RPAとは?導入前に確認すべきポイント

2021/11/11 コラム, スライダー



RPAは実際にさまざまな企業や自治体などで導入が進んでおり、ITの担当者などでRPA導入を検討している方もいるであろう。そんな中、RPAのことやRPAの導入についてまだ漠然としか理解していないが、導入に向けて必要な検討事項などを調べている人も多いのではないだろうか?この記事では、RPAが具体的にできることや導入のメリット、導入前に確認すべきこと、導入事例などについて解説する。

RPAとは

RPAとはRobotic Process Automationの略称である。コンピューター上のソフトウェアロボットのことで、さまざまなアプリや業務システムで人が行う単純作業の一部を再現し自動化することができる。幅広い分野で注目されており、事例や実績も次々に出てきている。

 

RPAで実現できること

RPAはあらかじめルール化されている単純な反復作業を得意としている。例えば「膨大なデータを単純にコピー&ペーストする作業」、「定型的なグラフや表の作成」、「業務で毎日蓄積される大量なデータのダウンロード作業」、「決められた宛先や時間での一斉メールの配信」などの業務が挙げられる。これらはいずれも定型的な単純な作業であり、ソフトウェアロボットであるRPAに任せることで業務の大幅な自動化ができる。


RPA導入のメリット

業務の効率化とコスト削減:定型的な単純作業を切り出しRPAに任せることにより、業務の効率化が図れる。これにより時間に余裕がでるため、例えば人と人とのコミュニケーションを必要とする営業業務に新たに取り組めるようになるなど、さらなる生産性の向上も期待できる。また、新たな単純作業が発生してもRPAが対応できるため、人件費や人材育成などのコスト削減が可能になる。

業務処理のスピードアップ:RPAはソフトウェアで動くため人の手作業に比べてスピードが早く、業務処理の所要時間を短くできる。また、休憩時間は不要なため、基本的に24時間365日の稼働が可能であり、業務全体のスピードアップを図ることができる。

人的ミスを防ぎ正確な作業を実現:人手ではなくソフトウェアロボットが作業を行うため、手入力であるような人的なうっかりミスは発生せず、正確性が向上する。

働き方改革に繋がる:RPAの導入により工数に余裕が生まれるため、長時間労働などが減り時間外はRPAに任せるなどの工夫も図れる。これらは作業をする人の労働時間の短縮や負担の軽減になり、働き方改革に繋がる。


RPAを導入する前に確認すべきこと

RPAで効率化できる業務なのかを見極める
RPAによる自動化には向いている業務と向いていない業務があるため、導入前に対象の業務を見極める必要がある。RPAに向いている業務は「ルールが決まっている定形作業」「大量のデータ処理」「比較的単純な作業」などである。逆に向いていない業務は「ルールが頻繁に変更になる作業」「例外処理が発生する作業」「人の判断が発生する処理」などである。これらを基準に、導入前に対象業務をしっかりと確認しておくことが重要だ。実際の導入時にはスモールスタートとしてまずは少数の対象に絞って適用し、徐々に数を増やしていく方法が有効である。

 

導入後の運用体制を作れるかどうかを検討する
RPAの導入は、今まで使ってきたであろう一般的なITツールの導入とは異なり、導入後も随時RPAの修正やメンテナンスが必要である点は留意すべきだ。多くのITツールは一度導入するとバージョンアップや大きな仕様変更を除くと、基本的に修正やメンテナンスなどの対応は必要ない。ところがRPAは業務フローなどが変更になると、その度に適用しているRPAにも修正が必要になる。一般的に業務フローの変更などはよくあることであり、RPAには都度対応が求められるため、稼働後もRPA専任の運用体制が必要とされる。この点を十分意識して導入の検討をすべきである。

 

