身近な業務から始めるデジタル化のポイント3選

2021/06/02 コラム, スライダー



 東京の蒲田に本社を構えるJBCC株式会社は、クラウドサービス、自動化の基盤、超高速開発、セキュリティなどのソリューションを重点的に提供している。311日に行われたオンラインイベントリレー2021 Springウェビナーのセッションでは、JBCCビジネスソリューション事業部RPAエバンジェリストの溝口氏が身近な業務から始めるデジタル化のポイントについて解説した。

お客様の声から聞く業務課題

 

JBCC溝口氏

 コロナ前と後で仕事の仕方はかなり変わった。JBCC本社でも、コロナ前は全員が出社してフリースペースの至るところに座って業務を行っていたのが、今年は仕事初めの日でもほとんど人がいない状態になっている。出社率も15%くらいになっており、残りの社員は在宅勤務や、営業は直接顧客訪問をしたりサテライトオフィスで勤務をしたりということになっている。また、この状態でも出社しないといけない従業員が一定数おり、後ほど出てくる紙とデジタル化が関係している。

 さて、デジタル化のキーワードの一つである「テレワーク」であるが、最近の調査における従業員規模別のテレワーク実施率を見てみると、企業規模が大きくなるにつれてテレワーク率は上がっていることがわかる。10,000人以上では45%なのに対し、100人未満では13%となっている。製造業の工場やエッセンシャルワーカーはどうしても現場でないと仕事ができないが、企業規模が大きくなると事務方の仕事を行う人も一定割合で増えてくるため、規模とテレワーク率の相関は納得がいく。

 一方、JBCCで去年一年に取ったウェビナーのアンケートでは、ウェビナーの視聴は6割が会社からとなっていた。このことから、オフィスに出社している企業もまだまだ多いことが伺える。また、ウェビナーのアンケートから見えてくる声としては、「属人化」「業務量が多い」「入力ミス」「テレワーク」「紙」「Excel」などが挙がる。

 本日は、これらの中で多い傾向が出ている「紙」「コミュニケーション」「Excel」について見ていく。

 

課題解決のポイント

 今後、デジタル化の波は政府主導でどんどん進んでいくと思われる。たとえば、紙や印鑑がいらない業務を増やしたり、デジタル庁の設置により法整備も今後加速するものと思われる。そのため、いつまでも紙やFAXを使って現地で事務処理をするということはやり方を変えていく必要があるだろう。

 業務のデジタル化の際にまず問題になるのが「紙」問題であり、また仕事をオフィス以外の場所でやる場合に「コミュニケーション」や「セキュリティ」の問題が挙がってくる。人が介在するとミスも起こるため、ミス低減のために自動化も行う必要がある。

 

紙業務対応のポイント

 業務が紙で行われている以上、データの活用ができないままになってしまう。また、FAXで注文処理を受信するために出勤している企業もいる。そして、一日中紙の伝票をチェックしてシステムに転記するということが行われる。これ自体は間違えてはいけないとても重要な業務だが、仕事というより作業であり、社員の将来のスキルアップにもつながらない。

 これに対する解決策として2つのソリューションの選択肢をご提案できる。ひとつはFAX自体をデジタル化するサービスだ。FAXに専用アダプタをつけることにより、FAXで受信したイメージをCSV/PDF化してクラウドに自動保存することができるため、これをRPAとも組み合わせて場所を選ばない自動化処理を行うことが可能となる。

 もうひとつは、AI-OCRを使う方法だ。帳票や手書き文字を読み取りデジタル化する機能だ。AIがついていて学習することで精度があがっていったり、テンプレートに従った自動仕分けが可能である。これとRPAを組み合わせることで業務自動化が進む。

 AI-OCRの例として、紙の納品書をスキャナで読み込み、AI-OCRにかけてデータをデジタル化することが考えられる。しかしその場合、AI-OCRの読み取り精度は100%ではないので、OCR による読み取り結果を人が再度チェックするということが発生してしまう。この伝票整合性をRPAで作成することにより、数量 x 単価 = 金額、金額の合計は総合計になる、など、読み取った数字を検算する処理を自動化できるため、人間が本当にチェックしないといけない枚数を減らすことができる。たとえば読み取り精度が98%の場合、500枚の伝票を処理する場合、整合性が合わなかった10枚だけRPAが人間にメールで通知して教えてくれる。人間はその10枚だけを目検チェックすれば良いことになる。

 また、データ化された情報は、RPAによる登録ロボを通して基幹システムに入力していくことができる。この際にも整合性チェックを入れることで目検チェックが必要なものだけ人間に教えてくれるようにできるため、イレギュラー対応が必要なところの対応のみに集中できる。

