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技術サービス国内最大級の自社に導入、本社業務効率化にRPAが新風を吹き込む

2021/06/09 コラム, 導入事例



 東京の六本木に本社を構えるテクノプロ・ホールディングス株式会社は、約2万人のエンジニアや研究者を擁する国内最大の独立系技術人材サービス企業である。311日に行われたオンラインイベントリレー2021 Springウェビナーのセッションで、20204月より自社の管理部門にRPA導入を行った自社実践事例について解説した。

導入の経緯


株式会社テクノプロ テクノプロ・IT
大下 健一氏

 株式会社テクノプロ テクノプロ・IT社は、親会社であるテクノプロ・ホールディングス株式会社の経理部門にRPAを導入することにした。経理部では、テクノプロ・グループの全従業員を支えるバックオフィス業務、たとえば経費精算、請求書、経費処理といった膨大な業務を、Excelなどを駆使しながら毎日行っている。元々コア業務以外はアウトソースをしているが、それでも経理部門の従業員は、月に40~60時間の残業を行っている。経理部門は、本来経営の意思決定を支援する部門であり、単純作業をなるべく減らして、空いた時間で経営の判断材料を生み出すことが求められる。残業時間をゼロにして空き時間を作り出すには、手作業を削減する必要があった。そのため、手作業を削減することに注目して業務の洗い出しを行った。

 業務を洗い出してみると8つの業務に分けることができた。業務のうち一部のものは以下の通りである。一件当たりの所要時間は大きくなかったが、数が多かった。

内容 詳細 処理数
パスワード変更 会計ソフト用パスワードの定期変更 1
PKGメール配信 毎月のPKG提出期日を各子会社にメール配信 1
リマインドメール配信 提出期日前に各子会社にメール配信 1
経費取込 他部署から提出された請求明細をツールと会計ソフトに取り込む 48
CSVファイル、会計ソフト CSVファイルを特定のフォルダへ格納し会計ソフトに取り込む 1
売上区分別明細結合 拠点ごとの売上区分別明細を結合し、全拠点の売上区分別明細を作成 1
PKGエラー確認 PKG受領⇒シートのエラー確認⇒エラーのある会社員ついて自動返信 2
請求データ取込 外部データの取り込み 1

 

RPAの導入

オートメーション・エニウェアの無人型RPAを導入

 RPAの導入にあたり、株式会社テクノプロ テクノプロ・IT社ではオートメーション・エニウェアのRPAを導入、Unattended (無人型)のロボットを使い、スケジュールに沿ったロボット実行を行うことにした。クライアントPCで人間が作業指示を行うAttended (有人型) の形ではなく、サーバを通じてあらかじめ決められた業務プロセスをロボットが実行するものである。これにより24時間、手を止めることなく膨大なバックオフィス処理が可能になる。サーバ型RPAのオートメーション・エニウェアには、ロボットの集中管理が可能、エラー、実行ログの管理を集中的に行える、業務プロセスの完全自動化を行うことができる、といったメリットがある。

 RPA化においては、担当者がそれほど負担に思っていない、かつ一件当たりの作業時間が少ないが反復が多いものから手を付けた。この方法が、RPAにおける効果を出すのに効果的であることが分かっていたからである。

 

業務部門が自ら業務整理を行うことと、RPA開発者と業務部門が “1つのチームになることの重要性

 そして、RPAを導入していく経緯で分かったことがある。テクノプロ・グループではBPOを行い本社の社員はコア業務に集中していたのであるが、手作業と属人化が進み、よりよい手順を試していなかった可能性がRPA導入の過程での作業整理で露呈した。このような業務改善は業務担当者にしか行うことができないため、定期的に業務手順は見直すことが肝心となる。

 今回のRPA導入は、すべてが順調にいったわけではない。導入をはじめて最初の3カ月は思ったほどの成果が出なかった。最初のうちはRPAの機能の理解やシナリオ作成のところで苦労した。理由は結果的に簡単であり、RPA開発メンバーは、システム開発の手法に慣れていたため、システム開発の目線でプロジェクトを進め、システム設計の流れで業務フローも考えていったため、手作業の見える化を行うのに手間取った。この手作業の部分をロボットに置き換えるという目線でのシナリオ作成が重要であることに気づき、業務担当者と手作業を洗い出すためのディスカッションを重ねるようになり、その結果、成果が目に見えるようになった。