自社の業務にあったRPAツールを検討する
RPAの導入を検討する際には、どのRPAツールを選定するかという問題がある。RPAツールの機能・導入コスト・ベンダーサポートなど、いくつかの項目を比較し自社に最適なRPAツールを検討することが重要である。例えば「デスクトップ型」や「サーバ型」と呼ばれる種類がある。「デスクトップ型」はそれぞれのパソコンにRPAがインストールされて動作するため小規模な導入に向いおり「サーバ型」はサーバにあるRPAをパソコンから動作させるため大規模な導入に向いている。特にシステムに対してログインをおこなうようなRPAの場合、セキュリティを十分に考慮して、「サーバ型」で導入する必要がある。RPAが用いるID・パスワードの管理や、実行権限者の管理を考慮した設計をする必要があるためである。導入前に情報を集めてしっかりと比較検討する必要がある。

 

RPAの導入ステップ

①RPAの適用対象にする業務の洗い出し

RPA導入時での対象業務の洗い出しは非常に重要なフェーズである。前述の通りRPAには向き不向きの業務があるため、事前によく業務を分析して洗い出しを行う。このフェーズがRPA導入成功の可否を分けると言っても過言ではない。

 

②RPAツールの選定

次に、利用するRPAツールを選定する。RPAツールの機能や特徴、向き不向き、導入コストなどを比較し自社の業務に合ったRPAツールを選定することが重要である。

 

③トライアル導入・結果検証

洗い出した導入対象業務から一部を切り出し、まず小さな範囲でRPAツールをトライアルで導入する。ここで、RPAツールの操作性・特徴・業務との相性など課題を一旦洗い出し、本格導入に向けて準備をする。

 

④本格導入

トライアル導入の結果をもとに、再度対象業務を洗い出しRPAを全面的に適用し本格導入を行う。

 

⑤運用・保守

運用・保守は、前述の通り導入後にとても重要になるフェーズである。業務フローの変更などに伴うRPAの修正・メンテナンスのためには、必ず運用・保守業務が必要とされる。また、現場でRPAを効果的に適用・活用するためにも実際に業務を行う社員へのQ&Aサポートなどもしっかりと行う必要があり、運用・保守を担うRPA専任チームなどの設置が大切である。

 

RPA導入事例

<銀行業務事例>

住宅ローン事前審査業務の自動化:住宅ローン事前審査申込書(紙)の記載内容を、まずAI-OCRを使ってデジタル化をさせる。その後RPAを使って、申込の内容を各種システムへ自動で入力させ、合わせて取引履歴の確認などの各種照会業務の自動化を行っている。(効果)銀行全体で月間約2,000時間の作業を効率化。

 

<自治体業務事例>

固定資産税・都市計画税に関する現地情報の確認:あらかじめ用意された位置情報の入力値を元に、RPAが関係する各種情報(住宅地図/航空写真図/地番家屋図/土地家屋台帳等)を複数のシステムから自動で集めて資料を作成し印刷する。(効果)月間約1,000時間の削減ができ、その分を住民サービスの向上に活かすことができている。

 

<人事部門業務事例>

労働時間チェックと残業時間超過の注意喚起:RPAが勤怠システムから社員の労働時間を集約し残業時間を計算する。一定時間を超えた対象社員とその管理者に対して、自動でメールを送信し残業時間超過の注意喚起を行う。(効果)人事部門で月間約2,000時間の作業を効率化。

 

 

まとめ

RPAの導入にはいくつもの大きなメリットがある。ただし、RPAは今までのITツールの導入とは異なり業務内容に大きく関わるところに特性がある。そのため、適用対象を選ぶ際には業務をよく知っている顧客自身の参画が必要なこと、運用・保守時にはベンダーやSIerなどにすべてを任せるのではなく、顧客がしっかりと体制を整えて進めることが重要である。そのためのRPA専任の運用組織を社内で構成し、会社全体の重要課題として取り組むことが必要である。これらを導入前からしっかりと考えておくことがRPAの導入を成功させるポイントである。