 実際に導入されたお客様は、毎日午前中3時間、3名体制で行っていた仕入計上処理 (月約180時間)が、この処理の導入後は、担当者2名、作業時間1.5時間 (月約60時間)で済むようになり、月当たり120時間の削減を実現した。

 このようにAI-OCRRPAをセットで活用することで、実際に目に見える業務改善を行える可能性が高い。

 

問い合わせ対応のポイント

 コミュニケーション問題は問い合わせ対応に焦点を当てたい。問い合わせとひとことに言っても色々あるだろう。社内の経理・総務部門への問い合わせが集中する場合がある。特に規模が大きくない企業では、対応するスタッフが1-2名のところもある。掲示板などで告知する方法もあるが、電話したほうが早いと考える従業員も多いため、同じ質問に終日対応するようなことも発生する。これも仕事というより作業であり、大切な業務だが社員のスキルアップにはならないため、改善する必要がある業務と言えよう。

 解決策としてはチャットボットを使う手がある。テキストでAIによる柔軟な対応が可能であり、業務問い合わせ (FAQ)、資料検索、在庫照会などにチャットボットを活用することができる。ボットがわからないところは選択肢を提示したりとインタラクティブなやり取りにより回答精度を高めることもできる。また、社外からスマホからも気軽に問い合わせが可能だ。

 社外から情報を参照する場合は、社外に機密情報がもれないように、社外から参照できる一部の情報のみを見られるようにしておく必要がある。マスターが更新されるたびにRPAが一部の情報のみを社外からアクセスできる場所に置いておくような運用をすることで、社外からの問い合わせにも自動的に効率的に対応できる。

 

Excel対応のポイント

 Excelはほぼすべての企業で使われていると思うが、作業時間と入力ミスが問題となる場合がある。フォーマットの違いによるデータ作成、転記時のミス、情報共有時・Excelバージョン違いによるトラブルが発生したりする。

 担当者は、勤怠システム、健診システム、検温データなどを用途別、部門別に加工したり統合したりと、同じようなデータを使ったExcelデータの加工を毎回何種類も作っていることがある。この処理も仕事というより作業で、大切な業務だが社員のスキルアップにはならない、100%正しく処理して当たり前、の作業である。

 この処理もRPAにやらせることで自動的に行うことが可能だ。Automation Anywhereの例で行くと、ロボットやロジックはサーバー上にあり、データはローカルのExcelファイルをローカルで扱うことが可能だ。ExcelマクロをRPAから呼び出すことも可能だ。数分で処理が完了するため、何種類のもフォーマットを始業前に自動で作らせておくことができれば、担当者は加工をしなくても欲しいフォーマットを手に入れることができる。

 また、Excelの自動化と併せて、Excel管理を行わない仕組みづくりも重要になってくる。kintoneなど、クラウド上でデータ管理できる仕組みと組み合わせることで、台帳管理はExcelではなくクラウド上で行い、データ加工や入力だけExcelRPAで行うようなこともできる。

 

RPAプロジェクトを実施する際のポイント

 RPAツール自体は簡単にロボットが作れるものも多いが、それで自動化プロジェクトがうまくいくわけではない。現場部門が性善説でロボットをどんどん作った結果、よく止まるロボットができてしまったり、管理ができなくなったり、思うようにロボットが増えなかったりすることがある。RPAもシステム開発に近い手法が求められるため、プロセスの設計、開発、テスト、本番稼働といったプロジェクトマネジメントが必要になる。スキルとしては、ビジネスモデリングスキル (可視化、正しく認識できる力)、設計・開発スキル (要件を正確に実装する力、レビューする仕組み)、プロジェクトマネジメントスキル (プロジェクトの推進、企画、人員育成、コスト管理など) が必要になってくる。つまりRPAにもQCD (品質、コスト、納期)の管理が必要である。これに強い人員がプロジェクトに入っている必要がある。

 RPAの作り方についても、資格情報をロボットにハードコードしてしまうと、ID・パスワード漏洩のリスクが出てしまう。そのため、細かい権限管理を行い、リスクを小さくする必要がある。オートメーション・エニウェアは、ID・パスワード管理、権限管理がとても優れている。オートメーション・エニウェアのCredential Vault機能を使えば、開発者に対しID・パスワードを開示しなくてもロボットの作成から運用までを行うことが可能だ。

 

最後に

 RPAは単純なツールではなく、顧客のビジネスモデルの変革や仕事のやり方を変える方法のご提案や、運用方法と一緒に導入することが不可欠となる。JBCCでは、RPA導入時の無料相談会である「業務自動化クリニック」やその後のPoC、環境構築、トレーニング、活用促進、運用保守といったRPAの運用をご支援する仕組みの他に、RPAに留まらないクラウド、AI、超高速開発なども扱っており、RPA導入の適切なご支援をすることが可能だ。

 

問い合わせ先

JBCC株式会社
業務自動化クリニック窓口