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【基調講演レポート】結局、自動化とは何か? デジタル化とは何か?~RPAで考える「ウィズコロナ時代のゲームルール」で勝つ方法~

2020/11/18 コラム



 10月12日に行われたオンラインイベントリレー2020 Autumnウェビナーの基調講演では、IT Mediaの内野氏をモデレータとして、株式会社圓窓の澤氏、大阪府箕面市前市長の倉田氏、コニカミノルタジャパンの藤塚氏、オートメーション・エニウェア・ジャパンの米田氏が、新型コロナで急速に進んでいるデジタルトランスフォーメーションと自動化について解説した。

デジタル化、デジタルトランスフォーメーション (DX) とは?


IT Media内野氏

 新型コロナ禍を受けて、デジタル化、デジタルトランスフォーメーションという言葉が改めて市民権を得ている。澤氏は日本の特長として「エンジニアリソースの7080%ITベンダー側にある」ことを挙げる。これによりITのプロが「売り手」側にいるため、デジタルトランスフォーメーションというキーワードが売り物、バズワードになりやすく、売り手の都合により進められ、使い手側が求めているものでは必ずしもなくなってしまうリスクがあるという。これはAIや働き方改革も同様である。使い手側のビジネスパーソンが働き方も含めて自らアップデートしていくというマインドセットを作るところから始めることが重要だと説いた。


株式会社圓窓 澤氏

 澤氏は新型コロナ禍の状況は25年前のインターネットが登場したときの状況とよく似ている、と続けた。これによりすべての人々がデジタルトランスフォーメーションを「自分事」として考える必要があるという。テクノロジーになった瞬間に誰かに丸投げをしてはいけないのである。

 デジタルトランスフォーメーションは「デジタルを元にビジネスを構築」することが肝であり、必ずしも紙をスキャンしてコンピュータに読めるようにすればいい(=デジタル化するという手段のみ実行する) わけではない。デジタル化できるところは徹底して行った上で、最終的に働きやすさ、生きやすさを追求していくことが重要であるという。

 

RPAを導入するにはどうすればいいか

 RPAの導入についてはこれまで手段先行の弊害も多かったが、澤氏は働き方改革やAIと同様、「キーワードさえやればいい」というマジックワード化している、目的と手段がごっちゃになっている、「働き方改革/AI/RPAでなんかやろうよ」というような導入をしているところが多かった、と解説する。ソリューションをただ入れれば良くなるわけではなくて、RPAの場合は導入前に業務整理、棚卸をするという導入前プロセスがとても重要であるという。

 今回、新型コロナにより強制的にリモートワークを行わざるを得なくなったことで、実は不要だったプロセスや会議など、いろいろなものが露呈した、と澤氏は続ける。これらの気づきがとても重要であり、これらを元にRPA導入を進めると、最終的にテクノロジーが解決すべき課題「時間を生み出す (時間短縮する)」「空間の距離を埋める (移動しなくても良くする)」につなげることができる。また、新型コロナにより、全員が「デジタルシフトが必要だ」というマインドセットを共有することができたことも、RPA導入を進めるチャンスとなるはずだ。

 オートメーション・エニウェア・ジャパンの米田氏は、ロボットが画面操作を人間の代わりにやってくれるRPAは日本では2016年から2017年にかけて世界に先行してブームが来たのだが、当初は昨日に特化したところから導入が始まったため、自分のデスクトップ上のアプリケーションを自動化するにとどまってしまったケースが多かった、と解説する。本来はRPAは組織的な導入が必要であり、会社全体で重複している業務や多く行われている業務を調べて適切なところから手を付けていく必要があるのだ。このデスクトップ上の身の回りの自動化で導入するケースは2019年くらいまでで終了し、RPAが幻滅期を乗り越え本格的な普及期に入っていくにあたり、導入の仕方も見直す時期に来ているのだという。


オートメーション・エニウェア・ジャパン 米田氏

 コニカミノルタジャパンの藤塚氏は、「誰もが 作業じかんから解放され『IKIGAI』を探求できる社会」をミッションとして、RPAに取り組んでいると解説した。そして、2022年までにすべての従業員とお客様が ロボット = バディを持っている社会を目指すという。RPAは「作業じかん」の削減に効くのだが、単純に時間を減らすだけではなく、それにより働き方や生き方を変えるものにすべきだと考えている。空いた時間でクリエイティブなことを行ったり、ロボットを使っていままではできなかったこともできるようにする社会を作ることが重要であるという。


コニカミノルタジャパン 藤塚氏

 コニカミノルタの社内アンケートでRPA推進における課題を洗い出したところ、8割は人や組織依存の課題が出てきた。RPA導入においては、ツール比較のみが行われているケースが多いが、実際にはツールではなくてそれ以外のところが重要であることがわかっている。この部分は誤解されがちであるが、ツールではなく人にフォーカスすることが重要なのである。

 

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RPA導入事例: 大阪府箕面市~柔軟に考えれば業務のやり方は変えられる!

