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【講演レポート】医療現場における業務自動化事例~患者情報のシームレスな連携を実現~地方公共団体事例も合わせてご紹介

2020/11/25 コラム



 東京の蒲田に本社を構えるJBCC株式会社は、1013日に行われたオンラインイベントリレー2020 Autumnウェビナーで、オートメーション・エニウェア・ジャパンと共に、医療現場と地方自治体にて自動化を行う方法と導入事例について解説した。

 

医療現場でいくつかのシステムに分散する情報の統合にRPAが使える

 JBCC溝口氏によると、病院においては電子カルテや医事会計、部門システム間でデータ連携がされておらず、転記をしていることも多いという。いま日本は医療の現場でも労働力不足が進んでおり、単純作業については生産性と品質が高い作業ができ、人件費よりも安く導入できるRPAの導入が進んでいる。


JBCC溝口氏

 作業を行ってもらうために即戦力の人を雇うと年間で400500万円くらいのコストは覚悟しなければならないが、RPAだと100200万円でカバーできるためコストメリットもでてくる。RPAは人よりも作業が速く、24時間365日作業ができるので作業頻度をあげることも可能だ。同時にヒューマンエラーも抑えられ品質が向上するというメリットが得られる。その結果大幅な業務改善効果が得られるという。

 たとえば病床の数の変化や入退院の状況を見たいときに、ひとつのシステムですべてを見られないためにいろいろな帳票を作っているケースがある。これは単純な転記作業に当たるため毎回人手を使って作業をしていると効率が悪い。このような作業はRPAに任せることができる。夜にRPAに作業をさせておけば朝の出勤前にデータが上がっているといったこともできる。また、RPA24時間365日作業ができるため、日に1度だった作業を1時間に1回に頻度を上げることもできる。

 RPAを使うと、電子カルテシステムにアクセスしてユーザー名、パスワードも自動入力、病床数、入院予定、退院予定をシステムからExcelに転記することができる。

 

WebベースのEcruの例 (他社の電子カルテも同様に動く)

院内業務や介護・福祉事業における顧客事例

 別の例として、介護・福祉事業における事例が紹介された。この例では、施設ごとのレポートを作成するのに手作業で入力・転記・確認・集計作業を行っており煩雑になっていたという課題があった。介護報酬請求を行う際に、紙の利用記録情報をExcelに転記する必要があり、介護アプリに手作業で転記していた。締め時間に追われる作業であり、単調かつミスが起こりやすい、ダブルチェックが必要でもあるため、施設ごとに業務フローが異なり、属人化してしまっていた。単純作業のため、作業する人のモチベーションを上げることも難しかった。

 そのため、RPAを使って、各介護アプリに情報を登録していくことにした。その結果、締めを設定しなくても、情報が来たら都度入れられるようになり、人間は最後の確認をするだけになった。属人化も排除することができた。

 その他にも院内業務でさまざまな利用ケースが挙げられた。病床稼働率集計、外来患者数、売上など、病院の経営にかかわる統計情報の集計作業も、人がやると一週間や一カ月に一回しかできないが、毎日できるようになった。複数件一括登録が弱いシステムにて電子カルテのマスタ管理をRPAに任せることもできる。業務の完全自動化医療クラークによる転記作業など外注検査会社とのファイルの連携にも有効だ。薬品情報の自動更新も月1の定期的な更新を自動化することができる。サーバの死活監視/Webサーバの夜間起動チェックもRPAで行わせ、担当者にメールで自動通知することもできる。このように定期的に発生する煩雑な院内業務を自動化することが可能で、関係者のストレスを軽減することもできる。

 また、その他の医療系業務の事例がオートメーション・エニウェア・ジャパン杉原氏によって紹介された。財務・経理、人事・総務は民間企業で行われている事例も使うことができるという。財務・経理では、診療科別のレポートを出して分析したり、複数のシステムからデータを出してレポートを作る、経費伝票の処理をする、などはRPAが得意とするところである。人事だと勤怠状況の管理、旅費、交通費の計算、残業代の計算なども得意だ。病院独自のケースだと医事会計、特にふたつの会計データの突合業務ができる。セキュリティが確保されることが条件として、清算済みのデータとレセプトデータとの比較して不一致を見つける、などができるという。看護においてはアサインシフト表の管理などにも応用できる。


