RPA導入にかかる費用と費用対効果の計算方法

2020/07/28 コラム



 RPAソリューションを選定する際に、検討要素の一つになるのが費用であろう。また、その結果どういった効果が得られるのかという目的をどこに持つかも重要な要素となってくる。この記事では、費用の計算方法や費用対効果を計算する手法を紐解いていく。

 

RPA導入の際にかかるコストは?

 RPAの導入には以下のコストが発生する。

  • ライセンスコスト: まず、ソフトウェアの利用にライセンスがかかってくる。小規模なプロジェクトではライセンスの割合が全体の半分近くを占めることもあるが、大規模展開になるにつれてライセンス利用効率が上がり割合が減ってくる。ライセンス体系はRPAソフトによって異なるためきちんとした見積もりが必要になるが、一般論としては規模が上がると稼働するパソコン台数が増えて費用そのものは上昇するのだが、他の要素の割合が高くなってくるのだ。
  • 開発と展開: ライセンスコストと並んで大きくかかってくるのがロボットの開発と展開にかかるコストだ。規模を上げていくと作成して展開するロボット数が多くなるため、ここの割合が高くなっていく傾向にある。また、開発と展開に外注SIerを継続的に使う必要があるかどうかも、コスト割合に大きくかかわってくる。
  • メンテナンスとサポート: RPAソフトやインフラを最新に保つための作業にかかるコストだ。ライセンス費用自体は年次サブスクリプションなので、「ソフトウェアの保守費用」はこの試算では「ライセンスコスト」に含まれる。ロボットの継続的な再構築はこの試算では「開発と展開」に含まれる。
  • トレーニング: RPAソフトを使いこなすためにユーザーが受けるトレーニングにかかる費用だ。
  • アドオンの構築: RPAに加えて、実行結果や管理項目の分析、OCRソリューション、RPAインフラの高可用性とディザスターリカバリーにかかる費用だ。
  • コンサルティング: RPAソリューション導入前に、導入する業務プロセスの選定や業務可視化にかかる費用だ。
  • インフラ: RPAソフトを使うのに必要なサーバ等を購入するための費用だ。オンプレミスなのかクラウドなのか、展開方法によって大きく異なってくる。数個以上のロボットを実行して個人の生産性の枠を超えて組織としてRPAを取り扱う場合、サーバ型RPAが必須となってくる。

 

 UiPath、Blue PrismAutomation Anywhereについてこれらの費用を調べた調査※では、それぞれの項目の全体の費用に占める割合は以下のとおりである。細かい割合は利用するRPAソフト、展開方法、展開ロボット数、業務適用範囲によっても変わってくる。

   

RPAの価格感は?

RPAの「雇用形態」を分類してみた

RPAを導入して得られる成果の種類は?

 導入による効果はいろいろなものが考えられる。まずは (従業員が実施時にかかっていた時間) x (時間当たりの従業員のコスト)が人件費として削減できる。ただし単純に人件費削減としてしまうと人員整理に聞こえてしまい、「RPAは人類の敵だ」となってしまう。人類の歴史を見てもそうだったように、昔は人間が行っていたが、いまは代替手段があり人間がやらなくてもよく (畑を耕す、荷物を走って輸送するというものから電話の取次ぎ、株の仲買まで)、人間はより高次の仕事に集中できる、ということを成果とみなすのが良いだろう。

 

RPAによる時間効率化の目標はどれくらいが適切なの?

 

 また、人間の代わりにRPAが行うことで正確性が増す、深夜の入力作業や機微な情報の取り扱いなどから解放され従業員の心理的な安定性が増す、なども成果として得られるだろう。これらが商品の品質向上、コア業務への集中につながり、最終的には会社としての収益の向上につながっていくはずである。

  

削減時間だけではない! RPA導入の推進者が知っておくべき6つのメリット(前編)

削減時間だけではない! RPA導入の推進者が知っておくべき6つのメリット(後編)

  

 加えて、最近のコロナ禍においては事業継続性を担保したり、突発事項に短期間で対応できることがRPA導入企業の強みであることも明らかになってきている。

  

RPAで突発業務をやっつける!新型コロナ禍での活用事例

コニカミノルタジャパンが新型コロナ禍の突発的な物流業務事務をRPAで85%効率化

税理士法人F様:税務関連書類の作成業務等をRPAで自動化。職員のストレスも軽減し、担当件数も3倍超に増加

 

費用対効果(ROI)の計算

 RPAによる費用対効果 (Return On Investment, ROI) であるが、金額で「効果金額」として出すとわかりやすいだろう。

 

効果金額 = (人件費合計+その他の効果(収益増大等)) – RPA導入費用

 

となる。人件費は組織や対応する従業員の種類などによって大きく異なるが、たとえば年間1,920時間労働、時給換算で2,500円だと1日で2万円、年間で480万円が1人あたりの費用となる。

  また、費用対効果を大きく出していくには、組織内でボリュームが大きい共通業務でRPAを適用できそうなものをいくつか探して取り組む必要がある。加えて、ある程度長期的に運用していく前提で投資を考える必要があるだろう。

 

ROIの観点からRPAソフト選定時に注意すべきこと

 ROIを出すにあたっては、ライセンス体系における課金の方法やインフラ準備の必要性、継続的な外注が必要かどうか、というところが、自分たちでやろうとしているプロジェクトとあっているかを確認する必要がある。たとえば、以下のようなことを意識して検討する必要があるだろう。

  • UiPathではスキルが高いエンジニアが内製できる場合はよいが、不在の場合は継続的にコストをかけて外注している傾向が高い。
  • Automation AnywhereとBlue Prismはサーバ型RPAのみの提供となるため、ひとりで自分のパソコンのみで使うデスクトップ型RPAの構成はない。
  • Blue PrismはPoC中の課金はないが、本番稼働すると最大同時実行ロボット数に対して課金がなされるため、規模に比例してライセンス費用も大きくなり、全体におけるライセンス費用の割合が下がらない傾向にある。
  • WinActor、UiPathはサーバ型RPAの機能を提供する際、別途200300万円のライセンス費用に加えてインフラ費用がかかる構成が主力となっている。
  • オンプレミスのみの構成が許容される場合、WinActorUiPathAutomation AnywhereBlue Prismともインフラの準備が必要となる。その場合クラウド型の展開しか用意していないRPAソフトは使えない。

 

まとめ

 このように、RPAの費用対効果を考える際には、費用や効果として計上するコストの種類に注意を払ったり、費用対効果を向上させるために適切な業務整理と業務選定をする必要があることがお分かりいただけたであろう。RPAの効果の測り方は効果時間がわかりやすいが、必ずしもそれだけではない。何をゴールにしてどう取り組むのかの設計をあらかじめ行っておくことが、RPAプロジェクトを成功させるカギとなるであろう。

 

 

 ある調査会社による調査, 2019