「簡単なRPAツール」の意味には2種類ある

2020/12/14 コラム



RPAの導入によって、自動化したいスキマ業務を簡単に自動化するためには、RPAツールが現場ユーザーにも使いやすい簡単なツールである必要がある。しかし、「簡単な」RPAツールという意味がしばしば誤解されており、RPAツールを導入して利用を開始したものの、本来やりたかった業務が自動化できないでいるユーザー企業が数多く存在する。この記事では、なぜそのような状態に陥ったのか、どうすれば解決するのかを考えていく。

RPAの導入でやりたい業務が本当に簡単に実現できるようになったか?

RPA導入後に苦労しているユーザー企業が多くいる現実

RPA (Robotic Process Automation: ロボティック・プロセス・オートメーション)は、パソコンが仕事で当たり前のように使われている環境でも、システム化された業務の間のスキマで、人間が手で操作していたつなぎ業務を、人間の替わりに実行してくれるプログラムということで人気を集めてきた。

業務のシステム化はITの専門家がコードを書いたりパッケージを導入するしか方法がなかったが、現場ユーザーでも画面操作を記録したり、フローチャートをくみ上げていくことで、簡単に業務を自動化出来るはずだった。しかし、現実には導入後に壁に当たっているケースが多くみられる。キーマンズネットの調査※によると、約4割の企業が「期待したROIが出ない」「導入成果の算出が難しい」といった課題に当たっている。

あわせて「RPAのロボットのスキルを持った人がいない」「ロボットの運用/管理が煩雑」といった課題も4割に近い企業が感じているようだ。ツールの課題としては「自社ツールとRPAの連携が難しい」も約2割の企業が感じているようだ。一方、導入時のRPAツールの選定には「コストが安い」「初心者でも扱いやすい」「UIが日本語」といった基準で選択している企業が約半数に上る。安いコストで簡単なRPAツールを導入したはずなのに、なぜうまくいかなかったのだろうか。

 

簡単なツールで選んだはずなのに、うまくいっていないのは何故か?

「RPAのロボットのスキルを持った人がいない」「ロボットの運用/管理が煩雑」「自社ツールとRPAの連携が難しい」といったRPAツールに関連する課題から見えてくるのは、本来RPAプロジェクトで実施すべき運用/管理や自社ツールとの連携に不満を持っているユーザーが一定数いるということだろう。

いま日本で最も展開が広がっているRPAツールは、ユーザーフレンドリーで使いやすいことを売りにしており、多くはデスクトップ型RPAとして導入されているが、この場合は上記の課題を持っているユーザーに当てはまる可能性がある。デスクトップ型RPAとして導入されている場合は、RPAの社内本格展開時には課題が多く出てくることが多いからだ。

 

失敗しないRPA導入のために—RPAの種類とそれぞれのメリット・デメリットを知る

 

「簡単な」RPAは見た目が取っつきやすいという勘違い

RPAツールには2種類の使われ方があり、どちらで使うかにより必要となる要件は異なってくる

RPAツールが簡単であるということはどういうことであろうか、ここでもう一度振り返ってみよう。実は、どういう目的で使うかによって、簡単という意味も変わってくる。RPAには「個人が自分の身の回りの業務を自動化するために使う」使い方と、「全社的に業務を最適化、自動化して大きな効果を出す」使い方の2種類あり、近年特にこの2つの使われ方は、本来同じ「RPAツール」と呼ぶべきでない程異なる使われ方となってきている。

前者の「個人が自分の身の回りの業務を自動化するために使う」使い方であれば、簡単なRPAツールとは、主に利用者本人が開発しやすい機能を取り揃えているか、で決まってくる。一方、「全社的に業務を最適化、自動化して大きな効果を出す」使い方の場合、簡単なRPAツールとはRPAプロジェクトで実施すべき様々な項目をツールの支援により簡単に実行できるツールの事である。シナリオやワークフローの開発はもちろん、運用、管理、監査対応にまで至るまで本格展開に必要な機能を網羅している必要がある。合わせて適用業務を探したり、紙業務などにまで適用業務を広げるような仕組みも必要となる。