 プロジェクトを進めて試行錯誤を重ねていくことで、業務担当者も自動化出来る手作業を見つける視点を持てるようになり、業務プロセスについてより積極的に考えるようになった。RPAプロジェクトを成功させるには、業務部門とRPA開発者が1つのチームになることが重要であることが、プロジェクトを回してみてより鮮明になった。特に、業務部門と開発者の会社が違う今回のような場合、ユーザー側と導入会社側で分かれてしまい、導入会社側は受け身の姿勢に陥りがちであるが、デジタルトランスフォーメーションの実装と同じで、業務部門のかかえる潜在的な課題を開発者側でも積極的に見つけ出して一緒に取り組んでいくことが重要となる。

 

RPA導入の効果

RPA化した業務の概要

 今回、システム開発を行う側と業務を行う側が一緒になって考えることで業務を整理することができた。まず、担当者が負担に感じないちょっとした手作業 (システム入力、メール伝達・配信、データ加工など)RPA化することで、いままで手で行っていたルーチン作業、Excelやマクロの実行を手作業で行っていたものは、ある程度RPAにより自動化ができるようになった。その分量は月に500件以上、時間にして約4,000分にも及んだ。

 また、メール配信は、カレンダーと連動させて確実に時間通りに配信したり、アドレス帳と連携することで、手動による誤送信を防ぐなど、ミス軽減やセキュリティ面でも効果があった。

 

業務例①: 関連会社へのPKG依頼 (連結決算)

 担当者はまず連携決算のパッケージのデータを作成し、関連会社に連絡していく。パッケージ収集後、最終的に形式が同じになるようにデータを加工して連結決算ソフトウェアのDIVAに入力する。従来は、これらを手作業で行っていた。

 この業務にRPAを導入した結果、以下のようなフローになった。関連会社にパッケージを送るところからロボット化し、その後の作業をすべて自動化した。依頼メールの作成と送信などはちょっとした作業ではあるが、数も多かった。これらの90%を削減することができた。

業務例②: SuperStream-NXとの連携

 別の例として、会計システムSuperStream-NX (SSNX)を使った業務があった。業者からデータ取得をして計上に必要なデータを作成し、特定のフォルダに置いていくといった作業があった。フォルダに置いた後に加工をしてデータの突き合わせを行っていき、最終的に伝票を作成する。

 この業務では、作業を始めるタイミングが異なるものがいくつか存在し、データ加工も大変な作業であった。

 こちらもRPA化することによって、24%の時間削減を行うことができた。集計、データ加工、取り込みデータの時間差があり、関係先の把握、手作業の置き換えが必ずしも容易ではなかった。また、一部はExcelマクロを駆使したり、手作業が残ったり、ロボットの起動時間が長いため、削減時間はあまり大きくはならなかった。ただし、もう少し工夫することで削減時間を増やすことはできそうである。

いままでの定量的・定性的導入効果

 最終的に、RPAの導入効果として、594タスクに対応、月42.0%の手作業削減を行うことができた。あわせて、定性的な効果として、業務の属人化、作業ミス、業務ストレスの軽減を行うことができた。Excelをいくつも起動してデュアルモニターで作業したり、専用アプリケーションを立ち上げて入力するといった業務から解放されたのである。

 RPA化出来る業務はまだたくさんあるため、コア業務にさらに拡大していった際には、より大きなインパクトが出るものと期待している。今回はDIVASuperStreamといった会計システムとRPAとの連携を行ったが、社内に残る他のシステムとの連携 (達人 (申告書作成ソフト)、各銀行サイト、自社基幹システム、SAP Concur)との連携も行っていき、システム連携で発生する手作業0%を目指す。

 

最後に

 今回、約2万人を擁するテクノプロ・グループの本社経理部門にRPA導入支援を行った、株式会社テクノプロ テクノプロ・IT社システムソリューション事業部では、その経験を活かして顧客へのRPA導入支援サービスを立ち上げた。対象業務の業務整理から、イメージ作成、効果の可視化、運用ルールの整備、システム連携など、RPA導入時に発生しうる様々なタスクを総合的に支援するものである。またテクノプロ・グループへのRPA導入も進め、DX推進によるスピーディなビジネス展開を経て企業価値を高めることを目指す。

 

お問い合わせ先

株式会社テクノプロ
テクノプロ・IT社 システムソリューション事業部