DX推進を加速させるデジタルワーカーとは?

2021/10/11 コラム, スライダー



近年、DX(デジタルトランスフォーメーション)という言葉をよく聞くようになった。DXを推進している人も、これから推進する人も少なからず内容については把握し、その上でDXの推進に取り組んでいると考えられる。ただし、DXは分かりにくい・捉えにくい、とも言われる。ではDXの本質を分かった上で推進しているのであろうか?また何から始めたらよいかを理解した上で進めているのであろうか?ここでは、DXについて述べるとともに、DXの一翼を担う自動化ツールであるRPAの新しい技術デジタルワーカーについて解説する。

DXの本質

まず、DXの本質は、デジタル技術の導入による業務の効率化ではなく、企業の経営やビジネスの変革であることについて解説する。

DXの本質は、データ化であるデジタイゼーションや、デジタル化と言われるデジタライゼーションではない。過去の経緯として、欧米ではITの導入は効率化に加えて、売上の向上やマーケットの拡大のために行われてきたのに比べ、日本ではITの導入は主に効率化のために、行われてきたということがある。こういったこともひとつの要因となり、DXはデジタル技術の導入による自動化や効率化と考えられることが未だに多いといってよいであろう。しかし、DXの本質はそうではなく、DXのDであるデジタル技術を使った、Xの意味するトランスフォーメーションである企業の経営やビジネスの変革のことである。

 

あらためて、以下にDXに至る3つのステップを簡単に紹介する。

デジタイゼーション

デジタイゼーションとは、紙やpdfなどで保管されている、もしくは記録されようとしているアナログデータをデジタルデータ化することである。一般的には紙の伝票、カルテ、タイムカードなどの情報をデジタルデータ化し、コンピューターで扱えるようにすることである。


デジタライゼーション

デジタライゼーションとは、デジタル技術を導入し、業務プロセスの自動化を行ったり新しいデジタルサービスを提供したりすることである。例えばWeb上の受付の対話ロボットであるAIチャットボットの導入もそれにあたる。これにより自動チャットで待ち時間を少なくしたり、深夜対応などのサービス向上を図ったりすることができる。


デジタルトランスフォーメーション

デジタルトランスフォーメーションとは、このようにして導入した新しいデジタルサービスや、デジタル化に伴い蓄積されたデータを活用し、今までになかった新しいサービスやビジネスモデルを生み出すことである。これを成し遂げることによって企業は新たな競争力を獲得することができる。このデジタルデータとデジタル技術に対応した、企業の経営やビジネスモデルの変革がデジタルトランスフォーメーションである。

 

DXの進め方

次に、DXの効果的な進め方について解説する

前述の通り、DXは企業の経営や主たるビジネスモデルに変革などをもたらすことを目的とする。したがって企業にとっては大きな変化を伴うため、社長やCEOなどのDXに関する理解とトップ自らによる号令が必要である。また、DXを進めるためには、専任組織を作ることが重要と言われ、DX推進組織に所属する推進メンバーのためのDXビジネスに則した評価制度の整備なども必要になる。加えて、新しいビジネスにチャレンジする企業文化の醸成も必要で、既存のビジネスにこだわらない企業姿勢なども求められる。これらは一見目につきやすいDXのDであるデジタル化やデジタル技術の導入とは異なるが、DXのXであるトランスフォーメーションに向けての非常に重要な取り組みである。

とはいえ、会社の経営層がDXの本質を理解した上で、会社全体の変革のため自らが牽引役となって組織の改革が進むといったことは、どの会社も簡単にできることではない。これらの推進と同時に、まずはDXのDである業務のデジタル化や新しいデジタル技術の導入に関する部分から取り組むことが重要である。また、そのためにはデジタルツールを扱える人材や、さらにDXを推進するリーダーなどの育成も必ず必要となる。これについては後ほど詳しく解説する。

 