オートメーション・エニウェア・ジャパン杉原氏

 

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業務内容 導入できる可能性がある業務例
財務・経理 経営分析 部門別・科別損益分析 月次・年次の部門別・診療科別損益等の予実差異等の分析、レポート作成
重要指標分析 各部門システムのデータ抽出、集計、グラフ加工、レポート作成
経理 通常経費処理 各種経費伝票の起票、審査、決裁処理
総務・人事 労務管理 勤怠管理 残業、当直等の勤怠状況の管理、勤怠表の作成、旅費、交通費のチェック
給与管理 給与管理 勤怠表と残業代・当直代等の勤務手当との照合、チェック、退職金等の算出
情報管理 アクセス権限更新 人事異動に伴う電子カルテ等各種システムへのアクセス権限の更新
医事会計 請求管理 返戻・査定再請求 レセプト返戻、査定分の再請求状況のチェック、検出・メール送信
未収金管理 督促・時効管理 督促状作成、時効管理(分割含む)、未収、未請求患者(納付期限切れや往診患者等)の抽出
請求・入金管理 分割払いや過不足金の入金照合、エラー検出、入金消込登録
受付・予約 入院受付 入院患者一覧表の作成・出力・チェック・入院管理台帳の作成
請求 オーダー未取込確認 医事システムへの処方・検査オーダーデータの未取込リスト作成・チェック
請求保留 請求保留要否のチェック(生活保護受給者や保険資格有無の確認)
調定 会計データ突合 患者別精算済みデータ、医事システムのレセプトデータ照合、不一致項目の特定
調定額照合 財務会計システム調停額とレセプトの返戻、査定額との照合
看護 勤務管理 配置・夜勤管理 看護師のアサイン管理、シフト表作成(様式9、夜勤72時間、産休、育休等含む)
病床管理 空き病床管理 各病棟、診療時間でのクリニカルパスの適用状況を管理
クリニカルパス 入院バス適用管理 各病棟、診療時間でのクリニカルパスの適用状況を管理
人材育成 ラダー・研修受講管理 職層毎に必要な教育研修の受講状況の管理(内部・外部)

 

 実際の効果についても杉原氏によりいくつか紹介された。

  • 病院日誌作成業務: 救急統計、支援加算+IVR統計、新入院累計、科別患者数予定入院などのExcelへの転記作業を導入前は空いている時間で都度作業していたが、受付業務の傍ら集中して行うことができず、人により作業手順や時間のばらつきがあったが、RPAで実装したことによりミスなく昼間に実行することが可能で、従業員の休み時間や夜間の残業時間を消費することがなくなった。Excelの転記は数十秒以内で終わる。年間時間削減は最大670時間程度。
  • 資材受発注在庫管理システムの自動化: 物品が納品されたら伝票からバーコードを読み取り記録する作業。人間が13時間の作業を毎日実施する必要があった。伝票データをCSVに出力してRPAで完全自動化することで、年間720時間の時間削減を達成。
  • 会計情報エラー修正入力: 電子カルテにログインして対象データが入っていない部分をExcelから入力する業務。ロボットから実施する場合、ミスなく好きな時間に実行することができ、集中力が必要だった単純作業を従業員が行わなくてもよくなった。年間時間削減は200時間におよぶ。
  • 看護必要度分析データ作成: PlusUs医事会計、MEDI-DPCコードファインダー、電子カルテEcru3つのシステムから、看護必要度分析アプリ「カンゴッチ」に必要なデータを転記する作業。人手により行っていた作業を完全自動化することによりミスなく好きな時間に実行することが可能となった。

 

医療系システムを扱うRPAに必要な機能とは

 JBCC溝口氏は、医療業界でRPAを使って自動化を行うのに必要なRPAツールの要件について触れた。大きく分けて3点のポイントがあるという。

 1番目に、直感的にロボットが作れる、マウス操作で作成できるといった「使いやすいユーザーインターフェイス」が必要だ。最終的には現場のメンバーで生産性高く作成できる内製化の体制に持っていけるかどうかが、RPAが続くかどうかのポイントとなる。レコーダー機能があり、画面のいろいろな情報が取れることで、環境や位置が変わっていても比較的簡単に正確に動かすことができることも重要だ。RPAツールによっては10回やったら何回かエラーになって止まってしまうこともある。

