東京都港区に本社を構えるビッグツリーテクノロジー&コンサルティングは、DXに関するコンサルティングやシステム開発の支援を行っている。3月11日に行われたオンラインイベントリレー2021 Springウェビナーのセッションでは、ビッグツリーテクノロジー&コンサルティングRPA事業部の竹中氏が、RPA効果を継続するためのポイントについて解説した。
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最近のRPA市場の動向
ビッグツリーテクノロジー&コンサルティング竹中氏
ビッグツリーテクノロジー&コンサルティングでは、2016年よりRPA事業を開始しており、オートメーション・エニウェアをはじめとする7種類のRPA製品で合計80社500業務以上のRPA導入実績がある。竹中氏によると、一時期「幻滅期」に入ったとも言われたRPAの導入状況もこのフェーズを抜けつつあり、普及に向けて市場が引き続き伸びているという。また、当初は「デスクトップ型RPA」を中心に推進する顧客が多かったが、最近は「サーバ型RPA」にシフトしており、いまはサーバ型RPAを中心に選定が進んでいることが多いという。
サーバ型RPAの特徴は、「管理機能がある」というのが一番のメリットである。管理ができることによって、セキュリティを担保しつつ多くのロボットが稼働可能であることである。デスクトップ型RPAは安価でありスモールスタートが可能であったため初期に普及したが、効果が認められてある程度ライセンス費用が掛かっても投資されるようになってきているという。
RPA製品の最近の進化
竹中氏は、RPAの大手ベンダーは、RPA以外の領域にかなり力を入れてきていると解説した。主に4つの領域、「プロセスマイニング/タスクマイニング」「効果測定・分析 (BI)」「人の作業支援 (デジタルアシスタント)」「クラウド化」に取り組んでいるベンダーが多いようだ。
プロセスマイニングとタスクマイニング
プロセスマイニングとタスクマイニングの違いであるが、全社は業務全体を分析するもの、後者はその中で一人で行っている一部の作業の分析、ということである。たとえば受注管理システムの分析であれば、プロセスマイニングは受注管理システムを使った業務の全体の分析、タスクマイニングはPC上の出荷作業に絞った分析、という具合だ。RPAでは、プロセスマイニングは業務整理やBPRが必要な状況で実施し、タスクマイニングはRPA化の前工程として行う業務手順整理として使う、といった使い分けが行われる。
プロセスマイニングでは、どのような手順でどのような人がどれだけの工程を踏んで実施しているかを明らかにする。業務でシステムに保管されている人の情報、時間、など特定可能な情報をツールに入力することで、プロセスフローとその発生件数、所要時間を視覚化し、全体の流れやイレギュラータスクの内容特定や頻度を見ることができる。これにより、BPRの必要有無や自動化範囲の判断が可能である。ただし、費用が高くて導入にハードルがあることがある。
一方、タスクマイニングでは、ユーザーの実際の手順を記録して手順書作成を行い、業務手順を明確にするために使われる。ツールを使いながら作業を行うことで、ツールから自動的に作業の流れの画面ショットを取得したり、オートメーション・エニウェアのDiscovery Botなどでは、自動的にロボットを出力したりすることもできる。
デジタルアシスタント
最近のRPAではデジタルアシスタントを構築することもできる。デジタルアシスタントでは、いままでRPAだけでは対応できなかった、人の作業を支援する機能となっている。デジタルアシスタントでは、人と対話用の画面やRPAの実行条件の指定画面を構築することができる。デジタルアシスタントが人から受けた指示を元に、RPAを起動したり、実行結果を人に表示したりすることができる。オートメーション・エニウェアのデジタルアシスタント機能であるAARI (Automation Anywhere Robotic Interface)の一番のメリットは、PCだけではなくてモバイルの端末も使えることである、と竹中氏は指摘する。多忙な人であっても、席にいなくても少しの時間で承認作業やRPAの実行を行うことができ、効率化を行える。また、AARIではExcel、メール、Teamsと連携して、これらで発生するイベントをトリガーにしてデジタルアシスタントを実行することができる。
デジタルアシスタントを使うと、2つのRPAロボットをつなぐこともできる。システムに登録するRPAと、承認後に処理を行うRPAと2つがあり、間に人の判断が入っている場合があり、このような時はRPAだけだと自動化が分断されてしまう。デジタルアシスタントを挟むことで、これらの2つの自動化プロセスをつなぐことができる。
