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【講演レポート】DX銘柄2020選出!コニカミノルタが語るDXの今とRPA

2021/01/20 コラム



 オフィス関連製品の国内販売会社であるコニカミノルタジャパン株式会社は、1016日に行われたオンラインイベントリレー2020 Autumnウェビナーで、コニカミノルタグループが自社実践しているデジタルトランスフォーメーションやRPAの取り組み、導入事例について解説した。

DX銘柄2020に選ばれたコニカミノルタが実践しているRPAとは

コニカミノルタにおけるRPAの位置づけ

 RPAにかかわり始めてからもう3年になるというコニカミノルタジャパン武藤氏。コニカミノルタではRPAはひとつのツールとして位置付けるより「デジタルワークフォース」としての「人」として取り扱っていると紹介した。


コニカミノルタジャパン武藤氏

 デジタルワークフォースとは、様々なテクノロジーを組み合わせて人の代わりに業務を遂行する新たなソーシングモデルであると位置づけており、RPAはデジタルワークフォース (ロボット社員)の手であり、目はOCR、頭はAI、耳は音声認識、口はChatbotに相当するものだ。コニカミノルタのデジタルワークフォースの名前は「Ieyasu君」、社員番号もついていて入社3年目、24時間働いているという。

 業務遂行は、デジタルワークフォースの他に、アウトソース、シェアードサービスも含めて最適なリソースフォーメーションを考えたうえで、社内人財がやるべきことは人がやり、社内人財がやらなくてもいいことは、デジタルワークフォースやその他のソーシングモデルでやってもらうことを考えるべきだ。

 

コニカミノルタにおける自社実践の歩み

 コニカミノルタジャパンでは、RPAを始めた2017年よりも前、7年以上前から働き方改革の取り組みをやっており、オフィスの移転や紙の削減をやってきている。このような自社実践のナレッジを元に、経験してきた失敗については他社に同じ轍を踏んでもらわないようにナレッジ提供サービスをAutomation Anywhereのリセラーとしても行っている。

 いままで年間約5万時間のRPAを活用した業務削減時間を達成し、600人以上の社員がRPA教育を受講、デジタルワークフォースの数は約380となっている。 また、DX銘柄2020に選定され、持っている様々なソリューションを使ってデジタルトランスフォーメーション (DX) も推進している。新型コロナ禍で生産性が落ちる企業も多い中、コニカミノルタジャパンでは79%が生産性に変化なし、もしくは向上している。(日本生産性本部の調査では34%が向上、他は少し落ちているところが多いという調査結果が出ている)

 ただし、当初は年間十数万時間削減できるだろうという目標を掲げていたが、意外と思うように進まない部門や業務もあったり、ワークショップで100以上の改善項目が出てきたのに1年半RPAの進捗が見られなかった部門があったりと、いろいろな苦労や挫折も経験している。

 

DX推進のフェーズとRPA活用による効果

 経済産業省で採用されている定義によると (もともとはIDCの定義)、デジタルトランスフォーメーション(DX)とは、企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを元に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立することである。DXの推進には3つのフェーズが存在する。

  • フェーズ1: デジタイゼーション – ERPSCMPLMなどを利用して業務プロセスを強化する
  • フェーズ2: デジタライゼーション – RPAAI-OCRAI-Chatbot等を活用して業務を置き換える
  • フェーズ3: デジタルトランスフォーメーション 「競争上の優位性を確立した状態」は企業ごとにさまざまな解が出てくる

 ここでフェーズ12は生産性の向上 (インプットの最適化)、フェーズ3は付加価値の強化 (アウトプットの最大化)であるのがポイントである。つまりフェーズ1/2とフェーズ3ではKPI/KGIが変わってくるはずであり、フェーズ3ROIではない指標が必要であると武藤氏は解説する。フェーズ3に行く前のフェーズ12DXの用意ができるまでのところをまずしっかり取り組む必要がある。

 DXのフェーズ2を推進するにあたりRPAの活用が有効である。DXRPAは切っても切れない関係にある。また、単純な定型作業の自動化から始まり、非定型作業の自動化、高度な自律化等RPAの中でもより高度なクラスの技術や使い方を推進しながらDX推進につなげていくことになるという。

 

DXRPAの推進に共通する3つのポイント

 武藤氏は、DX推進とRPA推進のポイントとして「準備」x「継続」x「ヒト」の3つを抑えることが大切だと解説する。

 

