マイクロソフトがSoftomotive社を買収して、Power Automate Desktopとして基本機能をWindows 10ユーザーに追加費用無しで公開したことで再びRPAが話題になっている。また、マイクロソフトに加えて、ここ2年でService Now、IBM、SAPといった大手アプリベンダーもRPAベンダーを買収する動きが活発化している。これらのアプリベンダー型RPAと独立系/汎用型RPAについて、それぞれ特徴を見てみよう。
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主要アプリベンダーのRPA買収
SAP Intelligent RPA
ERPのグローバル大手のSAPは、2018年11月にフランスのContextorを買収してSAP Cloud Platform、SAP Leonardo Machine Learning、SAP S/P HANA、および他の主要製品への組み込みを目指している。2019年5月に「SAP Intelligent RPA」として公開された。
SAP Intelligent RPAは、自動化プロセスを設計するための Desktop Studio、自動化を調整するための Cloud Factory、自動化を実行するための Desktop Agentという3つのコンポーネントから成っており、クラウド部分とオンプレミス部分があるハイブリッド型RPAソリューションとなっている。
クラウド部分はSAP Cloud Platformと統合されており、SAP Intelligent RPA StoreやSAP Intelligent RPA Core SDKの形で、特にSAPアプリケーション (S/4 HANAにおけるSAP GUI等)との連携部分について2020年12月からモジュールが公開されており、SAPアプリケーション周りのデータのやり取りを自動化、効率化し、Conversational AIによるチャットボット連携もできるようにしている。有人型、無人型の両方のソリューションがある。
IBM Cloud Pak for Automation
IBMは2020年半ばまでオートメーション・エニウェアと提携して同社のOEM製品を販売していたが、2020年7月にブラジルのWDG Automation買収を発表した。これを、IBM Cloud Pak for Automationに統合し、AIからのインサイトも得ながら業務自動化ができるソリューションを計画している。
加えて、IT運用を自動化する機能、特にWatson AIOpsとIBM Cloud Pak for Multicloud ManagementにもWDG Automation RPAの機能を統合する予定だという。このRPAはIBM Cloud Integration製品群に加わり、オンプレミス、パブリック・クラウド、プライベート・クラウド環境でIBM Cloud Pak for Automationを通じて利用できるようになる予定ということだ。
ServiceNowのIntellibot買収
そして、最も直近の動きがServiceNowだ。ServiceNowは企業向けサービスマネジメントクラウドの SaaS プロバイダであり、体系的になっていない仕事を自動ワークフローに置き換えることで、よりスマートに繋がる企業に進化させることを目的としてソリューション提供をしている。今回、この3月にインドのRPAスタートアップであるIntellibotの買収を発表した。また、同社は3月11日にもローコードワークフロー開発ツールの新機能について発表をしたばかりである。ServiceNowの発表によると、Automation Anywhere、UiPath、Blue PrismなどのRPA専業ベンダーとの連携は続けつつ、自社のプラットフォームで自動化作業を構築する場合には、これらの同社提供ツールの利用を勧めるとしている。
RPAベンダーとしての市場での評価
以上、3社の大手アプリベンダーの動向を見てきたが、簡単に総括すると、自社アプリと連携する部分に特別な機能やしかけを設けることで、自社アプリ周辺のサービス連携をローコード化するためのツールと位置付けているところが多い。一方、RPAツールなので、自社アプリ周辺に限らず、汎用的に使うことも可能ではある。
ここで、調査会社によるベンダー評価の例を見てみることにする。たとえば直近で新しい情報が出ているForrester Researchの評価であるが、戦略、オファリング、市場内でのプレゼンスの3つで主要RPAベンダーを評価している。これを見てみると、上位の評価 (Leaders) を受けているのは、UiPath、Automation Anywhereといったグローバル専業ベンダーである。また、今回からマイクロソフトはLeadersに初登場している。一方、SAPはLeadersの位置からは左下にはずれるStrong Performersに位置しており、その他の会社は評価対象にすら入っていない。
また、他にも類似の調査がいくつかあるが、傾向はだいたい同じである。
汎用RPAとしてさまざまなシステムで使うことを考えるのであれば、やはりLeadersポジションのベンダーを検討しておくのが無難である。もしくは、複数のRPAツールを使っている企業も約半数あるといわれており、組織全体で活用する汎用RPAと、特定のシステム周辺で使う目的特化型RPAとで使い分けるという手法も現実には存在する。
まとめ
以上からまとめてみると、汎用RPAとして使うのか、特定の業務アプリが自社内にあって、その周りで自動化をしたいのかによって考え方が異なってくる。汎用的に組織内で広く使うのであれば、業務アプリごとに癖が少なく定評があるRPAツールを組織内のデファクトスタンダードとして選んでおくのが無難である。
特定のアプリがあってその周辺で重点的に自動化をしたい場合は、汎用RPAに加えて、そのアプリの周辺だけは特化型RPAで固める、という手法もあり得る。