ちなみに、AARIは最近、無料のCommunity Editionでも利用できるようになった。
RPAの周辺ソリューション
AI-OCRソリューションとRPAとの連携
RPAと連携する他のソリューションとして、AI-OCRの市場が特に拡大している、竹中氏は続ける。紙業務が従来とても多く、OCRや電子署名、ペーパーレスソリューションなどと共に、採用が拡大している。オートメーション・エニウェアのAI-OCRソリューションにあたるIQ Botでは、複数のOCRエンジンが使えるのが最大と特徴であり、Cogent Labs社のTegakiによってさらに手書き文字の読み取りの精度が上がったのが最近の話題である。
人工知能とRPAとの連携
他の組み合わせソリューションとしては、人工知能 (AI)との組み合わせがある。AIによる予測とRPAによる実績データ突合や、自然言語処理とRPAを組み合わせた応答処理などがよく用いられる。AIの機能はAPIで提供されることが多く、RPAから機能を呼び出すことで賢い処理を行うことが可能になる。AIの精度は年々進化しているため、AIの進化と共にRPAと組み合わせて使われていくユースケースも増えていくと思われる。
プロセスマイニング
前述のプロセスマイニングであるが、RPAと一緒に使われることが想定される。ただ、日本ではシステムのカスタマイズが多く、また業務の規模が小さい、ということが多く、コストとの兼ね合いでまだあまり導入が進んでいない分野である。
ローコード/ノーコード
システム構築を、コードをあまり、または全く使わずに行うソリューションのこと。これらは開発者だけではなく一般ユーザーの利用も視野に入れた製品であり、RPAとも似ている。一見するとRPAと競合するようにも見えるのであるが、うまく使い分けるのがRPA推進のカギとなっている。
どちらかというとローコード/ノーコードは特定のパッケージを中心に簡単なデータ連携をするものが多く、RPAはより汎用的な自動化が可能である。ローコード/ノーコードは無償だったり安価のものが多いので、ポイントごとに利用してRPAと連携することで、全体としてうまく自動化することができるだろう。
Microsoft Power Automate DesktopがWindows 10ユーザーに無償公開
3月2日にマイクロソフトから発表され、かなり話題になったが、もともとSlack、Power BI、Google Driveなどのクラウド製品を中心にフロー形式でつなぎ、データ連携や通知処理を行うことができるPower Automateという製品があったが、これにRDA (Robotic Desktop Automation=デスクトップ型RPA) 製品の機能 (Power Automate Desktop)が加わり基本機能がWindows 10ユーザーに対して無償になったことで、自動化の加速が予想される。
Power Automate Desktopの操作性であるが、初心者にもわかりやすいが、複雑な設定を行うには難易度がやや高い。たとえば変数の利用は限定的で初心者に向いている (自分で変数設定をしなくても自動的に定義してくれる) 一方、コマンドの表示方法がリストのみでフローチャート表示ができない、高度な設定はどこで設定すればいいのかが複雑でわかりづらい。
機能性はAutomation AnywhereやBlue Prismと比べると多少劣るが、RDA機能は豊富で自動化に必要な機能を十分に備えていると言えるだろう。コマンドが豊富で名前もわかりやすく、Pythonスクリプトなど他のプラットフォームとの連携も可能である。一方、セレクタでの要素選択機能が弱く、画面が変化する場合などは項目特定が難しいケースがある。
実行性については、無償機能での実行は手動実行のみとなる。スケジュール実行やトリガー起動はクラウド上のPower Automateを使う必要があるが、有償版の購入が必要となる。
管理機能は、すべてがクラウド上で管理され、Webでの閲覧に限られる。無償版では複数ユーザーの共同利用ができず、変更履歴や実行履歴の紹介もできない。ロボットもクラウド上の管理のみでローカルでのファイル管理はできない、といった制限がある。
このため企業での利用は有償版の導入が必要になり、かつ既存RPAとの使い分けがポイントとなってくる。
自動化導入・運用のポイント
最後に、本篇のまとめとなるが、効果を継続させるポイント、導入のポイント、低コスト化のポイントを紹介する。
ツール選定
