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【講演レポート】『諦めない、RPA』中堅・中小企業にRPAは無理なのか?

2021/01/06 コラム



東京丸の内に本社を構え、中堅・中小企業向けに『テクノロジーと一緒に働く未来を伝えること』をミッションとしているASIMOV ROBOTICS株式会社は、10月15日に行われたオンラインイベントリレー2020 Autumnウェビナーで、中堅・中小企業向けのRPA導入のポイントとそのために必要となるサービスについて解説した。

データから見る新型コロナで加速する自動化

ASIMOV ROBOTICS藤森氏は、定型業務の多い事務職など、自動化されやすい職種とそれ以外の職種において、2019年頃から求人掲載数の前年同月比増減率は乖離が見られると解説する。新型コロナの流行に伴い、自動化されやすい職種とそれ以外の職種の両方とも求人倍率が落ち込んでいるが、特に自動化されやすい職種では40%近い減少が起きているという。また自動化は、生産性向上に加え、密を避ける手段の一つとしても注目されており、新型コロナの影響で大きく後押しされているというのだ。


ASIMOV ROBOTICS藤森氏

 藤森氏によると、大企業の多くではRPAが何らかの形で導入が進んでいるが、中堅・中小企業ではなかなか進んでいないという。その典型的な理由は「自社での導入イメージがわからない」「RPA導入の前に業務整理が必要だが手の付け方がわからない」「RPAを担当する人材を育成する余裕がない」ということだ。

 

RPAと従来の情報システムとの違い、使い分け

 RPAは従来の情報システムの導入と何が違うのか。RPAは自社開発に比べて安価であることに加えて、比較的短期間で手軽に変更が可能であることが特徴的だ。そのため段階的に業務改善ができる、と藤森氏は紹介する。

 RPAと従来の情報システム導入との違いを簡単にまとめてみた。

 また、業務量の軸でシステム開発、RPA、手作業を見てみると、業務量が多いものはシステム開発でしっかりカバーし、少ないものは手作業でよく、RPAはちょうどこれらの中間をカバーするのに向いており、その業務量こそ、まさに中堅・中小企業の業務であるという。

RPAに向いている業務とは?

 業務内容からRPAに向いているものを紐解いてみよう。よく例で出てくるのは、「Excelを使っての繰り返し作業での資料作成」である。「作業は単調だが人事データや営業成績など秘匿性の高い情報でアシスタントには任せられないもの (ロボットは無口)」「給与入力など、気を使いながらコピー&ペーストを繰り返す仕事」「システム同士のデータ移行を手作業で行っており、つながっているといいなと思う作業」「ダウンロードやプリントアウト (PDF化を含む) などで、待ち時間が長くてイライラすることがあるもの」などもRPAに向く業務だという。

 また、毎朝、前日の営業成績をダウンロードして各担当に配ってから各担当が仕事をする場合など、「毎朝必ずやらなければならない作業でありプレッシャーになるという業務」もRPAに向いている。担当者はいままで朝少し体調が悪くても病院によることが難しかったが、RPAに任せていれば最終チェックをするだけで良くなるの可能になる。その他にも「担当者に辞められて、もしくは長期で休まれて困った経験がある」「新型コロナによるテレワークで作業が進まずに困った」「文句を言わずに、黙々と働いてくれる社員がほしい」といった課題やニーズにもRPAが適用できるという。

 

RPAで行う作業の例

 RPAで行う作業の具体例として、マネーフォワードクラウド給与と連携し、クラウドの勤怠管理システムKING OF TIMEでは扱えない情報を追加して給与計算システムへアップロードするロボットが示された。特定のフォルダーにExcelファイルをコピーすると、Automation AnywhereRPAが自動起動。自動でログインをして給与システムを操作し、勤怠管理システムからダウンロードしたファイル及び食事手当情報のファイル、通勤手当情報のファイルの3つのファイルから一つのExcelファイルに情報を転記。

 慣れている職員で2時間くらいかかるが、RPAだと数分で完了し、最終的に給与システムに自動アップロードしてくれる。内部統制を考慮して、最後の確定処理は人間がチェックした後に行うように配慮している。

 

中堅・中小企業にとってのRPAの効果とは

単純にコスト削減するのではなく高収益体質に変わることが重要

 RPAの効果と言うと、コスト削減にのみ目が行きがちである。しかし、最終的には売上アップが行える体質を作ることが重要である。損益分岐点分析で考えてみる。売上と、売上にかかわらず発生する費用(固定費)と、売上の伸びに合わせて変動する費用(変動費)との関係を示すと以下のようなグラフとなる。

 いま、新型コロナの影響で売上が落ちているとすると、グラフでは左側に状態がシフトしたことになる。その分、売上費用=利益の値が小さくなる、もしくはマイナスになってしまうため、コスト削減をしようとするだろう。

 その際に、単純にコスト削減をするのではなく、無駄を絞って生産性の向上を行って高収益体質にしておくこと (費用の伸びのグラフの傾きを抑えられるようにする) が重要である。新型コロナが収まって売上が上がるようになったとき、単純に元に戻るのではなく、より大きな収益が得られるようになるのである。

 

その業務は「作業」か「仕事」か?

