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削減時間だけではない! RPA導入の推進者が知っておくべき6つのメリット(後編)

2020/05/02 インタビュー



 前編では、RPA導入における削減時間以外のメリットについて、米系RPA企業であるオートメーション・エニウェアでカスタマーマーケティングを担当する長橋明子氏に話を聞き、「品質の向上」「社員のストレス軽減」「業務の平準化」の3つを紹介した。後編では、残り3つについて話を聞く。

メリット4:業務の見える化・棚卸しができる

 RPAを導入することで、BPR(ビジネスプロセス・リエンジニアリング:業務プロセスの見直しと再設計)ほどではなくても、業務の見える化や棚卸しがしやすくなる。そのため、ちょっとした業務改善ができたり、本来やらなくてもいいことをやっていたことに気づいたりといった効果が出てくる。

「自動化する業務を決めるときに、まずは業務の棚卸をし、どの作業を自動化すべきかを決めるというプロセスを踏むことで、自動的に業務の見える化ができてます。『BPRをやるぞ』と言って社長直轄で始めた全社プロジェクトは、あまりうまくいかない印象があります。単に業務の棚卸しだけでは、現場が協力を得られないからではないでしょうか」(長橋氏)

 BPRのように大げさに考えず、仕事を自動化することを目的としてやると、結果的にそれが棚卸しになりBPRが実現するというのは、経験を蓄積してようやく見えてくる知見と言えそうだ。

「RPAをきっかけに業務の棚卸しをしたことにより、入社や異動などで職場に新人が来たときに、業務の引き継ぎが楽になったという副次的な効果もあるようです」(長橋氏)

 また、既に業務が自動化されていれば、ロボットが引き継ぐだけなのでそれも楽という面もある。ただし、中身を知らずにロボットだけが業務を引き継いだものの、しばらく経ってからロボットが突然動かなくなったといった時に、非常に苦労することがあるという。該当する仕事を誰もできなくなるのは“RPAあるある”なホラーストーリーだと長橋氏は指摘する。引き継ぐ際は、中身もきちんと引き継ぐ必要がある。

メリット5:それまでできていなかったことに手をつけられる

 RPAで業務が自動化されたため、空いた時間を使って、他のより付加価値の高い業務を実施できるという指摘は多い。だが、「“新しいことができる”という言葉にはいろいろな意味があります。人間も新しい業務ができるようになりますが、ロボットだからこそ手をつけられる仕事もあります」と長橋氏は言う。

例えば、次のような仕事だ。

  • 締め切り日までに必要な書類が提出されているかをチェックし、提出されていなければメールでリマインドする
  • 社員にアカウントを貸与している有料のサービスが使われているかをアカウントごとに定期的にチェックし、一定期間使われていなければ、そのアカウントを停止する
  • 作業の進捗をシステム上でチェックし、遅れがあれば担当者に連絡する

 どれも絶対にやらないと業務が成り立たないほどではないが、人がやると「気づいた時にやる」といった運用になりがちな業務である。気づいたときにできても、漏れなく実施するのはハードルが高い。ルーティン化するには時間や手間がかかりすぎたりして手をつけられていなかったような業務を、ロボットなら簡単に実現できるというのは示唆に富む話である。

メリット6:社内に改善文化が定着する

 RPAで業務を自動化した結果、自分たちの仕事が楽になった、という体験が積み重なっていくと、「じゃあこの業務は?」「これはもっとこうすれば良くなるんじゃないか?」というように、業務を自分たちで改善する意識が芽生えてくる。「カイゼン」の意識を持ってRPAを使いこなすようになったなど、企業文化にまで影響を与える例もあるようだ。

 RPAについて、「過渡期の技術だ」というエンジニアは多い。本来なら、システム全体がマイクロサービスのアーキテクチャで構成されていて、APIで疎結合されていれば手作業でシステムにデータを入力する作業なんて不要ではないか、わざわざ手入力の作業をロボットにやらせたりしないでシステム同士を直接つなげばいいだけじゃないか、といった具合である。

 「確かに本来それができれば一番ですし、それならRPAはいらないと思います。ですが実際には、そうしたくても相手側のシステムがAPI連携に対応していなかったり、ROIが低いため開発するための投資ができなかったりといった事情が多くの会社にはたくさんあります。結局人がやる方が低コストでスピーディーだから、仕方なく人がやっているという状況です。それを仕方ないとあきらめるよりは、ストレスの強い仕事をロボットに投げてしまえる方が、働いている人にとってよほど有益です。従業員のストレスを解消し、会社にとっても効率化が進むのであれば、一石二鳥です」(長橋氏)

 RPAは、ユーザーが自分の仕事を効率の良いストレスのないものに変えるための武器としてとらえるのが最も効果的と言えそうだ。できれば、各自が秩序なく使うのではなく、会社が承認し、全社員が共有できるようにしたいものだ。オートメーション・エニウェアのユーザー企業のなかには、「RPAを文房具のように社員が使いこなせるのが理想」という会社もあるそうだ。

 前編後編の2回にわたり、時間削減効果だけではないRPAの効果について紹介してきた。RPAは業務効率化の方法としてだけでなく、ES(Employee Satisfaction)の観点でも効果がある。RPAの導入を意思決定する人や推進する立場の人は、投資対効果を得るためにもぜひ参考にしてほしい。

削減時間以外のPRAの導入効果

メリット1:品質が向上する
メリット2:社員のストレスが軽減される
メリット3:業務が平準化する
メリット4:業務の見える化・棚卸しができる
メリット5:それまでできていなかったことに手をつけられる
メリット6:社内に改善文化が定着する

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