用の流動性

日本がDXで世界に遅れている要因のひとつに、ITの運用方法の違いや雇用形態の違いが挙げられる。「日本には狭い国土にIBMのような巨大SI企業が4社も5社もある」と外国人によく言われるが、これは日本の多くのユーザー企業がITのノウハウを自社内で持たずにIT企業に外注してきたことが大きい。

IPAが発行しているIT人材白書2017によると、米国における IT エンジニアの雇用先のユーザー企業/IT企業の比率は 65% : 35%、一方、日本においては 28% : 72% となり、日本では IT企業にエンジニアが在籍している割合が非常に高いことがわかる。他の欧米諸国も米国に近い割合となっている。また、この割合は10年前の傾向と比べても2ポイント程度しか変わっておらず、この10年間あまり変化がない。

DXの推進にはビジネスの知識とITの知識の両方が求められるため、日本のようにこれらの知識をもった人材がばらばらに配置されていると、新しいビジネスモデルが生まれにくいという指摘がある。

また、10年前の傾向と変わっていないという指摘にもある通り、日本の雇用市場はまだまだ終身雇用が前提のところも多く流動性が低いことも、変化が遅れている原因となっている。ユーザー企業ではIT人材の不足が年々高まっているという調査が出ているが、これはつまるところ雇用流動性の低さによるところが大きい。

ITの運用形態、人材の雇用形態については早急に大きな変革が必要とされる領域だろう。

 

デジタルトランスフォーメーションを起こすのに必要なこと

最終的には、ある企業がDXにより新しい価値を生み出せるかどうかの確証はなく、起業して成功するかどうかと同様に発見的なプロセスになる。そのため、トライ&エラーを繰り返して正解を探すことになるのだが、失敗を許容するような文化も必要になってくるだろう。

また、ひとつの企業が長期にわたり存続していくためには、時代に合った業種に変わっていく必要がある。たとえば自転車を作っていた企業が馬車を作ってその後ガソリン自動車を作り、今後は電気自動車を作る必要があるなど、世界にあるいろいろな事例から学ぶこともできそうだ。過去の成功体験にこだわってはならない。

加えて、人材の流動化、IT企業とユーザー企業の間での転職の促進、留学生を含む優秀な外国人材の登用などによるIT人材の確保に加えて、最新テクノロジー(クラウド、ビッグデータ、ソーシャル、モバイル等)のビジネスモデルへの取り込み、ベンチャーの促進など、今後欧米やアジア諸国と対等にビジネスを進めていくには越えていくべき課題も多い。

 

 

※1 Eric Stolterman, Anna Croon Fors. “Information Technology and The Good Life” . Umeo University.

※2 Gartner Glossary “Digital Business Transformation”

※3 経済産業省: デジタルトランスフォーメーションに向けた研究会の報告書『DXレポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~』をとりまとめました

※4 DXサーベイ~900社の実態と課題分析

※5 日本のデジタル化はアジアでも遅れ、日本MSなど調査

※6 IPA: IT人材白書2017