RPA (Robotic Process Automation:ロボティック・プロセス・オートメーション)は、コンピュータ上の仮想労働者とも呼ばれ、「ロボットによる業務の自動化」の取り組みである。少子高齢化による労働人口の減少、働き方改革、Withコロナのリモートワーク・事業継続対策等、さまざまな理由で2017年頃から日本でも導入が進んでいるソリューションである。
しかし、先行して導入した企業の中には、期待していたほどの効果が出ない、管理で困っている、などの課題や悩みを抱えている企業が少なくない。RPA導入の早期段階では、価格や手軽さ重視でRPAツールを選定してツール導入を行ったために発生している問題もある。
この記事では、RPAを導入後に起こりうる典型的な課題を紹介する。
システムの仕様変更で動作が変わった
RPAは社内の基幹システムや業務アプリケーション、クラウドサービスなど、様々なシステムと連携されるケースもあるため、操作するシステム側の仕様変更によりRPA側の操作に影響が出てしまう場合がある。その結果、当初は正しかったはずの指示が、ロボット停止などの「エラー」や場合によっては「間違った指示」になってしまう。
RPAはAIとは異なり、変更点や妥当性を自ら学習しない。そのため、定型業務の自動化を図る際の開発・設定段階では問題がなくても、運用開始後にシステム側で改修や更新があった場合、RPA側でもメンテナンスが必要になる場合がある。
システム障害で業務が止まった
RPAをインストールしているサーバやロボットを実行するPCに障害が発生したり、OSの修正モジュールで自動的な再起動がかかった際、気付かぬうちに停止してしまっている場合がある。
業務がブラックボックス化した
RPAによる自動化が進むと、人の手による直接作業は減少する。その反面、業務に対する理解を維持している担当者が減少していく可能性がある。
また、業務を理解している担当者がナレッジを他の担当に引き継がないまま異動するということも珍しくない。その結果、例外的な処理に対応できる人間がいなくなり、業務の実行方法がRPAに実装されるのみとなり、業務がブラックボックス化するという本末転倒な結果になる可能性がある。
時間が経ってメンテナンスが必要になった際に、「業務プロセスの意味」を理解していない状態が生まれることで、組織的にも大きな問題を抱えることになる。
不正確な指示内容で間違った処理を続ける
RPAは、人から与えられた指示を休むことなくこなし、時間経過や対象業務の量による精度の低下がないというメリットがある。しかしその反面、RPAに対して業務手順の指示をおこなう際、その指示内容が不正確であった場合も、RPAがその誤りを検知することはできず、そのまま実行されてしまう。
システム上のエラーが発生しない限り、指示された手順通りに業務を実行し続ける。また、日頃の業務で担当者が無意識のうちに条件や処理を変更している場合もあるため、その結果RPA側に影響がでることもある。
セキュリティの問題が発生
RPAでは、自動でシステムやアプリケーションにログインするケースも多くある。その際、IDやパスワードがロボットのシナリオに埋め込まれる。その場合、業務実行者以外の人物、例えば管理者や設計者がシナリオを参照することで、社内であっても第三者に個人のIDやパスワードが漏れることになる。
また、セキュリティ面や安定稼働を配慮するなどの理由でRPAにて実行する業務プロセスを分けている場合、効率化を優先するあまりプロセスを結合してしまうと、複数のシステムにログインするために本来の権限を超過した実行環境が形成される可能性がある。利用しているRPAがデスクトップ型の場合、この問題は特に注意が必要となる。
対策については、以下のコラムで解説をしている。
【コラム】RPA導入後に直面しがちな問題とは?その対策について解説
(株式会社日立ソリューションズ提供コンテンツ)