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全社員がロボットを使いこなす、をどう実現するか?RPA各社の考え方と現実解

2021/06/30 コラム, スライダー



 日本でも大企業では半分以上が既に導入済みであるといわれているRPA。しかし、導入企業数でいうと半分を超えているかもしれないが、導入したとされる企業の中でRPAの恩恵に与っている従業員の割合でいうと、典型的には数%、最大でも15%程度といわれている※。つまり、RPAを利用している大企業の従業員数でいうと、まだまだ利用が進んでいないことになる。この記事では、RPAの導入を始めた企業で、社内のRPA利用従業員数をどう増やしていけばいいのか、またRPAベンダーがそれに対して提案している解決策について見て行くことにする。

組織内でRPAの恩恵に与っている人の割合

 RPA導入企業で実際にどれくらいの割合の従業員がRPAを活用しているかについては調査データがある※。それによると、9.9%~14.1%の従業員のみが業務でボットを活用しているのだという。ただ、経営層の期待と方向性は、従業員の90%程度まで活用割合を引き上げることである。

 では、このギャップをどう埋めていくのか、RPAベンダーはいくつかの仕組みを用意しているので順に見て行くことにしよう。

 

RPAの組織内活用度を上げるための機能

簡易エディターの提供

 これは、UiPathWinActorで採られているアプローチである。UiPathの場合、通常の開発環境Studioに対してStudioXという簡易版StudioXを提供している。StudioXでは、パネル型のより簡単なユーザーインターフェイスを使い、使えるコマンドの数も限定する代わりに、変数などを知らなくてもフローが組めるように工夫されている。WinActorもバージョン7.2からション者向けノーコードエディタ「WinActor Storyboard」を提供している。これにより、組織内のより初心者なユーザーをターゲットとしてシナリオ開発ができるようにしている。

この方式は、ノーコードでの開発を導入することでロボット開発者の裾野をより広げようという取り組みである。裾野は広がると思われる一方、2種類の開発エディター、2種類の開発方式が混在することで、組織内でのトレーニングや情報共有がより複雑になるリスクもある。また、両者ともノーコードディタから通常版のシナリオ/フローへの変換は可能だが、その逆はできないため、この特徴も考慮した業務プロセスを考慮しておく必要がある。

 

シチズンディベロッパー向けライセンス

 これは、Automation Anywhereで採られているアプローチである。ボットの業務での実行を行わない通常の開発者であるBot Creatorと、自動化業務を自分のPCで実行するAttended Bot Runnerのライセンスの組み合わせをより安価に提供するCitizen Developer (市民開発者)ライセンスである。Automation Anywhereの場合は、開発者も市民開発者も同じ開発画面を利用するアプローチを採っている。

 

デジタルアシスタント

 これは、UiPathWinActorAutomation AnywhereBlue Prismといった主要ベンダーが採用しているアプローチである。UiPathは「Action Center」、WinActorは「WinActor Brain NaRuKami」、Automation Anywhereは「Automation Anywhere Robotic Interface (AARI)」、Blue Prismは「Blue Prism Cloud Interact」という名前で機能を提供する。

 このアプローチは簡単に言うと、家では「Alexa」「Siri」「Googleアシスタント」などに指示を出すことでライトをつけたり音楽を聴いたりといったことができるが、これを仕事に適用したイメージである。ユーザーは裏でRPAが動いていることを意識せずに、人の指示が必要なところに対して指示を出すことで、裏でロボットが動いてくれる仕組みである。

 実装については各社異なるシナリオを想定しており、使い勝手は必ずしも同じではない。市民開発者は、開発者よりもややスキルが低いユーザーであり、組織内では20%程度までは広げられる可能性があるが、90%に対する残りの70%にまで広げるには、RPAを意識させないアプローチが必要になると判断してデジタルアシスタントを推進しているRPAベンダーもあれば、人とロボットとの協働が必要なシナリオにのみ適用できれば良いと考えているベンダーもいる。

 

まとめ

 組織内でRPAを広げていくアプローチを技術的/製品的な視点から見た場合、RPA推進グループを形成して広げていくのはもちろんのこと、従来のRPAツールをそのまま広げるだけでなく、より簡単な、そしてよりRPAを意識させないような形で展開していくアプローチも有効であると想定される。RPA各社からいくつかのアプローチが出ているので、あわせて検討の上、適切なアプローチを選択するとよいだろう。

 

Now & Next: State of RPAレポート、2021年