デジタルワーカーとは

次に、デジタルツールの一つであるRPAの進化形であるデジタルワーカーの概要及び事例について解説する。

デジタルワーカーとは、従来人手で行っていた単純なエクセル作業などを自動化するRPA(Robotic Process Automation)の機能に、画像・音声・文章などのAIによる分析やAIチャットボットによる人との自動コミュニケーションなどの新しいデジタル技術による機能を加えたものである。したがって、デジタルワーカーはRPAよりも高度で複雑な業務をこなすことができる。RPAではまず単純かつ量が多い業務を切り出し、RPAの適用対象として業務の自動化を行っていた。デジタルワーカーではその自動作業に、別の新しいデジタル技術による自動業務を組み合わせて、より高度な作業を実行させることができる。

 

以下にいくつかの想定される事例を紹介する。


コールセンター活用

コールセンターでは、問い合わせの初期での対応が想定される。デジタルワーカーでは音声のトーンなどもAIで分析できるようになるため、顧客の声のトーンでクレームかどうかなどの判断が可能になる。クレームと判断すればクレーム対応部門に問い合わせ電話を振り分け、そうでない電話はそのまま通常の自動対応を続けることなども可能になる。

 

予約業務

医療現場の予約確認にデジタルワーカーを導入したケースがある。予約日が近づくと患者に自動メールで予約確認をし、予定どおりの回答であれば予約データはそのままで、もしキャンセルの回答があれば、その時間を新たな別の予約枠として、別の患者を割り当てる業務である。この一連の業務ではデジタルワーカーはRPAよりも高度な作業を行い、人の業務を減らす効果を出している。

 

DX成功の秘訣

最後に、DX成功の秘訣を解説する。

DXを成し遂げるには組織のTOPがDXを理解し、特にDXのXである会社全体の組織・制度・文化などを変革することが重要である。ただし現場は現場で、状況に即したやれるところから同時に進めるという考え方も重要だ。DXのDであるデジタル技術の導入を進め、データを最大限に活用することと、これらのデジタルツールを使いこなすためのデジタルリテラシーなどを持ったデジタル人材及びDXをリーダーとして推進する人材の育成は非常に大切である。

 

データの活用

導入するデジタル技術の代表的なものとして、前述の自動化ツールであるRPAやデジタルワーカーなどがある。機能などについては既にお伝えしたが、導入の効果は自動化による直接の効率化などにとどまらず、蓄積されるデジタルデータを活用することにより、今後の大きな展開が見込める。具体的には、RPAやデジタルワーカーが蓄積するデータを活用してマーケティングや顧客サービスなどを強化することができる。売上向上や他の新しいビジネスを拡大できる可能性があり、データの活用を十分に意識してDXを進めることが重要である。

 

人材の育成

そして、さらに重要なことは人材の育成だ。例えば、RPAやデジタルワーカーなどのデジタルツールを導入するプロセスに携わったメンバーは、デジタルリテラシーを身につけるとともに業務のデジタル化の効果などを自ら実感することができ、DXを進めるモチベーションに繋がっていく。また、DXを推進するメンバーは、自動化・効率化によりルーティンワークなどの業務から解放されるため、新たに時間が確保できる。これによりDXをリードする人材を育成し、さらに全社のDXをリードする業務などに投入できるようになり、DXを加速することができる。

 

 まとめ

以上述べてきたように、DXの推進は経営層のマインドチェンジや現場DXの人材育成などもとても大切ということがお分かり頂けたであろう。そして、やはり重要になるのが現場でのデジタル化である。最新のデジタル技術であるRPAやデジタルワーカーなどの導入を行うと、業務の自動化が図れるのはもちろんのこと、多くの時間を作りだすことができる。そしてこの時間を使ってDXを進める変革リーダーなどのデジタル人材の育成が可能になり、DX推進がさらに加速する。したがって、これらのデジタルツールの導入はDXへ繋がる大きなカギなのである。