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Power Automate Desktopを使うべきユーザー、使うべきでないユーザーとは

2021/03/22 コラム, スライダー



3月頭に、Windows 10の全ユーザー向けに追加費用無しで利用可能になるという発表があったMicrosoft Power Automate Desktop。いままでロボティック・プロセス・オートメーション (RPA) が高額で手が届かなかったユーザーも新たにRPAに興味を持つこともあるだろうし、他社のRPA製品の導入を検討中だったユーザーが、Power Automate Desktopも候補に入れて検証してみようということもあるだろう。この記事では、このようなユーザーのために、Power Automate Desktopにいま手を出すべきかどうかの簡単な判断基準を提供する。

Power Automate Desktopに手を出すべきユーザー

個人としてRPAに取り組んでみようと思っているユーザー

RPAに前から興味があった、もしくは今回の盛り上がりをきっかけに興味を持った、というユーザーはぜひまずは無料版でPower Automate Desktopを試してみてほしい。初歩的な利用方法であれば追加費用がかからなかったり、有料版を使ったとしても、少人数で使うのであればそんなに高額にならないため、導入のハードルが劇的に下がる。かといって、「安かろう、悪かろう」というわけでもなく、日本語への対応も含め、初心者向けのユーザーインターフェイスでありながら、他の主要RPA製品とそん色なくさまざまなアプリケーションを強力に動かすことができるようになっており、触ってみる価値は十分にあるだろう。

 

クラウドサービスとの連携に重点を置いている場合

Power Automate Desktopの他のRPA製品にはない特長として、もともとあったPower AutomateのiPaaS機能 (クラウドサービスをAPIベースで連携させるフロー)が活用できることである。これは、たとえば「Microsoft 365で予定が入ったらメールを送信する」のような、クラウドアプリの特定のイベントによってアクションを起こすような場合が相当する。有料版であれば400種類以上のクラウドサービスと連携できるテンプレートがあらかじめ用意されているため、連携がしやすいだろう。

 

技術力がありいろいろ試してみたい場合

Power Automate Desktopには、周辺サービスとしてAI Builderと呼ばれる、紙の情報をデジタル化するためのAIモデルが利用できる。有料ユーザーであれば連携させることが可能である。名刺リーダーモデル、領収書処理モデル、テキスト認識モデル、カテゴリ分類モデル、フォーム処理モデルのようなAI-OCRと似たような機能から、テキスト翻訳モデル、感情分析モデル、物体検出モデルなど、必ずしもAI-OCRの領域ではないAIのモデルまで扱うことができるため、使い方次第ではいろいろなことができそうである。実用的な性能面で行けばOCR専業ベンダーの認識精度までは届かない可能性があるものの、自分で工夫できる点は大きいだろう。このような工夫ができるくらい技術力がある、または勉強してみようというユーザーは、チャレンジしてみる価値があるだろう。

 

Power Automate Desktopに手を出すべきでないユーザー

一方、このような条件の場合は、わざわざ検証のために手を出さないほうがいいというパターンも存在する。

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オンプレミス環境のみが許容されるユーザー

たとえば官公庁、地方自治体、金融機関や個人情報を扱う業務など、オンプレミス環境しか選択肢にないユーザーについては、最初からPower Automate Desktopを検討しなくていい。Power Automate Desktopはどのプランでもインターネット環境につながることが必須であり、デスクトップPCにインストールしたソフトウェアも常にクラウドと通信しないと動作しないからだ。

 

複数の人数でロボットを作る想定のユーザー

ある程度組織内でスケールして使ったり、組織横断で単一のRPA製品を使ってRPA推進部門が中心となってRPAを広げていくような動きをする場合、現状のPower Automate Desktop機能だと実は物足りないところがある。有料版の場合、組織としての管理機能がついてきたり、有人型、無人型のロボット実行、スケジュール、トリガーなどいろいろ豊富に機能が使えるようになるのだが、他のユーザーが作ったロボットも含めて組織の全ロボットを一覧する方法がいまのところない。ロボットの共有をユーザー同士で行うことはできるのだが、いまのところロボット毎に共有相手を指定して共有操作を行う必要があるため、事実上一覧が難しい。Microsoft 365を使っているユーザーであれば、組織のSharePointのドキュメントライブラリ上にある全ファイルは一覧できるが、個人のOneDrive内のファイルは、個人がいちいち共有をしてくれないとみられないのと似ている。

組織内のロボット一覧機能は将来的にはロードマップに入っているようであるが、現時点では対応していないため、組織的にRPAを広げていくことを計画している場合、現時点ではお勧めできない。

 

IT部門との調整が難しい場合

これは割と落とし穴だが、Power Automate DesktopはインターネットにつながるWindows 10であれば気軽に導入できると思われるかもしれない。ただし、企業や組織で使う場合は、前提として「職場または学校アカウント」を使うことになる。これは、マイクロソフトのクラウドサービスを組織で使う場合に通常使われるIDであるが、多くの組織ではすでにMicrosoft 365を導入していたりして組織で使っていたり、将来的に導入計画がある場合があるため、従業員が勝手に取ることは推奨されない。会社や組織の名前で一度取ってしまうと、後からIT部門が同じ名前で取れないなどの不具合が起こりよく問題になることがある。そのため、IT部門と調整をして会社や組織のアカウントに追加でPower Automate Desktopを導入することが前提となってくるのだ。

もちろんこのようなことを気にしない場合は職場と学校アカウントを取得してしまうこともできる。しかしその場合、すでに別の職場と学校アカウントでMicrosoft 365などを使っている場合、連携するOfficeアプリなどでアカウントが二重になって思わぬ誤操作をすることに繋がったりする。職場や学校のアカウントではなく、個人向けのマイクロソフトアカウントでサインアップをすることもできるが、この場合は無償版の利用に限られ、有料版にアップグレードをすることはできない。また、組織内での連携機能は使えない。

尚、マイクロソフトアカウントでPower Automate Desktopを使うのであれば、中小企業の場合はUiPath Community EditionやAutomation Anywhere Community Editionのような老舗RPAベンダーの無料版を使う選択肢もある。また、他のRPA製品の場合は、職場と学校アカウントは使わないため、IT部門とユーザーアカウントの調整をしなくても導入できるだろう。

 

まとめ

以上、Power Automate Desktopに手を出すべきユーザー、手を出すべきでないユーザーについてそれぞれ3つのシナリオについて簡単に見てきた。Power Automate Desktopを検証すべきか悩んでいる際の参考になれば幸いである。