印鑑はいよいよ無くなるのか?日本のデジタル化

2020/09/29 コラム



 河野太郎行革担当大臣が「10月から行政手続き上の押印はできる限り廃止する、どうしても廃止できないところは至急申し出ること」という指令を各省庁に出したことが話題を呼んでいる。民間企業でも、押印の必要性を官公庁との取引時に必要であることを理由にあげているところが多くあり、官公庁で廃止されれば民間でも廃止の動きが大きく広がる可能性があるからだ。

官公庁からも押印はなくせる!しかし一部は残る

 テレビのワイドショーで元官僚のコメンテーターが「官僚は若手が10人以上の上司のハンコをもらうために一日中庁舎内を駆け回る」「大臣クラスになると来客の合間に出待ちして時間を貰う、その時に顔を覚えてもらう」とコメントしていたりするが、それは10年以上も昔の話、2020年の今は官公庁でもほぼすべての重要な稟議システムはオンライン化されており、若手がハンコをもらうために庁舎内を駆け回ることもない。つまり、ハンコがなくなっても業務に実質的な影響はないのだ。

 一方、官公庁の場合は法律等によって押印の必要性が明確に謳われているものが一部存在する。これらについては洗い出したうえで国会で法律改正を行うなど、押印廃止までに手続きが必要になる場合もある。しかし、これも進める気があれば数カ月の間には決着がつくことであろう。

 

民間企業の場合の押印処理

 一方、民間企業の場合でも、どんなに決済のオンライン化が進んでいてリモートワークをしている企業でも、人事関係など一部の業務は社内的に押印が必要であったり、受発注手続きなど業界で決まっているワークフローが紙と捺印、FAXベースだったりといったことがまだまだ存在する。政府は2020年6月に民間企業や官民の間の取引の契約書で印鑑の押印は必ずしも必要ではないという見解を出している。

 

契約時の印鑑不要、内閣府など政府が見解、オンライン契約の促進に期待

 

 新型コロナ禍を契機に、社内業務についてはオンライン化の見直しを進めているところも多いようだ。自社内だけでは完結しない手続きで業界としての取り組みが必要なところはしばらく時間がかかるだろう。

 いずれにしても、すでにオンライン決済システムが導入されており押印は形式的に行われているのみのものの押印はすぐに廃止、そうでないものもオンライン化の波が急速にやってくることは間違いない。

 

オンライン決済システムで真正性をどう証明するか

 ところで、決済システムには「真正性 (しんせいせい)」が求められる。これは正当な権限において作成された記録に対し、虚偽入力、書き換え、消去及び混同が防止されており、かつ、第三者から見て作成の責任の所在が明確であることを意味する。

 紙と押印の場合には、ユニークで他では手に入らない印影で押印された書類は、押したのは本人であり、押印もその本人の責任において行われていて、偽造もできない、と社会通念上は考えられていた。(もちろん近年では印影など簡単にコピーできるし、社印が無造作に置かれている場合もあり誰でも押せる状態にあったりすることも多々あるのだが)

これを電子的に実現しようとしたときに、どこまで厳密に真正性を証明できるようにするのかが、しばしば議論になる。

 

電子署名と電子サインの違いは?

 オンライン決済も社内稟議と社外との契約行為に分けられる。社内であれば特定のシステム上で決済履歴が閲覧でき、虚偽入力、書き換え、消去及び混同を避けることができれば十分であろう。

 一方、社外との電子契約で真正性を担保しようとすると、通常は第三者機関のデジタル証明書発行サービスから発行された電子証明書を利用した「電子署名 (Digital Signature)」を使う。2001年に施行された電子署名法で、有効な電子署名の方式が定義されているが、明確に定義されていたのは署名をする本人が自分名義の電子証明書をそれぞれ取得して、署名を行う方式である。電子証明書は電子的な印鑑証明にあたるものだ。

 ただし、電子証明書は事前登録が必要で取得までに数週間を要することもある、定期的に期限切れになり更新する必要がある、ユーザー数に比例して電子証明書取得コストがかかるなど、これをユーザー毎に行うのはかなり手間がかかる。

一方、近年は当事者ではなく第三者の電子署名を使う、もしくはメール認証など、より簡易的な仕組みで本人確認を行う方式も出てきている。これらは「電子サイン (Electric Signature)」と呼ばれ、電子署名も含むより広い概念である。

 しかし日本においては電子サインの法的有効性が明確でなかったため、民事訴訟などで証拠能力が劣るという見方もあり、導入が進まない場合があった。2020年7月に政府から本人の電子証明書を用いない「立会人型」もしくは「事業者署名型」の電子署名も法的に有効であるという公式見解が出た※ことで、電子署名法におけるグレーゾーンが明確になり、今後は電子サインも導入が加速するとみられる。

 

電子サインを持ったシステムをいかに早く構築するか

 いままで紙と押印で行われていた業務を、Adobe Signなどの電子サインサービスを使って置き換える場合、いかに迅速に導入できるかも重要になってくる。電子サインサービスを業務フローに統合する場合、きちんとしたSIを行うと数カ月もの時間がかかってしまうこともある。しかしそこまで待てない場合に、数日で実装できてしまう方法がある。それがRPAを使ってワークフローを実装してしまう方法である。

 署名を依頼する際に依頼者が書類をまとめて申請する、また署名完了後に書類をまとめてダウンロードするのを自動化する、など手間がかかる部分をRPAで自動化することで、全体の効率をあげることができる。その際、Automation Anywhere Enterprise A2019を使うと、フォルダーに置かれた書類を自動検出するトリガー機能や完了メールを検知するメールトリガ―など豊富なトリガー機能を活用することができるのが便利である。

 電子サインサービスを使って押印が必要な業務プロセスをいち早く電子化したい場合は、このようにRPAと一緒に導入することで、スピード感のある導入を行うことが可能になる。

 

利用者の指示に基づきサービス提供事業者自身の署名鍵により暗号化等を行う電子契約サービスに関するQ&A(総務省、法務省、経済産業省)

 

(オートメーション・エニウェア提供コンテンツ)