RPAツールはサーバ型RPAの選定をお勧めしている。サーバ型RPAを使うと管理をきちんと行えるため、担当者が変わったりしてもきちんと引き継がれ、野良ロボットの排除も行うことができる。また、スケジュール実行、実行履歴管理、ユーザー管理、操作権限制御、サーバ型側でのパスワード管理などをおこなうことができる。
また、もう一点、クラウドに対応したRPA製品をおすすめしている。RPAというと物理端末を沢山用意して実行しているケースも見受けられるが、場所の確保や新型コロナ禍でのリモートワークに対応できることが必要になるからだ。最近では、クラウド環境での実行サポートや、Hyper-Vなどの仮想環境も実績が増えてきている。Automation 360 Cloudではサーバ構築をベンダー側で行われ、サーバとインフラの提供が追加費用無しで行われるため、導入や運用コストが不要になり、冗長化も自動的に行なってくれるため、おすすめである。
また、簡単な業務はExcel VBAやPower Automate Desktopなど、追加のライセンス費用がかからないローコード、ノーコードツールやマクロを併用することで全体のコストを削減することもできる。
RPA導入
RPAの導入はシステム開発と異なり、情報システム部門、経営企画部門、業務部門などさまざまな部門が主導する場合がある。それぞれについて課題がある。情報システム部門で主導する場合、業務部門からの対象業務抽出や課題抽出が難しい場合がある。経営企画部門で主導する場合は、トップダウンで実施するミッションを持つことが多くなるため、大きな効果をスピード感を持って出す必要がある。業務部門で主導する場合は、全社展開のフェーズになると部門を超えた連携が必要になり壁になるのと、情報システム部門との連携が不足するケースが多い。
そのため、COEと呼ばれる中央集権型の専任者を立てた推進体制が必要になる。業務を担当する各部署から専任者でなくてもいいので自動化担当を決め、情報システム部門も含めた体制で進めることが必要となる。この手法により、全社展開に大きな壁を作らず長期間に渡る推進を行うことが可能となる。
RPA開発
開発フェーズに置いては、RPA対象範囲として最初から100%を目指さず主要業務をカバーすることで大きな効果が得られることに注意する必要がある。最初の80%の主要業務を自動化するのと、後の20%の細かい複雑な業務を自動化するのとで、工数が同じくらいかかってしまうケースもよくある。後者を追いかけてしまうと、費用対効果 (ROI) が出にくくなってしまうため、ROIが出やすい業務を選定するのがポイントとなる。
また、開発の効率を上げる手法として、タスクマイニングツールを活用できる場合は使うと良い。このツールは業務との相性があるが、うまくいく場合は、開発者ではなく業務担当者がこのツールを使って作業を実行することで、業務整理を行いながら生成された手順をRPA開発担当に渡すことにより開発効率が上がる。場合によってはロボットの自動作成を行うこともできる。
RPA以外のツールを利用することで効率が上がる場合もある。スケジュール実行が必要ない業務や個人作業の自動化は、ローコード、ノーコード製品やExcel VBAを活用してライセンス費用を軽減し、RPAのROIを高く維持することができる。
また、デジタルアシスタントを利用することで、承認作業や手動でのロボット実行などの、人が実施する必要がある作業をデジタル化することで、自動化の範囲が大幅に拡大する。
RPA運用・保守
長期的にRPAを運用していくには、保守運用体制を明確にし、各部門の役割を決める必要がある。理想的には、RPAの以外のシステム保守と同じ体勢に載せられるのがよい。また、RPA運用の直前になって決めるのではなく、あらかじめ決めておくことが望ましい。
加えて、事前に作成したROI計画とRPA拡大計画と実績を比べながら比較分析を行っていくことも重要である。業務単位にROI達成率とライセンス単位の稼働率を確認し、低い場合は副次効果も確認しておく。効果が低い部分は、ツールの見直しや実行気稼働率の見直しなど行い対策する。
そして、先程の述べた他の情報システムツールと同じ保守運用が難しい場合は、アドホック型の保守やオフショア保守など、外部ベンダーも利用しながら運用していく必要がある。
最後に
ビッグツリーテクノロジー&コンサルティングでは、DX推進やRPA導入の支援サービスを多く取り扱っている。大きく分けると「RPA/OCR導入支援・開発支援」(バージョンアップや移行を含む)、「ローコード、ノーコード導入・開発支援」「チケット制RPA保守サービス」「オフショアRPA保守」「AI導入支援」「クラウド化支援」などである。
問い合わせ先
ビッグツリーテクノロジー&コンサルティング RPA事業部
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