 RPAの適切な活用のためには、適用業務を洗い出すことが重要となる。その際には業務が「仕事」か「作業」かの見極めが重要となってくると藤森氏は言う。仕事とは「判断やアイディア・顧客対応が必要な業務」(: 人のマネジメント、モチベーションアップ、チームリーディング、顧客対応、専門領域における判断)であり、人が本来やるべき業務である。一方、作業は「単純または複雑な繰り返し業務」(: システムへの繰り返し入力や操作、Excelからの単純な転記、条件によって異なるデータを入力、複雑な計算や変換が絡む転記作業、プリントアウトやダウンロード)であり、一生懸命やっているその作業はロボットに任せられるかもしれない。

 「仕事」と「作業」を明確に分類する事で、RPAの適用業務が見えてくるだろう。

 

コスト削減以外の効果もある

 そして、RPAによる効果はコスト削減だけではない。作業をRPA (デジタルワークフォース) にまかせることで、ヒューマンエラーのないサービス品質の保たれた作業にすることができる。さらに、RPAに任せた部分の時間が浮くので、より付加価値の高い業務に集中することで、従業員は労働の質の向上、従業員満足度の向上、そして良い人材の確保が実現し、顧客満足度を向上させることができる。そして、最終的には売上アップ、収益性アップを目指すことができる。

 その他の効果として、業務フローの見直しを通して業務の見える化、属人化の解消も可能だという。同時に業務効率化マインドの育成も成されるという。ロボットの活躍を目の当たりにする事で、現場から次々に効率化しようという声が上がるようになるそうだ。この効果には藤森氏も驚いたという。

 

中堅・中小企業でRPA導入を進める秘訣

 中堅・中小企業におけるRPA導入の課題は人材不足にあると藤森氏は指摘する。RPAの導入にはツールの購入、RPA研修受講、適用業務の洗い出し、ロボット開発といった段階を経る必要があるが、これには最低3カ月はかかる。また、RPAの開発難易度は高くないが、開発後、運用中のメンテナンス、外部アプリの変更に対応できずコケるということはケアする必要がある。つまり開発後にも継続的なメンテナンスが必要なのである。更に、ロボットの人事勤怠管理も必要となってくる。

 いずれの段階でもRPAの専門知識がある程度必要になる。ただ社内での育成は大変であり、中堅・中小企業ではなかなか導入が進まないのだ。

 

RPA人材の育成不要の秘訣

 そこでASIMOV ROBOTICSでは、専門的スキルが必要となる業務はASIMOVがまとめて代行する (大企業で言うRPA推進室をASIMOVが担う) モデルを取ることで、企業側でRPA人材の育成を不要とするサービスを提供している。

 RPAの導入は効果の実感からスタートすることが重要だと藤森氏はとく。その方が現場の理解が得られやすくなる。いったん成果が得られた後で、企業側でメンバーが研修を受けて適用業務の洗い出し、ロボット開発を行う体制にシフトすることもできるし、引き続きASIMOV側で代行しながら進めることもできるということだ。

 

ロボット活用率を100%にするには

 RPAの導入には、事前の業務整理をしっかり行い、効果のあるロボットのみを開発することも重要であるという。IT投資の効果は運用の見直しで大きく変わる (BPRで約20%もの効果の違いがある)ことがデータでも裏付けられている※。

 たとえばワークフローの中で請求書の内容チェックのタイミングを前倒しに変えるだけで自動化がやりやすくなり、手作業が必要な分量が削減された案件もある、と藤森氏は説明する。専門家が企業側にヒアリングをすることで、RPA化が必要な部分を提案ができる。RPAは開発期間が短いので、少しずつ業務のステップを変えて対応することもできる。場合によってはRPAではなくパッケージソフトを入れたほうがいいところもあるので、そこは適切な仕分けを行うことが必要になる。

 同時にロボットの活用状況を見える化して、運用の問題点を把握し、止まりにくいロボットを作って改善していくことも重要である。遠隔でロボットの活用状況を吸い上げて監視、月次レポートを行うことで、企業側は手間をかけずに状況を把握できるという。ロボット毎に活用状況を把握することで不具合が見つかるのだ。

 企業側で担当者が複数いる場合は、操作の仕方でミスが起こる場合が多い。そのため現場の職員にもわかりやすい操作マニュアルを用意することは重要であり、これはサービスの中で実施される。また、業務の中で使うExcelファイルの入力フォームにも工夫ができる。たとえば必須項目のセルに色がつくようにしてわかりやすくする、間違えやすい入力項目は手でタイピングではなくドロップダウンで選択式にするなどである。

 

継続率100%の秘訣

 最後に、RPAは継続することが重要であるが、ASIMOVでは継続的な月次の業務効率化コンサルティングでしっかり伴走することで、中堅・中小企業も継続して業務改善に取り組めるようになっているという。また、RPA以外の運用の見直しも含め支援することも可能である。

 

RPAツールに必要な機能とは

 最後に、ASIMOVではRPA化の業務にはAutomation Anywhereを使っているが、業務改善を行うにあたりRPAとして重要な機能が紹介された。Automation Anywhereはトリガー機能が優れていることが特徴であり、先に出てきた例のように、フォルダーにファイルがコピーされたらロボットが起動することが容易にできる。トリガーは他にもメール受信などさまざまなものが用意されており、他のRPAツールよりも選択肢が広いという。

 また、内閣府でも本格活用がされている、金融機関でも利用可能、会計監査にも耐えるクオリティ、アプリケーションの堅牢制を証明するVeracodeは最高位の5、世界で最も厳しい個人情報保護法であるGDPRにも対応しているというように、セキュリティ・コンプライアンス機能が強いのも特徴であるという。

 あわせて、フローチャート式でもリスト式でも開発ができ、豊富なコマンドで複雑な処理も簡単にスピーディに開発できる、といった開発のしやすさも重要であるという。

 中堅・中小企業でも、大企業と同様にRPAを活用できる環境が整いつつある。人材不足などにも諦めずに検討してみる余地が出てきそうである。

 

問い合わせ先

アシモフロボティクス株式会社
Email: info@asimov-robo.com

 

オンラインイベントリレー2020 Autumn アーカイブ

 

※中小企業庁: 中小企業白書 (2018): 「深刻化する人手不足と中小企業の生産性革命」