 ここでRPA導入事例として大阪府箕面市の例が紹介された。前市長の倉田氏は、「自治体は細かい事務が庁内に多くあり、そのひとつに外部の有識者を呼んで審議会をすることが多くあるが、その謝礼支払いにマイナンバーを扱う必要がある事務が各部門であることから、これを一元化するところから話が始まった」と説明した。


大阪府箕面市前市長 倉田氏

 この支払業務の数を改めて数えてみると、庁内で年間3,000件、プラスアルファの業務を合わせて4,500件あることが分かった。集約するとそれなりのボリュームがあるのだが、管理部門の担当職員がAutomation AnywhereRPAを見つけてきたのでやってみようということになった。人手で行うと約15分かかる業務が削減されることから、年間1,125時間分の業務時間が削減できるということになった。事務処理のスピード自体も速くなるため関係者にもメリットがある。これを箕面市の中ではどんどん広げていこうということになっているという。若手の中で作業チームを組んで進めている。

 澤氏も、ロボットというとSF映画で人を襲うというようなネガティブな印象を持っている人もいるが、自治体でこれを自分たちの手で実現できたのは大きな意味があるのではないかと指摘した。職員も本当にロボットに作業ができるのか不安だったようだ、と倉田氏は説明した。また、自治体の業務フローはいろいろな人から承認のハンコを貰ったりと、ガチガチに規則が決められている。自動でできるところが速くなったとしても、人の手を介するところが残ると結局は時間短縮にならないのではないかという疑問を持つ職員もいたという。これらの払しょくにある程度苦労があったという。

 これは話し合いの中で答えを見出していくしかないが、市長からも「ハンコを押さなくてもいいところは規則を変えてみたら?」という後押しをしたことで、決められたルールも止めたり変えることも念頭に職員が考え出したことで創造的なアイディアも出るようになってきたという。たとえば、ハンコにも単なる中間チェックと最後の承認を得るための2つの用途があるが、チェックは不要にできる。このようなことを自分たちで仕分けをして自分たちで考えられるようになったことは大きいと倉田氏は振り返った。

 習慣や規則としてそのまま受け入れるということは、ある意味「思考停止」の状態であり、デジタルトランスフォーメーションを推進するには、この状況を脱して、最初に「止めることを決めること」が重要となってくる、と澤氏は指摘する。現場メンバーはまず「何を止めていいかを探す」のが最初の作業となり、リーダーは挙がってきた内容を吟味して、止められるものはできる限り止めていくようにすると、うまくいくという。倉田氏は「紙、ハンコ、人が介在する作業をいかにデジタルネイティブにしていけるかを考え直す、見直す」ことがとても重要だと指摘した。

 自治体だと法令や前例主義があるが、法令は議会を通さないと変えられないが、前例については内部の規定でしかないため、上司が柔軟な頭をもって対応すれば、変えられることがたくさんあるようだ。

 RPAのツールを使う難しさはあまり問題にはならなかったという。

 

RPAプロジェクトの成功のポイントとは: 「理解」x「体制」x「継続」と使いやすいツール

 コニカミノルタジャパンの藤塚氏は、新型コロナ禍での自社での事例を紹介した。2月~3月の決算時期にコロナの影響で海外からの輸入が滞り、コピー機のパーツがそろわずに出荷ができない事態に陥った。標準のシステムでは部品が欠けないことが前提となっていたので、物流チームはExcelを使った別集計が突発的に必要になった。最初は手作業で行っていたが、これをRPA85%を自動化して年間換算で2,460時間相当の時間が削減できた。これは決算期が終わった後も活用できるものとなった。ここで重要なのは100%の自動化を目指さずに人とハイブリッドで行うことで10日程度で業務フローを構築することができたことである。現場がRPAの活用に対する「理解」をきちんとしておくことが3つある成功のポイントの1つ目である。

 コニカミノルタではあらかじめAutomation Anywhereを導入しており、中央でロボットを作るのではなく現場でロボットを作る体制になっていたことも幸いした。この「体制」を作っておくことも2つ目のポイントとなる。また、RPAは一度ロボットを作ったら終わりではなく継続的に業務改善をしてく必要があるために、中央が現場をどう「継続」的にサポートできるか、も3つ目のポイントとなる。

 続いてオートメーション・エニウェア・ジャパンの米田氏は、Automation AnywhereRPAプラットフォーム「Enterprise A2019」について解説をした。ドラッグ&ドロップでフローにアクションを追加していくだけで、プログラミングの知識があまりなくてもロジックをくみ上げることができるという。Excelを開いてメールアドレスを読み出しメールを送信するという操作も4分という短時間でロジックを作ることができる。

 RPAは全社の困りごとを解決できる必要があり、社内で使われているさまざまなアプリケーションをすべて操作できる必要がある。アプリケーションだけではなく非定型業務、紙の業務もデジタル化出来る必要があり、また何を自動化すればいいかわからない人向けに業務分析をAIでやってくれるような仕組みも必要になってくる。業務フローを現場ユーザーに実際に行ってもらいそれを録画して、それをAIが分析して課題や自動化可否の分析をしてくれる機能『Discovery Bot』もAutomation Anywhereには含まれている。このように人とロボットが役割分担をしつつ共同作業を行って課題を解決していくことが今後のキーとなってくる。

 ツールの部分はRPAプロジェクト全体の2割だが、この中で重要なのが現場でもノーコードで簡単に使える、数日で自動化が内製化でできる、リモートの環境でも使うためのスケジュール、リモート管理機能などがポイントになってくる。これらはクラウドで使うこともでき、明日からでも使える仕組みがあり、すぐに使え、かつ全社展開もできるようにスケールも可能である。

 特に、プロセスを組んでいく上での業務の可視化のところはいままでヒアリングによる手作業がメインだったので、この部分も自動化することで大きな改善が見込まれるという。この可視化ツール (Discovery Bot) を使った業務改善コンテストも行うとゲーム感覚も加わり、いままでは活躍できなかった人にも活躍できる場が提供できる可能性がある。

 

最後に

 RPAプロジェクトを始める第一歩を踏み出すにあたり、さまざまな追加情報や、先人が導入してきての成功事例・失敗事例、支援策があるため、活用してみるのもよいだろう。

 

オンラインイベントリレー2020 Autumn アーカイブ