 2番目は実行権限や開発権限を管理するとともに、IDやパスワードといった認証情報も一括管理できる「セキュリティ・ガバナンスの集中管理」だ。個人情報を扱っているので、知らない場所で個人情報が操作されていたりすることがないように、仕組み上できないRPAを使う必要がある。どの部署でどのロボットが稼働しているかをきちんと把握して野良ボットを防ぐことも重要だ。RPAツールによっては、基幹システムのアクセス権を持つロボットが知らない場所で動いて機密情報の流出が起こってしまうものもある。これがコントロールできないシステムはセキュリティ監査で問題になる。

 3番目は「完全自動化ができること」である。人間の手を介さずスケジュールやトリガーでロボットを動かす仕組みを実装できると、様々な業務を半リアルタイムで処理できるため、効率を大きく上げることができる。また、実行状況のリアルタイム分析を行い、異常で終わっているものを即時検知することで費用対効果を上げることもできる。

 自動化とは業務をロボットにアウトソースするようなものであり、RPAのロボットはきちんと管理ができること、そして開発・運用に内製化ができること、RPA適用前に業務自体を見直すことが求められる。

 また、これらのシステムをAutomation Anywhere Enterprise A2019を使って院内ネットワークの中でオンプレミスの構築も可能だ。JBCCではRPAプロジェクト・システムの早期立ち上げ、サーバ二重化、障害対策、サポート、システム間連携などを支援している。同時に、院内業務では紙を扱うことも多いが、IQ Botと呼ばれるAI-OCRやその他のOCRとも組み合わせが可能である。

 

地方自治体における導入事例

 オートメーション・エニウェア杉原氏より、官公庁や地方自治体による導入事例が紹介された。地方自治体ではいま事例が多くでき始めているという。

  • 箕面市: 「付属機関の委員等への報酬等の支出資料の作成」は年間約3,000件、「法定調書の作成」は年間約1,500件あり、これらの事務をRPAで自動処理することで、年間1,125時間の効率化を行う。
  • 佐世保市: 総務部門を中心に、庁内システムからのデータ出力、システムへのアクセスログ、各種アンケート集計業務等を自動化することで、5年計画で5,600時間を削減予定。
  • 相模原市: 個人番号を扱うためデスクトップ型のRDAから移行、ID&パスワード保護、ロールベースの権限設定、変更できない監査ログなどを評価した。
  • 大田区: 複数のRPAツールを試して、内製化のしやすさ、高度なセキュリティの実現が可能であることが製品選定基準。保育園関連の入所手続き業務、地方税の振り替え(eLTax)612業務で開発予定。
  • 岡山市: 滞納管理システムでの紹介業務、税システムでの入力支援業務、市ポータルでのメール転送処理の自動化等で採用。
  • 岐阜県: 教育委員会で高校無償申請手続きの自動化に採用。
  • 愛媛県: 財務、税等の基幹システム (ホスト)に対しての入力業務、仮想化環境でのメールの振り分けなどのグループウェアの活用業務に採用。
  • 盛岡市: 新型コロナ対策10万円給付金の処理の自動化に採用。
  • 宝塚市: 市税管理課における、漸近の還付業務、口座振替業務、消込業務など、税務課における予算策定業務、財政状況公表の業務等で採用。
  • 内閣府: 高度なセキュリティの実現が可能であることが製品選定基準。

 

最後に

 RPA導入はかならずしも簡単ではないが、Automation Anywhereを使うとスモールスタートではじめられる。そして重要な業務にもだんだん広げていき、自動化することを文化のようにして活用するのがよい。JBCCでは、RPAの他にクラウド、AI、高速開発、そして病院への導入実績も豊富に持っており、RPA導入の適切なご支援をすることが可能だ。

 

問い合わせ先

JBCC株式会社
業務自動化クリニック窓口

 

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