デスクトップ型RPAと呼ばれるRPAツールは、本来「個人が自分の身の回りの業務を自動化するために使う」使い方のみをサポートしたツールであり、「全社的に業務を最適化、自動化して大きな効果を出す」使い方をするには機能が不足している。また、デスクトップ型RPAにサーバ型機能のオプションがあるものは、付けようとすると、思いのほか高額になってしまうことが多い。

 

「簡単に開発しやすいRPA」は見た目が取っつきやすいだけではダメ

デスクトップ型RPAでも当てはまる「簡単に開発しやすいRPA」についても、実は誤解されていることが多い。キーマンズネットの調査からもわかる通り、トライアルフェーズにいるユーザーと、本格展開フェーズにいるユーザーとでは、挙がっている課題が異なるものが結構ある。これは、RPA利用の初期段階と本当に使ってみての課題が異なっていることを示している。

「初心者でも扱いやすい」というツールの使い勝手は、RPA利用の初期段階では「見た目が取っつきやすい」ということと捉えられることが多い。つまり、フローチャートでシンプルなユーザーインターフェイスであるということである。しかし、導入が進んでくると、自社ツールと思うように連携できない、できることが意外と少ない、もしくはユーザーインターフェイスを正しく認識しないため操作にさまざまな工夫が必要になってくる、などの課題が出てきて最初の段階で止まってしまっているとの声を多く聞く。

そして、ちょっと複雑なことをやろうとすると、途端に高度なプログラミング技術が必要となってしまうのである。また、簡単だと思っていた見た目がシンプルなRPAツールで開発を実際に行ってみると、他のRPAツールで開発するよりも多くのステップを実装する必要があることも多い。

 

プラットフォームと独立した抽象度の高い命令方法と簡単な変数の取り扱いが必要

実は「簡単に開発しやすい」要件としては、見た目の他に、「実装に必要なステップ数が少なくて済むこと」や「変数の取り扱いが簡単な事」を考慮する必要がある。

 

RPAに自動化を任せるとなぜ簡単になるのか

 

「簡単にロボットに指示できる」とは、本来、人がとても抽象度の高い方法で命令を実行できることである。たとえば「提案を進めておいて」のようにひと言で済んでしまえば、指示はとても簡単である。しかし、コンピュータがそれを実行するには、1,000万ステップくらいのメモリ操作や演算を行う必要がある。しかし、人間はそのようなことを意識する必要がない。

RPAツールでも、画面操作時のタイミングを取るために待機をかけたり、繰り返し操作の回数を変数で明示的にカウントする必要があるなど、RPAツールによって処理に必要なステップ数が変わってくる。処理によってはステップ数に6倍くらいもの差がつくものもあるため、「抽象度の高い命令」かどうかを無視することはできないだろう。

また、RPAにおける変数の扱いというのは、特にプログラミング経験のない初心者にとっては一番躓く箇所である。変数についてはRPAツールの種類の寄らず、最も多くの質問が出る部分である。変数をなるべくユーザーに意識させず、できるだけ隠蔽して使えるようにしているかどうかも、RPAツールの難易度に大きくかかわってくるだろう。

 

まとめ

以上、見てきたように、RPAツールの簡単さは、トライアルフェーズでユーザーが考えていることと、実際は異なっていることが調査からもお分かりいただけたであろう。つまり簡単さには「トライアルフェーズで考えられていること」と「本格展開時で実際に必要になってくること」の2種類の意味があるのだ。本格展開を考えているのであれば、本格展開時に出てくる課題もあらかじめ検討したうえでRPAツールを選択することをお勧めする。先人と同じ轍を踏まないことである。

 

RPA、読者が1番利用しているツールは? 実態調査 (キーマンズネット、2020年1月)