準備は大事~新型コロナの事業継続対策としても機能した

 最初のポイントとして、先に紹介されたように新型コロナ禍でも生産性が落ちない働き方を実践するには、事件が発生する前に準備をして備えておくことがとても重要であるということが示された。コニカミノルタでは働き方改革に向けて数々の準備をあらかじめしてきたことに加え、RPAが普及しだす前から取り組みをしてきていることが挙げられた。そのため、リモートワーク下でも会社に行かなくてもロボット社員が業務をまわしてくれる環境が用意できた。

 RPA導入をするとBCP対策にもなるという。たとえば自然災害リスクは「クラウドRPAを使っておくことで業務が止まらない環境が作れる」、オペレーションリスクやヒューマンエラー解消に「RPAを使った自動化」が有効、不正・内部統制リスクには「RPAを使った人を介さないオペレーションで取り組む」、人事・労務リスク (労働力不足の解消)、労働安全衛生リスク (単純作業からの解放)といったことにもRPAが有効であり、ROI以外のところにも効果があるという。

 コニカミノルタがRPAをあらかじめ導入していたことにより回避できた具体例として、海外からの在庫調整があり新型コロナにより物流制限がかかった環境下でのオペレーションをRPAで乗り切った事例が紹介された。突発的な制限のために期末だったこともあり処理が滞り影響が出始めていたためRPA化に緊急着手。100%の自動化を求めず、人とロボットの協業をベースに1.5週で効果刈り取りが可能なロボットを稼働させることができたという。

 RPAを導入済みで基盤の準備がされていた、RPA人材育成も準備ができていた、RPA推進体制も構築済みだった、の3つがそろっていたからこそ、この事例は実現ができた。年間2,460時間相当の効果が出たという。

 

継続はチカラなり~ひとつひとつの取り組みの積み重ねを続ける必要あり

 コニカミノルタジャパンでは、先にも紹介した通り2013年から働き方改革プロジェクトを始めており、紙に縛られない働き方、場所に縛られない働き方を実践してきている。また、2017年からRPA事務局立ち上げ、グローバル展開、社内認定制度運用開始を行ってきている。

 何かひとつのソリューションを入れたから解決するわけではなく、一つ一つの取り組みの積み重ねを「泥臭く」続けていくことが重要となってくる。そして継続に必要なこととして、定期的に課題の見える化 (アンケート等)、定性情報の定量化、推進機能と現場のタッチポイントが必要となってくる。DX推進もRPA推進もツールやインフラだけ用意してもダメで、推進側と現場で会話をして相互理解を深めながら進める必要があるという。

 

人材~大切にしたいのは、道具よりも使うヒト

 そして、最後に「大切にしたいのは、道具よりも使うヒト」であるということを武藤氏は強調した。DXとは顧客体験と従業員体験の徹底的な追及であり、従業員も含めてDXにかかわるすべての人が幸せになるように進めるべきであるという。コニカミノルタ社内でも、課題提起型デジタルカンパニーを担う人材育成をするにはRPAが欠かせないと認識しているという。つまり顧客にDX提案をできるようになるには、自らも実践して良さを体現する必要があるということだ。

 そしてRPADX推進でスターになる人が、意外なところから出てくることがあるという。元々技術や知識がない人材でも、RPADXの推進を担うことで、社内人財を成長させることもできるという。人材を外からとるのもありだが、社内人材を育てていく観点も必要であるということだ。実際にあった話として、経営管理機能所属だった人が最初はあまりITに詳しくなく未経験だったが、社内トップクラスのロボマスターに変貌した事例が紹介された。

 

最後に

 コニカミノルタが経験してきたことを踏まえ、同じ轍を踏まないように、RPAツールベンダーが教えてくれない泥臭いところも含めてご支援するサービスを用意している。PoC、運用支援、運用立て直し、導入支援、RPAライセンス販売、AI-OCRや、ハンズオン、ウェビナー、有識者とインタラクティブに会話できる会、RPAの最新情報をお届けするチャンネルなどさまざまなものがあるので、活用してみるのもありだろう。

 また、コニカミノルタではRPAツールにAutomation Anywhereを使っている。RPAツール選定時はデスクトップ型RPAと他の2種類のサーバ型RPAと比較したが、ユーザー部門がどれだけ使いやすいか、どれだけ管理がしやすいか、今後の展開がどれくらい期待できるかという項目で評価して最終的に決定した。業界初のクラウドRPAEnterprise A2019」や自動化の自動化を実施する「Discovery Bot」等、日々進化している機能に期待しているという。

 

問い合わせ先
コニカミノルタジャパン株式会社

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